終電
終電。
時刻は24時を少し回ったあたり。
酒に酔ったサラリーマンや残業終わりであろうサラリーマン、大学生、カップル。
4両ある電車の全車両の席が全てうまるほどにはいろいろな人がこの電車に乗っている。
大学の友達との飲み会を終えて帰路に就いていてた僕もその1人だった。
1両目前方、運転席のすぐ後ろの横向きの席に座る。
ほろ酔いで少しの眠気。
ここから8駅、およそ15分くらいで家の最寄駅に着く。
過去に何度か寝過ごして痛い目を見ている僕は眠気をグッと抑える様に目をグッと開いた。
プシュー
扉が閉まる。文字通りの終電だ。
電車に揺られながら携帯をいじろうとしたが充電がない事に気がつきため息をつく。
「はぁ。」
充電がある時はあれほどまでに頼り甲斐のあり何でもできる万能の機械なのに充電がないとこれ程までに邪魔な物はない。ただの鉄の塊を僕はポケットに突っ込んだ。
ただ外を眺める。
ただ外とと言っても地下鉄だから窓に映る僕をただずっと見つめているだけだった。
5駅目を過ぎた時だった。
車両の席が埋るほどの人達が全員、僕以外の全員が
消えた。
消えた、と言うよりも気がついたら居なくなっていた。消えた瞬間は見ていない。
僕の記憶が正しければ確かにここに人は居た。
酔っ払っているのか?何が起きているんだ?
「どう言う事だ?」
電車は僕だけを運んでいる。
ポケットに入れた充電が100%のスマホを確認すると圏外を示している。
…。
あまりにも静か過ぎる車内に謎の緊張感が走る。
僕以外にこの電車に乗っている人はいない。
…?
僕以外に1人も?
…運転手は??
そんな事はあり得ないと思いつつも確認の為に今いる4両目から急いで先頭へと向かう。
「嘘だろ…?」
そこにいるはずの運転手までもが居ない。
何故この電車は動いているんだ?
何かがおかしい。
窓に映った自分を見つめる。
僕は目を覚ました。
…夢か…。
僕はどうやら眠ってしまっていたらしい。
アレほど痛い目を見まいと耐えたはずだったのに。
車内を見渡す。
もちろん運転席には車掌はいるし、車両の席がうまるほどの人達もそこにきちんと居た。
電車に揺られる。
僕は外を、窓に映った自分を見た。
その窓に映った僕は、助けを求めていた。
声は聞こえないが必死に叫んでいた。
そうか、さっきまでの僕はあっちにいたんだ。
あっちの僕に微笑みかけて僕は眠りについた。
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