最近読んだ本まとめ⑥

四季シリーズ/森博嗣

これから森作品読むよとか読む予定がある人は四季シリーズとどちらかが魔女は飛ばしてほしい。ネタバレ抜きで書けない……。

 真賀田四季にスポットライトを当てたシリーズ。

 春が四季の幼少期で、夏が「すべてがFになる」の事件の四季視点、秋がS&MとVシリーズのキャラクター大集合、冬はちょっとなんて言ったらいいかわからない(ほとんど雰囲気で読んでいたから……)。

 四季にスポットライトをあてたシリーズではあるのだが、思考がぶっ飛びすぎて感情移入できるでもなく、なんかすげー……と思いながら読み進めていた。天才の思考を描写できる森先生ってすごい。しかも冬あたりになると本当に哲学的すぎて何言ってるのかよくわからないのだが(後のシリーズへの布石もありそうな)、それでも最後まで読ませるのが1番すごいと思った。

 夏がすべFの四季視点なのだが、孤高の天才である四季も、この事件に関しては叔父への恋心が発端だったのだなという意外性。ここだけがちょっと普通っぽい……?と思ったところだった。まあ普通ではない。

 やっぱり1番好きなのは秋。S&MとVのキャラクターたちが大集合するので、読んでいる間アドレナリンがバシャバシャ出た。ヤバかった。この興奮を味わうためにS&MとVを読破したんだなと思うレベルだった。

 あと犀川先生と萌絵の関係が急展開する。ここも腰抜かしたんだけど、1番好きなのは萌絵が紅子を訪ねたときのシーンである。萌絵が四季へ嫉妬心を抱いていることを紅子に吐露したときのやりとりがめちゃくちゃ大好きなので引用する。

「扇風機のように、前にしか風が来ないのなら、こちらを向いてくれないと困りますけれどね。たとえば、太陽はどう?メキシコが晴れていたら、その分、日本は損をしますか?」
「つまり、その差は、何ですか?」
「貴方が太陽を好きになったか、扇風機を好きになったか、の差です」
(中略)
「私も若い頃に、ずいぶん、それで苦しみました。あの人が、扇風機みたいに首を振って、私の方だけを向いてくれない。でも、彼を扇風機にしたのは誰か……」紅子は首をかしげる。「結局は、私の問題なの。私の認識だったのね」

 うわここめっちゃ好き……って思った。めっちゃ好き。これオタクにも刺さらん?わたしはめちゃくちゃ刺さった。正直V読んでるときは紅子と林と七夏の三角関係あんま好きじゃなかったんだけど、このシーンに至るためだと思ったら必要な描写だったんだ……ってすごい受け入れられる。好き。


どちらかが魔女/森博嗣

西之園家のキッチンでは、ディナの準備が着々と進んでいる。ゲストは犀川(さいかわ)、喜多(きた)、大御坊(だいごぼう)、木原(きはら)。晩餐の席で木原に続き、大御坊の不思議な体験が語られた。その謎を解いたのはーー(表題作)。ほかに「ぶるぶる人形にうってつけの夜」「誰もいなくなった」など、長編シリーズのキャラクタが活躍する8編を収録。

 これまでの短編集からS&MとVのキャラクターが出てくる話をまとめたものなので新規書き下ろしはなし。でもわたしみたいに森先生の短編集1度も読んだことのない人間からしたらちょうどよかった。

 どれも日常におけるミステリなので血なまぐさい話はなし。個人的には喜多先生や数奇にして模型に出てきた大御坊さんの登場頻度が高くてすごく嬉しかった。

 まあやっぱり1番好きなのは1番最後に収録されている「刀之津診療所の怪」。1番最初の「ぶるぶる人形に打ってつけの夜」とのリンクがもううわぁーーーーー!!!!ってなる。この2つの話はこの順番に置かれてこそ威力を発揮するやつだと思うので、この順番で読めて本当に良かった。

