桜をたべたい!桜スイーツのゴッドファーザーに会ってきた
週末は愛菜家。 vol.33
今年はお花見シーズンがすいぶん早めの様子です✨
「お花見」というだけあって「桜は見るもの 愛でるもの」というイメージが強いと思いますが、花より団子を自認する私としては食材や農産物としての桜の可能性を探ってみたい・・・
そんなことを考えていたら、桜を使った食材の仕掛け人がなんと名古屋にいると聞き、さっそく取材を申し込むことに!!
世の中にどんどん増えている感のある桜スイーツやアレンジ料理。いったいどんな方が広めているのでしょうか!?
桜スイーツのゴッドファーザーに出会う
お話を聞かせていただいたのが、本物の桜を使ったさまざまな食材を開発&販売する山眞産業花びら舎の平出眞社長と企画・広報の野村さん。
名古屋城のすぐ近くに本社を構える山眞産業花びら舎。工場&物流センターは小牧にあるそう。
企業理念は「喜びの花を咲かせよう」。
個人のお客さまに向けた「花びら舎(はなびらや)」オンラインショップも手がけています。
駐車場には花びら食材の品種「関山(かんざん)」が植えられていました。
取材日(3月13日)は蕾の状態。花が咲くと、あたり一面に桜の香りが広がるんですって!
ちなみによく見る「ソメイヨシノ」には香りがほとんどないそう。
たしかにお花見で「香りがすごい!」とは感じませんよね。
そのすぐ近くにはイギリス生まれ里帰り桜の「おかめ桜」も。
葉が使われる「大島桜」も敷地内に植えてありました。
平出社長は桜への愛が深すぎて、なんと本まで出版したそう!
著書の「美味しい櫻」はamazonでも購入いただけます。
ここ数十年ほどで桜ブームを巻き起こした、桜スイーツのゴッドファーザー的存在なんです。
お話を聞かせてもらおうと席に着くと、桜茶をふるまってくれました。
ほっこり♪
桜スイーツの原点は、江戸時代の桜餅
食材としての桜の活用はおよそ300年前、江戸時代にさかのぼるそう。
徳川吉宗の命で植えられた花見桜の有効活用として桜餅が生まれました。
桜餅の元祖のお店は、なんと令和の今でも営業を続けています。
桜餅に使われる葉は香り高い「大島桜」。伊豆半島の松崎が大産地。
収穫用の桜は、胸ほどの高さに切り揃えられています。ふだん目にする桜とは雰囲気がぜんぜん違いますね!
山眞産業では、50年ほど前から桜の葉を販売していました。
虫がつきやすい桜葉ですが、農薬に頼らず栽培できる方法に挑戦し、より優しい商品を開発中です。
廃棄のピンチから大ヒット商品に!?
山眞産業が桜フレーバーの食材を次々と出すきっかけになったのが、平出社長が開発した「桜葉ミンチ」とそれを活用した「桜あん」のヒットです。
25年ほど前、伊豆の桜葉産地の漬元さんから「売れ残って不良在庫になっているけどどうしよう」と相談がありました。桜葉産地の菓子屋さんでは桜葉をきざんで羊かんや最中に使っていることに注目していた平出社長は桜葉をミンチに加工して商品化。さらに白あんに混ぜ、そこにピンクの色をつけた「桜あん」まで商品化しました。すると、国内有数の老舗での採用を機に、全国の和菓子店に普及したんですって!
桜フレーバーは和菓子だけでなく洋菓子の世界にもどんどん広がり、今では洋菓子に使われる比率のほうが多いそう。
デパ地下で催されている「桜フェア」商品の6〜7割ほどに山眞産業花びら舎の桜アイテムが使われています。すごいシェア率✨
花びらの活用も進み、さまざまなスイーツやトッピングに使われています。
花びらに使われる品種は八重咲きの「関山(かんざん)」。小田原に近い丹沢山の南嶺一帯が有名産地です。
本物の桜を使った各種アイテムをうれしそうに紹介してくださる平出社長。
桜のことが本当に好きな様子がビシビシ伝わってきます。
桜フレーバーが春の風物詩になったのは、実はここ10年ほどのこと。
「狙い通りの展開になりましたが、期待以上の広がりでした」と話してくださいました。
現在の桜アイテムは、業務用を含めるとなんと70種ほども。
その一部をいただくことができました!
花のシロップやジャムはスイーツに、桜葉と桜あんは和菓子に、桜の花の塩漬けはお料理のトッピングに・・・
「次はどのように使おうかしら」と妄想が広がります♪
SDGsにもチャレンジし続ける山眞産業花びら舎
「SDGs」という言葉が一般的になる前から、廃棄されるかもしれなかった桜葉を有効活用してヒット商品を生み出した山眞産業ですが、時流に乗ってSDGsの取り組みを加速させています。
現在、高齢化によって国内の産地が危機に。中国産の桜にも頼らざるをえない状況になっているのですが、山眞産業では全国各地に新たな産地を作る働きかけをして植樹活動も盛んに行っています。
そして、以前は焼却されていた剪定枝を燻製用にチップ化したり、薪として活用したり、灰を陶芸の釉薬に使ったり落ち葉を染色に使ったりと、桜を余すところなく使う取り組みも進めています。
桜を釉薬に使った陶器。流麗な桜色に焼きあがるんですね♪
さらに、自治体と協力して桜まつりを開催したり、仕分けなどの作業を農副連携で行うことで、障がい者や高齢者の新たな雇用の創出などもめざしています。すごい!
「桜茶」の復権が、平出社長の次なるテーマ
平出社長が今、特に力を入れているのが「桜茶」の復権です。
お湯を注ぐと八重の花びらが開いていく桜茶は、縁起物として結納や宴席のシーンに欠かせないアイテムでした。しかし、生活様式の変化であまり使われなくなってしまいました。
私も思えば、先日の取材で久しぶりにいただきました。
塩っけのなかに豊かな香りとほんのり酸味があって、落ち着いた優しい気持ちになれますね。
この桜茶を、ホテルのウェルカムドリンクや日常のシーンで使っていただく機会を増やすのが平出社長の直近のテーマだそうです。
桜の花はなんといっても日本のシンボル。それが1年中、気軽に楽しめるのが桜茶です。
どんどん広がっていくよう、応援したくなっちゃいました!
桜茶をはじめ、本物の桜のフレーバーを楽しめるさまざまなアイテム。
ぜひこの春はお花見を楽しみつつ、「花びら舎(はなびらや)」オンラインショップで買い物したりデパートの桜フェアでおいしいスイーツに舌鼓を打ったりと、楽しんでくださいね!