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夜に誘う⑥

『はぁ...疲れたな...。何してんだろ...俺...。』

真一は電気を消して暫くしても寝付けなかった。

「真一、起きてる?」

翔が小さな声で聞いてきた。

「起きてるよ。何か眠れなくて。」

「そのままでいいから少しだけ話してもいいかな...。」

「あぁ...。」

「真一は麗の事を好きだった事ってある?」

「...恋愛感情でって事?」

「...うん。」

「それは...ないかな。」

「本当に?一瞬でも?」

「ないよ。確かに麗は男子から人気があるのは知ってる。そして誰とも付き合った事がないのも知ってる。麗は誰にでも優しいけど裏を言えば誰かに特別な感情は抱かない。」

「俺達にも...?」

「俺達だから抱かないんだよ。きっと一方と付き合えばもう一方が気になって仕方なくなる。もしかしたら俺達3人が幼馴染だからこんな状況を作り出したのかもしれない。麗も麗なりに考えてるのかもしれないな。...まぁ、全てが真実じゃなくてあくまで俺の推測だけど...。」

「それって麗は今後も誰とも付き合わないって事?」

「...たぶん。大きくなるにつれ、遊ぶ事は小さい頃に比べてほとんど無くなったけどまだ3人で学校に行ける時は道の合流する場所に集まって一緒に登校してる。これは小さい頃から変わらない。だけど麗は自分だけが女っていう事にずっと前から気付いていたんだ。小学生になって暫くしてから一緒に風呂に入る事も無くなっただろ。きっとそこら辺くらいからじゃないかな?翔も麗を女として意識する時があったのは幼稚園の頃に何回かあったはず...。だから俺達の前ではできるだけ自分が女で俺達が男って事を騙し騙しこないとやってられなかったんだろう。そして時折見せた俺達の麗への好意を麗は気付いていたから他の男と付き合えば、きっと俺達を傷付けると思っているかもな。」

「...やっぱり真一にはわかってたんだ...。」

「まぁ、毎日見てたから。」

「...なぁ、俺...やっぱり麗が好きだ。」

「知ってたよ。」

「...でも俺が好きな麗は今の麗じゃなくて毎日一緒にいてずっと話をしていた幼稚園の頃の麗なんだ。あの時からずっと変わらない。あの時の麗が好きだ。」

「あの時の...って。もうあの時の麗はいない。今の麗があの時の麗じゃないのか?」

「そうなんだけど...最近、夢の中で会えたんだ。俺の好きな麗に...。」

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