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夜に誘う④

『...ここは?』

翔は薄らと目を開けると知らない天井が見えた。

ベッドの周りには小さな棚の上には目覚し時計が置いてあり、時刻は3:40を指していた。

『眠っていたはずなのに...。』

翔はすぐに自分に酸素マスクと点滴を装着されている事に気付く。

『そっか...病院に運ばれたのか...。』

翔は大きく深呼吸をひとつすると枕の横にあったナースコールに気付いた。

点滴の付いていない右手を伸ばし、ナースコールを押した。

暫くすると真一の相手をしていた看護師が来て、タブレットを触り始めた。

そのタブレットには、

『自宅で倒れていた様で病院に運ばれたんですけど調子はいかがですか?』

と書いてあった。周りの人が寝ている為に出来るだけ声を出さない為の配慮だろう。翔は半身を起こし、タブレットを受け取ると、

『今は大丈夫です。ありがとうございます。』

と返事をした。

『今、ロビーに武藤様の付添いの天城様がいます。本日は面会時間が終了していますので、もし今すぐお会いになりたいのであれば個室への移動であれば面会は可能ですがどうされますか?移動しないのであれば天城様に意識が戻った事をお伝えはしまして、明日9時以降の面会になります。』

翔は真一が付添いでいる事に驚いたが真一は帰らずにずっと自分が目覚めるまで待っている事にはもっと驚いた。

返事は一択、『個室に移動します。』

看護師は『お待ち下さい。』と残すと病室を出て行き、暫くすると車椅子を持ってきた。翔はそれに乗ると病室を出て行った。

看護師が車椅子を押している間、翔は真一に会ったら何を話そうか考えていた。

きっと真一がこんな時間まで待っているという事は聞きたい事があるのは明白で、あの知らない世界で幼い麗と話がしたくて仕方ない事を説明しても真一は信じてくれるのかもわからず、そんな事で体調を崩し、練習や試合に出ないとは言い出せない。

でも自分の中ではあの日の事がきっかけで麗にこれ以上、近付けないのも事実でずっと悩んでいた。

どうやって真一に話せばいいのか。

逃げ道を探す他なかった。

いっその事、嘘だと思われても全てを話した方がいいのかとも考えていた。

だがそうなるとあの世界へどうやって入るのか聞いてくるだろう。

そうなるときっと持田さんが何かを知っていると思うがそれを真一に言えばきっと真一はどんな手を使ってでも持田さんから聞き出そうとするだろう...。

駄目だ...やっぱり真一には何も言えない...。

あれこれ考えている間に個室の前に止まり、看護師がドアを開けた。



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