視覚障害者の サピエとiPad 活用

※2017年1月時点の資料サピエとiPad
  
1.はじめに
 
視覚障害者がパソコン等を自ら使えるようにするには、今まではまずは本体を手に入れ、その後、画面読み上げソフトウェア等の「特別な」ソフトウェアを購入しなければならなかった。自治体の助成制度を利用すれば、そのようなソフトウェアが入手できるようになってはいるが、自治体ごとで対応が様々で必ずしも誰もが利用できるわけではない。制度を利用したくても障害者手帳の等級が該当しないために自費で購入せざるを得ない状況もまま見受けられる。こうした現状の背景には、人々の多様なニーズに対して制度側が柔軟に対応し切れていない現状がある。
今やパソコン等IT機器は必要不可欠であって、情報弱者とも言われる視覚障害者にとってライフラインを構成する重要なツールである。ツールを使いこなせるようになることで、視覚障害者の社会生活は、きっとさらに豊かになる。
アップルのタブレット製品にはiOSと呼ばれるOSが搭載されており、そのアクセシビリティー機能の一部として標準でスクリーンリーダー機能がある。この機能を「ボイスオーバー」という。ボイスオーバーが最初から搭載されていることにより、購入したらすぐに使い始められる感動。予め特別なソフトウェアを準備しなくとも使用できる喜びはこれまでに体験できなかった。加えて、使用する側の経済的負担も少ないという利点もある。とはいえ、ボイスオーバーは標準的なタッチゼスチャーと異なり、常にダブルタップや3本指スクロールなどいろいろな指の動作(ゼスチャー)がある。さらに、画面の状況を理解してスムーズにゼスチャーを組み合わせるにはそれなりに難易度が高い。今回サピエ関連のトライアルを実践するに当たっては、現場では応用講座の中で実施しているほどで有り、その難しさを察していただければと思う。
 
2.使用するアプリ
 
使用するアプリは再生側として「ボイス オブ デイジー」「DAISY Talk」「BESリーダ」の3つ。そしてサピエで図書を検索しダウンロードするまでは「Safari」を使用する。
 
3.Safariでサピエ検索とダウンロード
 
(1)ホーム画面上の「Safari」アイコンをダブルタップ。
(2)アドレスバーにキーワード「サピエ」と入力。このとき、ボイスオーバー環境ではステータスバーの時計を基点に探すと見つけやすい。
(3)下フリックで1番目の検索結果(見だし)「サピエ」を見つける。見だしジャンプができない場合は2本指を使ってローターを「見だし」に合わせる。そして、もう一度下・上フリックで探す。なお、検索エンジンをグーグルにしておくと見出しを見つけやすい。
(4)見つかった時点で1本指のダブルタップ。リンク項目を実行する。Safariではページの読み込み中をサイン音で通知する。読み込みが終わると「ポション」というサイン音でわかる。ボイスオーバーが有効になっていると、このように各種サイン音で状況を把握できるようになっており、大切な情報の一つである。
(5)サピエのログインを探してダブルタップする。所定のIDとパスワードを入力して「ログイン」をダブルタップする。
(6)「サピエ図書館(1)」をダブルタップする。左右フリックでは毎回ページのヘッダ箇所を最初から読み上げるため、ある程度習熟してきたら画面上の実際に表示されている場所に、自然に指が触れるようにするのがこつ。このリンクの場合には画面のほぼ中央にあるが、それを知っているのと知らないのではナビゲーション効率に大差が生じる。
(7)下フリックで「資料の検索」を探す。
(8)右フリックで「2.デイジーデータ検索」を探す。
(9)続けて右フリックを2回で「テキストフィールド」と読み上げる項目を見つけてダブルタップ。画面下半分にキーボードが表示されキーワードを入力できるようになる。
(10)漢字で「銀河」と入力してキーボード右下の「開く」をダブルタップ。検索が実行される。
(11)検索結果ページは表組みとなっている。ローターで「縦方向のナビゲーション」にしてタイトルや著者名だけを探索するやり方が効率的である。
(12)縦方向のナビゲーションの場合で説明する。検索結果のテーブルの各見出しを探す。ここでは「連番」「タイトル」「著者名」「資料種別」「時間数」「出版年」「製作館」「ダウン」のいずれかである。
(13)下フリックで「神様のカルテ3」を見つける。
(14)右フリックで「ダウン」を探してダブルタップする。ダウンロードが始まる。
(15)ダウンロード中は無音となってしまうのでどのぐらいまで進行しているかがわからない。デイジー図書によっては数分間待たされる。また「ポション」という音も頼りにならないので注意。(以前はサイン音で把握できた。もしかするとサピエ側の修正も必要かも。)
(16)データのダウンロードが完了するとそれをどのアプリで開くか促される。「次の方法で開く」というボタンをダブルタップする。
(17)(例)「ボイス オブ デイジーにコピー」を探してダブルタップ。
(18)以上がSafariでの検索からダウンロードまでの手順となる。
 
