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【龍山高等学校】新テスト記述式問題対応/オリジナル練習問題(全文)


2021年1月から新しく導入される予定の、「大学入学共通テスト」。
不安を抱えた生徒たちに向けて、龍山高校では新テストについての説明会が開かれた。ここでは、龍山高校が独自に作成した国語(記述式)の練習問題を全文公開する。

※記事の最後に資料・問題文、模範解答のダウンロードURLを記載しています

■龍山高等学校作成 国語(記述式)練習問題

大手電機メーカーの営業職の部長と部下が【会話文】の中で、これからの営業に必要なことという議題で話し合っている。【資料1】〜【資料3】を踏まえて、各問い(問1〜3)に答えよ。

【資料1】

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【資料2】

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(このグラフは、159社のデータ利活用の実例をまとめたものである)
出典:「公共社団法人 日本アドバタイザーズ境界」Web広告研究会作成の資料をもとに作成


【資料3】

 IT化が進んで、何ができるようになっているのかについて、多くの人が実はあまりわかっていません。「効率的にできるっていうけど、ロボットに何ができるのか?」と思っている人も多いのではないでしょうか?
 これはIT分野に明るい人がいたら怒られそうですが、IT化というのは「データ化」にこそ、その本質があると私は思っています。

 「データ化」が有効に機能した事例を紹介します。たとえば睡眠。みなさんは睡眠に関してどれくらいの知識を持っていますか? 「人間はレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返していて、その周期は90分。よって、90の倍数の睡眠時間を意識した方がいい」とか「ホットミルクを飲むと、ぐっすり眠れて睡眠の質が上がる」とか、そういう類いの情報が10年前くらいに流行していました。私もそれを信じて、睡眠時間を6時間にしたり、寝る前にホットミルクを飲んだりしていました。しかし、最近の睡眠に関する研究によって、これらの言説は根拠がないことが明らかになったというのです。
 明らかになった理由は非常に単純。睡眠の質に関して、非常に多くのデータが取れるようになったからです。心拍数や睡眠の質、寝返りの多さなどはスマートウォッチのFitbitや既存のスマホアプリで、たくさんのデータが取れるようになりました。これまでは、睡眠に関するデータがそれほどなかったので、「90分周期」とか「ホットミルク」などの言説に関して、睡眠の質との相関関係があるのか確かめようがなかったのです。それが、ITのおかげで今までの1万倍以上のデータが取れるようになって、その相関関係の有無が一発でわかるようになったわけです。 
「データ化」はビジネスの現場でも有効に活用されています。たとえば農業。かつては、ビニールハウスの温度をどのように管理すれば、おいしいトマトができるかという技術は、感覚的にしか伝えられていませんでした。「この温度を、肌で覚えろ!」みたいな感じで、多くの農家さんが学んでいたわけです。しかし、24時間365日にわたって測った温度とトマトの成熟具合の相関関係という膨大なデータを分析することができた瞬間に、「肌感覚」がいらなくなったのです。「1日のうち、日中の6時~17時までは30度でキープし、日が落ちた17時~6時は28・5度にすると、このくらいの甘さのトマトに仕上がる」というように、温度とトマトの仕上がりがデータで見えるようになったわけです。データ管理によって、職人の技術だったものが、開かれた技術となったのです。

 知人に聞いた面白い話があります。とある企業が非常に美味しい野菜を作る農家さんに対して、「その野菜、どうにかして大規模に作ることはできないでしょうか?」と相談したところ、「いやいや、これは私が長年培った経験で作っているものなので、大規模に、誰でも作れるものではないですよ」と一度は断られました。しかし、何度も通って丁寧に話を聞いたそうです。「この温度を保つんだ」「これくらいですか?」「いや、もうちょっと寒くしてだな……」と何度も何度もコミュニケーションを重ねていくうちに、野菜作りに必要な環境を忠実に再現できるようになりました。そのデータをもとに栽培状況を再現したところ、これまでその農家さんが経験で作っていた野菜と同じクオリティのものが作れるようになったといいます。その農家さんの協力と、粘り強く話を聞いてコミュニケーションを取った担当者の存在、そしてIT技術によるデータ化が、高い品質の野菜を大規模に生産できる決め手となった、というわけです。

