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依存②

翔は溜息をひとつ吐きながら自分の部屋の扉を開けた。

鞄をそこら辺に置いた後、雑誌を頭に添えてその場で仰向けになった。

『やっとここまで来れた...疲れた...。』

その安堵からか翔はその場でゆっくりと目を閉じた。

『一人に...なりたい...。』

暫くすると家のチャイムが鳴った。その音で翔は目を覚ます。

『母さん、出てよ。』

そう思っても誰も出る事はなく、2度目のチャイムが鳴る。

『もう止めてくれ。早く帰ってくれ。』

それからピンポーン、ピポピポピンポーン、と連続で鳴らす音。

翔は耳を塞ごうとした瞬間だった。

「かけるくーん、あーそーぼ。」

家の前で聞こえた懐かしい声は幼い時に聞いていた麗の声だった。

「えっ、麗!?」

翔は飛び起きて玄関に向かうとドアの磨りガラスの向こうにはぼんやりと見える少女の姿があった。

翔は扉を開ける。すると外には誰もいなかったが塀を曲がった所からまた麗の声が聞こえる。

「翔君いないみたいだから公園にいたらきっと通るから公園で遊んでよう。」

翔は直ぐに靴を履いて外へ飛び出した。

辺りを見回しても人の影はなかった。

翔は無我夢中で公園へと走って行くと公園の砂場には少女が遊んでいた。後姿であった為、顔は見えなかったが翔は麗だと確信する。

「はぁはぁ...やっと追いついた...。」

息を切らして少女の肩に手を置くと、少女は振り返った。

幼い時の麗がそこにいた。

「よかった。やっと会えた...。」

麗はただ微笑むだけで何も話さない。

翔は麗の手を取り、「向こうで話そう。」とベンチを指差した。

今の翔からは小さい手だったがとても懐かしいその感触にただ思いを寄せるだけで幸せだった。

2人はベンチに座ると麗はちらりと翔の顔を見た。

翔は照れながらも時々、麗の顔を見ては思いに馳せていた。

暫くして落ち着いてくると翔は口を開く、

「俺さ...最近、調子悪くて初めてクラブ休んで試合も出ないって決めたんだ。どうせ出たってみんなに迷惑掛けるだけだから。こんな俺ってどう思う?」

麗は何も言わずにただ前を見空いているだけだった。

「やっぱり何もない俺なんて誰も見向きもされないかな...。みんなから逃げて一人になっても麗は一緒にいてくれる?」

麗は翔の手の上に自分の手をそっと重ねた。翔は麗の手を両手で握り、

「ありがとう、ずっと一緒にいたい。」

何も発さない幼い麗。そして翔は瞳からは止め処なく涙が溢れていた。

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