4.音声デイジーを再生する
 
音声デイジーとマルチメディアデイジーの再生には「ボイス オブ デイジー」を使用。Safari から転送されたデータが展開される間、待ち受け音で知らせる。展開が完了するとメッセージが表示され「OK」をダブルタップすることで本棚画面が表示される。
以下、ボイス オブ デイジーのヘルプより抜粋。
 
再生画面のボタン操作
表示ボタン
文字サイズや表示色を変更できます。
速度ボタン
読み上げの速さやピッチなどを変更できます。
前ボタン
再生位置を一つ前に戻します。縦書き表示のときは次ボタンに変わり、再生位置を一つ先に進めます。
再生ボタン
再生します。
停止ボタン
再生を一時停止します。
次ボタン
再生位置を一つ先に進めます。縦書き表示のときは前ボタンに変わり、再生位置を一つ前に戻します。
ジャンプボタン
ダイアログで指定したページに移動します。iPhoneとiPod touchでは表示されません。
移動単位ボタン
移動単位を変えるを参照してください。
しおりボタン
現在の再生位置にしおりをつけます。
 
5.テキストデイジーを再生する
 
テキストデイジーの再生には「DAISY Talk」を使用。Safari から転送されたデータが展開される間、クリック音で知らせる。取込みが完了すると本棚画面の最上部に配置される。
以下、DAISY Talkのヘルプより抜粋。
 
<朗読の開始と停止、音声設定>
 
本棚画面で図書タイトルをダブルタップすると、朗読画面に切替わります。
図書の朗読を開始・停止するには次の方法があります。
(1) 画面最下部の中央にある「再生・停止」をダブルタップする
(2) 2本指で画面をダブルタップする
(3) イアホーンマイクなどの再生・停止スイッチを操作する
本アプリはオーディオ再生アプリとしての設定が行われていますので、画面ロック中や、再生アプリ以外の他のアプリ使用中も図書の朗読が行えます。
 
<音声言語の設定>
 
 まず、図書のテキスト文字言語と音声朗読言語が合っているかどうか確認してください。
合っていない場合、34種類の音声種類から合致するものを選択することができます。
朗読画面の上部の左に「音声設定」があり、これをダブルタップすると、音声設定画面に切替わります。
設定項目の最下部にある「発話言語」をダブルタップすると、音声種類の設定画面に切替わります。
設定可能な音声種類が一覧されていますので、目的のものを選択しダブルタップしてください。
※ 3本指の上下フリックで、画面をスクロールすることができます。
 
朗読文字の確認
 
 朗読画面のほぼ中央に、朗読中文字が1行のみ表示されており、朗読を停止させ、文字確認等行うことができます。
 
文字検索
 
 検索文字を設定して移動することができます。
朗読画面の上部の右に「検索」があり、これをダブルタップすると、検索語設定画面に切替わります。
検索語を入力して、「次」(文書末に向かって)もしくは「前」(文書頭に向かって)をダブルタップして、文字検索を行い、見つかればその位置に移動します。
同じ検索語でさらに検索移動を行うには、移動単位を「検索」に設定し、「次」もしくは「前」をダブルタップします。
 
6.点字データを再生する
 
点字データの再生には「BESリーダ」を使用する。Safari から転送されたデータが展開されると「○札の本をインポートしました」のように読み上げる。
本アプリは、現在は開発が終了しており、しかも開発元のシーフェスも存在せず、今後のサポート予定もない。動作不良があり、今から購入するのはお薦めできない。
 
7.おわりに
 
サピエのウェブサイトはタブレットやスマホに十分最適化されているとはいえず、またボイスオーバーで使いやすくなっていない。今後、検証され改善されることを期待している。また、サピエから提供されている各種メディアに対応するアプリがそれぞれあるが、今後はサピエサービスを
ひとまとめにしたアプリが提供されたらうれしい。iOSでの点字読み上げアプリも現時点では事実上存在していないため、今後の取り組みが必要であると思う。
 
以上
 

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