 刀之津、正直保呂草さんを疑ってて。保呂草さんが出てくるんじゃないの?と思っていたら、練無お前だったかーーーーーーーー!!!!!!!いや練無と紫子さん、四季シリーズには出てこないからてっきりVだけの登場なのかな、あの後2人はどうなったのかなって思ってたから、あれから年月が過ぎても仲良くやってるみたいですごく嬉しかった。最後の「懐かしいなあ。お茶でも淹れましょう。フランソワ」でギャアアアアアア!!!!!ってなった。練無にはここには収録されていないもので、もう1つ重要な短編があるそうなのでそれも読みたい。

【BL】COLDシリーズ/木原音瀬

事故で記憶をなくした高久透は、友達だと名乗る年上の男・藤島に引き取られる。藤島は極端に無口なうえ、透の「過去」を何ひとつ教えてくれず、透はどこにも居場所がないような寂しさを募らせる。しかし藤島とともに暮らすうち、彼の中に不器用な優しさを見いだして――。過去と現在が複雑に絡み合うあの超話題作が電子で登場!

 去年末くらいから森作品ばかり読んでいたので、別の方の作品を読みたいなあと思い、ふとCOLDシリーズを買ってみた。とにかく話が重くて辛いという前評判は知っていた。

 一応心構えはしていたけれど、想像以上にキッッッッツい話だった。「いやこれ以上辛い展開とかある?」って思いながら読み進めていたんだけど、安心してください。話が進むごとに辛く痛くなります。3巻とか「いやこんなことある!?!?!?!?!??!」って叫びそうになった。

 COLD LIGHTの藤島の過去編でだいぶ気持ち悪くなってて「いやこれ以上のキツい話ないでしょw」って思ってたら、COLD FEVERがえげつなくてね……頼むから救いをくれという気持ちで読んでいた。ただ透にしろ藤島にしろ罪を抱えた2人なので、そんな2人がそんな簡単に幸せになれるわけもなく。とはいえ何かもう辛いんだよな!!!!でもなんか最後の方は綺麗ではないかもしれないけれど、読んでいてすごく痛いけれど2人なりの「愛」があるなとは思えた。

 あと各巻の後半にある黒川と谷口の話はちゃんとCOLDシリーズに絡んでくるので、早く透と藤島の話が読みたいからって飛ばしちゃダメです(実体験)。

 小説はもちろんドラマCDも伝説的作品だと思うのだが、この話を音声で聞かされたら精神的ダメージがデカすぎてしばらく出社できなくなると思うので、当分無理そう。


白昼の悪魔/アガサ・クリスティ

地中海の平和な避暑地スマグラーズ島の静寂は突如破られた。島に滞在中の美しき元女優が、何者かに殺害されたのだ。犯人が滞在客のなかにいることは間違いない。だが関係者には、いずれも鉄壁とも思えるアリバイが…難航する捜査がついに暗礁に乗り上げたとき、滞在客の中からエルキュール・ポアロが進みでた。

 色んな人が言ってるけど、マジで話は面白いけど訳はひどい。「まア」とか「ホラ」とか「あたしゃ」とか、なぜみんなべらんめえ口調?ってなる。イギリスが舞台の話なのに、昭和の刑事ドラマ見てる感覚になる。ただ世界観ぶち壊しなだけで、話の理解には問題ないのでそこは救い。

 クリスティも複数作品読んできたので、正直トリックとしてはクリスティがよく使う手だなって感じ。なのに綺麗に騙されるのでめちゃくちゃ悔しい。もうパターン読めてもいい頃なのに、単純脳なせいか今回もしっかり騙されたし、真相にはびっくりした。

 訳はひどいけれど本当に話は面白いし、登場人物を覚える難易度も低くはないが高くもないので、ポアロのイメージが固まる前に早いところ読んだ方が違和感を感じなくて済むかもしれない。マジで早いところ新訳出してください……。



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