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夜に誘う②

救急車に乗った担架の上の翔は酸素マスクを装着された。

「こちらにどうぞ。」

救急隊員に誘導されて真一はベッドの隣の長椅子に腰を掛けた。

翔を見ていると何かがあったのはわかるがそれが何かわからない。

ただ心身共に疲労していたのもわかる。

原因がサッカー部だと考えてしまうのは当然の事だった。

『あんなに真剣にしていたサッカーだったのに急に試合も練習も出なくなるなんて...。』

そんな事を考えていると、

「あの...すみませんが病院に着くまでに最近の状態の事についてお聞きしたいのですが...。」

と救急隊員が聞いてきて真一はわかる限り答えた。

病院に到着すると翔は担架に乗ったままどこかに運ばれてしまい真一は病院のベンチに誘導された。

「すみませんが容態がわかるまではお待ちして頂く事になりますがよろしいですか?」

看護師に言われると真一は返事をした。

1人になった真一は近くにあった公衆電話から葵にわかる限りの症状と病院名を連絡した。そして母親にも連絡すると翔のそばに居てあげる様に言われた。

する事もなかった為、ベンチに座った。窓から外を見るとよく晴れており、満月が病院の廊下を照らしていた。

暫くして看護師が真一の所に来た。

「どうですか?」

「身体には特に異常はないのですが神経系に不安があるみたいです。今は病室に移って酸素マスクと点滴をしながら様子を見る様に言われています。この後、病室にご案内出来ますが個室ではないので夜の付き添いはお断りしております。」

「はい。少しだけ顔を見たら帰ります。案内をお願いします。」

真一は翔の病室に入るとそこには酸素マスクと点滴を付けた翔が寝ていた。

他の患者が寝ていた為、看護師が手で合図をすると病室から出た。

「明日、9時より面会できるからまたその時間になりましたらお願いします。」

ここに居てもできる事がないと思うと真一は病院の外にあるバス停へと歩きだした。

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