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草迷宮/物に宿る記憶

こんばんは。みとひです。
ヘッダー画像に設定する画像を漁っていたら好きなキャラの画像があったので何とか3記事目を書けています。

突然ですが、攻殻機動隊をご存じでしょうか。
知らない方向けに極めて簡単に世界観を説明しますと、近未来、人間は足りない身体能力を機械で補うようになり、脳とインターネットが直接繋がるような高情報社会を描いたSF作品になります。
基本的にはハッキング等の近未来的な電脳戦や、機械の体を用いたアクロバティックな戦闘が描かれますが、各キャラごとに描かれた内面もとても素敵な作品です。

さて、表題にある「草迷宮」ですが、攻殻機動隊SAC 2nd GIGという作品にて同サブタイの回があります。
この回は一目でわかるほど異質な回でして、古いタイプの水色羽の扇風機。タイプライター。やたらカラフルなステンドガラス。クラシックカー。鉛筆削り。VHS。等々古いものが沢山出てくるお店が舞台となっております。
ただ単に、古物商(この時代からすると遺物レベルかもしれませんが)というわけではなく、このお店が扱っているのは、「物に紐づけられた本人の記憶」になっています。(売り買いというわけではなく、置いていきたい記憶を置いていくことの出来る場所のようです。)
店主としておばあさんが一人おり、その人は預けられた全ての物の記憶を
覚えています。(逆に言えばその物の記憶でしか預け主のことは知りません。)

主人公はこのお店で物語上重要な記憶のお話を聞くのですが、その話は置いておきましょう。

今記事にて書きたいことは、物に宿る記憶に関して意識したことはありますか?という話です。
日本にはあらゆる物に神や意思が宿るという八百万の信仰もありますので、そうそう遠い話ではないかもしれません。
それでも普段から物に染み付いた記憶を意識することは少ないでしょう。
ただ、私は実家にある「黒鉛で黒く汚れた鉛筆削り」を見ると幼かった頃に鉛筆削りを使っていた光景を第三者目線から思い出すことが出来ます。
読んでくださっている方の中にも部屋を見渡した時に何かを思い出せるものはないでしょうか。

普段まったく思い出さないようなことを何かを見た際に思い出す。
これこそが物自身が持つ記憶ということではないかと私は思うのです。
物は何も喋りませんが、私に過去の幻影を見せてくれる。
こうして記憶を共有してくれているのです。
例え普段の自分が忘れていたとしても、それを思い出させてくれる存在。

日常生活において「私」を認識してくれる人間は決して多くありません。
今いる友人知人も時を経るごとに私のことを忘れていくでしょう。
それは仕方のないことではありますが、とても寂しいことでもあります。
自分ですら自分の過去の覚えていないことが沢山あります。
そう考えると物こそが一番自分のことを覚えていてくれる存在なのかもしれません。

何より自、分ではない何かが私の忘れてしまった私を覚えておいてくれる。ということに強い安心感を私は覚えるのです。













長々と物が外部記憶装置の一旦を担っているかもしれないと書きましたが、
実際に記憶しているのは自分の脳になります。
作中で出てくるような「記憶に紐づいた物を預けることで、記憶を保管してくれる店」があればどんなに安心できることでしょう。
「忘却探偵シリーズ」と呼ばれている小説の登場人物に掟上今日子というキャラクターがいます。
一晩経つと自分の記憶全てがなくなってしまう彼女は起きた際に自分が何者か分かるように腕に名前と素性を書いています。
そうして、何もかもを忘れた自分が、何者であるか。を忘れないようにしているわけです。
私自身が何かに自分を覚えていてほしいという欲求は、自分が何もかも忘れてしまった際に自分を取り戻すことが出来るという安心感が欲しいのかもしれません。

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