重なる不安要素④
翔は保健室まで辿り着く辺りを見回した。休日の保健室には誰もおらず、翔はベッドへと倒れ込んだ。
うつ伏せになり枕に顔を埋めると、
「うぅあぁぁーー。」
と泣き叫んだ。その叫び声は廊下にいた結奈と静香にも聞こえ、翔が心配になった萌音も保健室に向かう途中の廊下で翔の声が聞こえるとその場に立ち止まった後、今は行かない方がいいと判断し運動場へと戻っていった。
「ねぇ、結奈。今日はもうそっとしておいた方がいいんじゃない?これ以上、追い込むのはよくないと思うんだけど...。」
廊下で静香が小さな声で伝えると、
「でも...またあの世界に行ったらきっと自分で自分を追い詰めると思うの...助けられるのは私だけだと思うから...またどこかで眠って先回りしないと。」
「こんな硬い廊下でよく眠れるわね。」
「う〜ん、寝心地は悪いけど...あっ、そうだ!2階のラウンジにロングソファあったよね!あそこならふかふかだし、気持ち良さそう。行こう。」
結奈は静香の手を引っ張ってラウンジへと向おうとしたが静香はその場に留まった。
「映画は?先輩に付き合ってたらきっと夕方になっちゃうよ。楽しみにしてたのに...。」
「その埋め合わせは今度...明日するから、ね。あと今日終わったら静香の好きなハンバーグ食べに行こう。ドリンクバーは私が奢るから。」
「ド、ドリンクバーだけ?」
「今月は厳しいの。お願い、お願い。一生のお願い!」
結奈は手を合わせて静香に頼み込むと、
「もう仕方ないわね。早く終わらせるわよ。」
「ありがとう。行こう。」
結奈は静香の手を握りラウンジへと向かった。静香もどこか微笑んでいた。
一方、翔は泣きはらすとそのまま眠ってしまった。
次に翔が起き上がった時は夢の世界の中でこの世界では身体の怠さも現実の世界よりかは軽かった為、保健室を出て下駄箱へと向かった。
行く途中で窓から運動場を見たが誰も居なかった。
運動場に出ると何をするでもなく、ただベンチに座ってぼんやりと遠くを眺めるだけだった。
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