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慶応義塾大の小論文

今回は慶応義塾大の入試小論文について考えてみましょう。

大学入試の小論文対策をする際に、受験生は大学入試小論文の参考書や問題集を手に取ることが多いかと思います。

大型書店に行けば大学入試小論文をテーマにした参考書や問題集はあふれるほどあります。その中に有名出版社から出版された慶応・早稲田編と書かれた小論文対策の書籍があります。

本編の書き出し直後に次のようなタイトルと説明があり、いきなり強烈な違和感を感じずにはいられませんでした。

”小論文はイエスかノーかを答えるものである”

小論文これだけ!慶応・早稲田編、東洋経済新報社

これで合格できる小論文が書けるでしょうか。

慶応大学法学部の入試小論文(論述力)の問題文を抜粋引用します。

(前文省略)筆者の議論を四百字程度に要約した上で、個人と社会の緊張と対立について、あなたの考えを具体的に論じなさい。

慶応義塾大学法学部2021年度入試問題

イエスかノーかを答えるようにとは問われていません。

(前文省略)著者の議論を四百字程度に要約した上で、あなたの考えを具体的に論じなさい。

慶応義塾大学法学部2020年度入試問題

これも、イエスかノーかを答えるようにとは問われていません。

小論文とは、課題文に書かれている内容をふまえつつ、問いに対応して解答者の意見や考えを論理的に論じる(答える)ものである。

とするのが適切ではないでしょうか。

慶応義塾大の小論文と都立中高一貫校の適性作文には共通点があります。

都立小石川中等教育学校の適性検査Ⅰの問題を検討してみましょう。

文章1と文章2それぞれの「自由」についての考え方に共通する内容をまとめた上で、それについてのあなたの考えを四百字以上四百四十字以内で書きなさい。ただし、次の条件ときまりに従いなさい。(以下省略)

都立小石川中等教育学校平成29年度入試問題

ここでも、イエスかノーかを答えるようにとは問われていません。

適性検査作文とは、課題文に書かれている内容をふまえつつ、問いに対応して解答者の意見や考えを論理的に論じる(答える)ものである。

イエスかノーかを答えるのではなく、課題文における筆者の意見をふまえつつ、解答者(受検生)「独自」の意見を論じられなければなりません。

つまり、

イエスではない意見でもよいですし、ノーではない意見でもよいのです。

もっと言えば、

イエスでもなくノーでもない意見でもいいのです。

さらに言えば、

イエスでありノーである意見でもいいのです。

大学入試の入試小論文や、都立中高一貫校の適性検査の作文問題では、意見に独自性(オリジナリティ)があるかどうかもふくめて採点されますので、

イエスでもなくノーでもない意見
イエスでありノーである意見

実際にはこのどちらかになる可能性が高くなります。

解答者の独自の意見はなく、筆者の意見をただ言い換えたような意見ではダメです。問いに答えたことにはならないからです。

また、要約した内容にただ具体例や経験体験をつけ加えただけでもダメです。解答者独自の意見がないので問いに答えたことにはならないからです。

「小論文ではイエスかノーかを答えろ」は、入試小論文対策に初めて取り組む受験生に向けたアドバイスなのかもしれません。

ところが、最初に入試小論文の本質を誤って理解してしまうと、それに続く対策が迷走しかねません。

小論文対策本の全体を読んで正しい小論文対策の仕方を理解できる優秀な受験生なら、どんな対策本に取り組んでも合格できるかもしれません。

しかし、合格できるかどうかを彷徨っている多くの受験生や受検生は、間違った入試小論文対策や、まちがった適性検査作文対策をしてしまうと、真面目に頑張ったのにもかかわらず、合格を逃してしまうことになるでしょう。



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