 このように、具体的な数字の蓄積(データ化)というのは、大きな価値を持つものなのです。ITというのは、経験のような抽象的な概念でしかなかったものを、具体的な数字に落とし込めるという点で非常に優れています。抽象的なものは直接的に他人に伝えることができません。しかし、具体的な数字(データ)があれば、誰もが理解しやすく、真似できるものになっていくのです。データ化というのは、そういう利点があるのです。これは、我々のような営業職の人間にとっても有用な考え方ではないでしょうか。たとえば、経験によって〝想像”することしかできなかった「顧客のニーズ」という抽象的なものを蓄積してデータ化し、それを分析すれば、営業に活かすことができるようになるはずです。
 ただし、さきほどの野菜作りの例からもわかるとおり、大切なのは顧客一人一人と直接向き合うこと。我々のような営業マンは、データと向き合っているのではなく、人間と向き合っています。相手がどのような人で、どのような感情を持っているのかをきちんと見極めなければなりません。データに頼りすぎてはいけません。データはあくまでも、営業の助けとなるものとして活用しなければならないと思います。

(レポート『ITの本質とは?』 文責/島田)


【会話文】

部長:いいか、【資料1】に書いてある通り、これからの時代は商品の利点を伝えるだけの営業スタイルではいけないぞ。たとえば、顧客がどのような掃除機を求めているのかをヒアリングして、「それでしたら、こういう掃除機はいかがですか?」などと提案していくんだ。
部下:顧客とコミュニケーションを取りながら、顧客のニーズを把握し、それを提案していくという事ですね。
部長:そうだ。一番重要なポイントは、対話によってお客様への理解を深めていくことができるということだ。これからの時代、顧客のニーズは次々に変化していく。そのニーズに沿って営業していくことには、大きな価値がある。
部下:たしかに顧客のニーズってどんどん変化していきますものね。ちょっと前は安いものがいいって言ってた人が多かったのに、今はインスタ映えするカッコいい掃除機を欲しがっている人が増えてますからね。
部長:その通りだ。そうやって時代の変化に対応できる営業こそが、
(1)新時代の営業スタイルだ。
部下:しかし部長、その営業スタイルはもっと発展できるのではないでしょうか?
部長:なるほど。どういうことか説明してもらえるだろうか。
部下:はい。これらのヒアリング結果を、データ化して次の営業へとつなげていったほうが、知見も得られ、顧客のニーズの変化に対応できるようになると思うのです。
部長:なるほど、データ化か。私はそのあたりのことは知識が浅いのだが……。
部下:この【資料2】を見てください。これは「  ア  」ということを示したグラフです。
部長:なるほど。たしかに、ライバル企業がこれと同じような動き方をしているという話を耳にするな。しかし、このような活動にそこまで意義があるのだろうか?
部下:IT化について、同僚の島田がまとめたレポートがこちらです。【資料3】をご覧ください。現在は、ビッグデータを集め、それを分析したデータをベースにした仕事のスタイルが必要になってきているのです。
部長:君の言う通り、IT化には複数の利点があるということがわかったが、問題点も存在していると感じる。「  イ  」
部下:たしかに部長の言うこともよくわかります。今後、どのようにデータを活用していくべきなのかについてきちんと考えたほうがいいでしょうね。ぜひ島田も交えて会議の場を設けさせてください。

【問題文】

問1
(1)「新時代の営業スタイル」とあるが、それはどういう事か? 60字以内で答えなさい。

問2
空欄部「ア」に当てはまる内容を、【資料2】のグラフで具体的に示されている事実がわかるように30字以内の文章で書け。

問3
空欄部「イ」で部長はなんと言ったのか、以下の条件に当てはまるように述べよ。
1. 2文構成で、80字以上120字以内の文章で書け。
2. 1文目は「たしかに」から始め、部下のデータ活用を積極的にしていくべきであるという提案に正当性があることを、その利点も踏まえて述べること。
3. 2文目は「だが」から始め、データの活用に伴う問題点を一つ述べること。
4. 2.と3.に関しては、【資料1】【資料2】【資料3】を根拠とすること。


※資料と問題文・解答例と採点基準のダウンロードはこちら


龍山高等学校における新テスト説明会と、解説はこちら



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