見出し画像

駐在員として働くこと

「駐在員」とは何だろうか。

理解せずに駐在生活を漫然と過ごす人も少なくない。駐在員として成果を出すためには必要なことであるのにも関わらずだ。私がこのように述べる背景として、通常、具体的なタスクは上司から駐在員に落ちてこないことが多い。上司が同じ拠点にいないこともよくある。本社も現地側も自由にやれといったスタンスで、何もやらなければ誰に怒られる訳でもなく、ただただ時間を無駄にしてしまう。駐在員は浮いた存在なのだ。だからこそ、駐在員たるもの主体的に行動する姿勢が重要になる。

さらに言えば、主体的な行動の基準となる「駐在員としての自分の存在価値」を理解していなければならない。私自身、駐在地で慣れてくると初心を忘れてその思考を止めてしまうことはよくある。いつでも振り返りが出来るように、この記事で駐在員として働くことについて整理しておきたい。

私の駐在先の現地社長が駐在員を評価するときの指標も「駐在員だからこそ出来る付加価値の高いことをしているか」である。わざわざ高い賃金を支払って現地語で満足に会話もできない、いわゆる使いにくい社員を会社に置いているのだから当然である。

そもそも駐在員が派遣された背景は?

自分の存在価値を確認する前に、そもそも本社が駐在員を派遣する理由は何だろうか。

私の勤務先の場合、日系企業である本社が欧州の地場企業の技術力と日本にはない製品ラインナップに魅力を感じ、相互補完して成長していく将来を描いて買収した。だが一方で、優れた技術力とは裏腹に財務体制と生産体制は極めて雑であり、立て直しが必要だった。赤字企業を抱えていては本社にも影響がある。

つまり、私がいる企業に駐在員が派遣される理由は主に以下である。

・安定した収益基盤の確立
・安定した生産体制の確立
・高い技術力を利用した製品開発
・高い技術力を活用したグローバルビジネス開発

あなたの会社にはどのような背景があるだろうか。慣習に従った入れ替え人事による駐在員派遣は正直に言ってお金の無駄であると思うが、最初の人が派遣された理由は必ずある。駐在員が現地企業に必要な理由を探り腹に据えることが駐在員として任務を全うするための第一歩ではないかと私は思う。

駐在員としての存在価値

自分が駐在員として現地企業で働く意味は何だろうか。前述の駐在員が派遣される理由を把握していれば超簡単だ。自分が持つスキル、知識、経験、人脈と、本社と現地企業が連結視点で見た時に抱える課題を掛け合わせたものが、駐在員として自分にしか出来ない仕事だ。現地で完結できる仕事は現地に任せておけばよい。自分にしかできないことをやる。それこそが自分の駐在員としての存在価値だ。

自分のスキル、知識、経験、人脈 × 連結企業の課題 = 駐在員としての課題 

例えば、私はエンジニアとして派遣されてきているため、下記のようになるだろう。なお、この課題は本社と現地企業がWIN-WINでなければ成立しない。その仕組みを考えるのが駐在員の仕事でもある。

・日本の高い設計品質レベルを欧州へ伝承
・欧州の高い先進技術力を日本や他拠点へ伝承
・新しいグローバルビジネスシーズを開拓

現地にただただ迎合し、現地オペレーションのお世話のみに奔走している人を見たことがあるが、それは単に自分と相手の両方を甘やかしているだけで、駐在員としての存在価値は低いと私は考える。駐在員と現地従業員の双方が互いの役割を尊重し、共に成長していく関係でありたいと思う。本社と子会社という関係があれど、互いに対等な企業として尊重してこそ良い関係は生まれる。

駐在員として働くこと

最後のまとめとして、今一度自分の存在価値を確認し、自分が何をすべきかを考え、主体的に課題に取り組んでいきたい。それこそがいま異国の地で働いている理由であり、私が働くプライドである。

海外で生活することや働くこと自体は目的ではない。おそらくそこが現地採用の方々とは違うところであると私は理解している。彼らのバイタリティを尊敬するが、比較する必要も意味も全くない。自分が勤めている企業の成長のために駐在員という役割を与えられ、その活躍の場が海外だっただけだ。

駐在員としてプロフェッショナルに結果を出していこう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?