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守られている

2泊3日の旅の記録。

恋人と最後の旅行だった。計画はすべて恋人任せ、あたしはちょこちょこ着いてくだけでよかった。
初日は朝から出掛けて、迷いながら休みながら車でお宿まで9時間。お腹いたいのによく運転してくれました。
2日とも小さい旅館だったけど、綺麗でごはんもすんごくおいしくて。何万もするホテルももちろんよいけど、バイキングもいいけど、あたしはこじんまりした旅館が好き、静かに食べれて静かに眠れる。そこは恋人とぴったり合うのでずっと気持ちよく過ごせた。

上高地では10キロくらい歩いて。なんだかね、実はね、ぼんやり、巡礼の旅にいつかは出てみたいなあと思っていて、この自由な何年間がチャンスなのでは!とかも思ってて、でも40日くらいを毎日何十キロも歩くってことがほんとにできるのかしらんと不安になったよ、10キロで疲れてたもんなあ。スポーツとかもうずっとやってこなかったので筋肉を作る細胞がたぶんハワイあたりに遊びに行ってんじゃなかろうか。

でもいいものがたくさん見られたよ。人も多かったけど、湖が美しくって。

乗鞍岳は、登って本当によかった。2700米まではバスが出ていて、そこから1時間半かけて頂上を目指す。
かるーく思っていたけどもうむっちゃしんどくて、出だしの5分くらいですっかり息があがってバテてしまった。はー?w無理無理wwいまから1時間半とか無理wwという気分だったけど、帰る時間もあったので脂肪だらけの体にムチ打った。
で、あの、途中からなんていうの、ランナーズハイみたいな、あの、登山ーズハイみたいなことになって、オラどこまででもゆける!イエスウィーキャン!イエスウィーキャンからもう7年くらいか?日本だったら死語扱いされちゃうな。ともかく、ぐいぐい登れるようになり、岩という岩を足蹴にして頂上まで登れたのだった。ちょー頑張った。

山頂、登る途中もだったけど、あたしの求めたものがぎゅっと詰まっている感じがした。
全身に風を受け、寒さで耳の奥が痛み、けれど身体は汗ばんでおり、見下ろすすべてをわたしは受け止め、すべてがわたしを肯定していた。身体を風が往き来するのがとても気持ちよかった。
その日、あり得ないほど晴れ渡っていて、いつもは見えない山まで見えていたみたい。山の天気が崩れやすいなんて嘘みたいに。そんなもんあたしの晴れ女パワーの前ではどうにだってなんのよ!なんてのは冗談だけど、この旅は最高に愛されてた。片道たった1時間半、ちょっとだけ険しい山を登っただけだったけど、あたしひとりじゃこんなに気持ちよく登れなかったと思う。恋人にほんとに感謝してる。

2日目、山を登る前の晩、わたしがちょっと拗ねてしまい、絶対駄目と分かってたのにぐずってしまって、最後なの嫌だねって二人して泣いた。よいお友達なのだからなにも悲しくないはずなんだ、彼ももうとっくに吹っ切れてるように見えたし、あたしもそのつもりだった、でも別れはつらいねえ。ひとりはつらいねえ。会えばやっぱり好きだと思ってしまうのが嬉しくってつらいね。露天風呂では身体あらいっこし、かわいいかわいい恋人の身体をたくさん触ってやった。3日すべて二人ともが相手の身体をむさぼった。気持ちよかったな~気持ちよくしてあげることのなんという喜びか…幸せになってほしいけどずっとあたしとのセックスを忘れられなきゃいいな…なんって…ワハハ。わたしのほうが彼のことを性的な目で見すぎてて、例えば高校生男子が先輩女子のいちいちをエロチックに捉えてしまうように。情けないくらいエロ目線だったのでほんと、かなり気を遣ったわ。ワハハ。ハー!あの肩にキッスしてえ!

帰り道もハプニングありでしたが(バッテリーがあがって車動かなくなってたけど隣のおじさまおばさまがそれを知ってホースで繋げて復活させてくれた…)&(坂道で前の車が急停車しブレーキ間に合わず追突してしまったがお互い大した怪我も傷もなしでたぶん何事もない)、ああ、守られているってずっと感じていた。これはたぶんあたしのじゃない、彼がきっと守られているんやと思った。わたしは普段、大した努力もせずぬくぬくと生きているから、こんなにたくさんの美しい奇跡が、あたしひとりのために、おりてきてくれるわけないって思う。これは卑屈な言い方しすぎやけども、なんていうかあたしも頑張れと言われている気がしたよ。別に何も頑張ってないわけじゃないけど、生きろと、言われてる気がした。

思い出すと涙がでてくるような旅行だった。行ってよかった。登れてほんとによかった。ありがとう。

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