創作

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小品「犬、タコ、俺。」

*心象

 公園の滑り台の途中に、マダコが一匹張り付いている。
 俺は滑り台の降り口に立って、たこ焼きをひっくり返す動作を繰り返している。
 足元には黒い犬が地面の砂を嗅いでいる。

 み み 水ヲ 欲ス

 マダコは徐々にずり落ちてゆく。
 黒い犬が吸盤の匂いを嗅ぐ。
 首輪は水色である。

 み み 水wo  欲ス

 主演、犬、タコ、俺。

―――ここは中目黒である。

ありがとうございます。いやはや。
6

小品 「森屋くん」

 おい、お前が昨日の明け方からパンダの頭の被り物をして、電線の下を潜り抜けながら直立不動かつ、うつ伏せの体勢で飛行しているのを見掛けたぞ。
 昨日は俺がいつも働いているセブンイレブン堺大町西3丁店の夜勤シフトを終えて黒い自転車で帰っていたんだ。その時お前が大きいパンダの被り物を鉢が合わないのかガタガタ振動させながら上半身裸で黒いスラックスにグレーのクロックスを履いて飛行しているのに出くわしたんだ。

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感謝を申し上げます。いやはや。
6

小品「傾聴」

 2019年1月23日、20時02分頃。
 南海高野線三国ヶ丘駅近くを或る自助会の帰りに線路沿いを東へ伝(つた)いながら、健介と政希(まさき)は歩いていた。
 御堂筋線中百舌鳥駅から地下鉄へ乗るためである。
 高校の校舎前の路地を抜けて、人気のまばらな公園近くを歩いていた最中、聞き覚えのない声で誰かがこちらに呼び掛けているのを耳に留めた。
 街灯の少ない路地に、か細いながらも男とも女ともつかぬ土の

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感謝を申し上げます。いやはや。
3

ショートショート「逆行」

 通行人が、お尻のある方向へ重力を無視して吹き飛ばされていた。
走っていた自転車より、サドルに乗っていた時の姿勢から
腰がずっと引けた状態で
30代スキンヘッドの男性が吹き飛ばされている。
「おおぅっと」
新幹線のぞみの先端の如く、丸い臀部が空気抵抗を幾らか減らして、
風を切るように疾走してゆく。
変わり映えのしない、プリウスが走りゆく景色に、尻を持つものだけが、
一心に逆行していた。
五歳園児、

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感謝を申し上げます。いやはや。
6

「啓発ビデオを作る」 ~マチガイ!引きこもり支援員~

「説明」
現代ニッポンの、間違った引きこもり支援の在り方に警鐘を鳴らす啓発ビデオです。
引きこもり支援者研修の際に視聴してもらうのが良いのかもしれません。
カラオケのイメージビデオ風のプロモーションビデオとして、斧で家のドアを破壊する場面や、
電動ドリル、掘削機を持ちながらポーズを決める人々、
黙々と石を運ぶ披支援者、
演説シーン、
腕組みをした人相の悪い支援員、
有名代議士とのツーショット写真

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小石につまずくように随想しています。
4

フィクション「やり手」

名物副長講師 スタンダードマン

就労に悩む当事者
「僕は優柔不断で決断が出来ません。
どうしたら良いですか?」

スタンダードマン
「優柔不断」とは、
まだ死ぬべきかどうか迷っているという事だ。
そんな問いはシェークスピアのハムレットでとっくの昔に終わっている。
士道不覚悟! 武士道とは死ぬこととミツケタリ。
もっと人生に踏み込め!
今すぐ斬り込め!

就労に悩む当事者
「うおおおおおおお!!」

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ありがとうございます。いやはや。
8

「籠闘」

*第一回ひきこもり文学大賞に投稿した作品。
発想は面白いがオチが弱いとの評を頂く。

(ロマネスク)

「ゲージュツカ」になろうと思った、
三人の青年がいた。
一人はひきこもりで、もう一人は、元国家試験浪人生で、もう一人は、ただの無職だった。

一人は、人類が信じてきたものを知ろうとして、手始めに旧約聖書を読み始めた。
もう一人は、人類が書いてきたものを知ろうとして、手始めに源氏物語を読み始めた。

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ありがとうございます。いやはや。
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フィクション「ドローンに追いかけられる毎日はごめんだ。」

 俺はこの頃、ドローンという飛行物体に追いかけられている。
きっかけは特にない。
思いつくとすれば、自宅から8km先の河川敷で、
白いタンクトップ姿の50代の男性が、両腕を縦に振り回しながら、
後ろ向きに歩いているのを一笑に付したぐらいだ。
俺が笑みを浮かべているのに気づいてから、23秒間動作を停止していたが、
それからは気味が悪くて、踵を返してその場を立ち去ってしまったのだ。
立ち去る直前に、

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ありがとうございます。いやはや。
4

フィクション「幼少期の思い出」

 ”つぁぼとぅらぼ”に出会ったのは1996年4月21日金曜日だった。
木造アパートを退去した”わたし”は、
ラーメン屋に勤めていた”かまはいじゃ喜代太郎”から紹介された物件に住むことになった。
かねてから常連だったラーメン屋の名物は、店長の”月見草ペンソル”が有限会社マラストセキュリティにて富豪の飼育するスコティッシュフィールドの”モミちゃん(牡)”を身辺警護した際に富豪と知り合いになり、独自の仕

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感謝を申し上げます。いやはや。
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ひきこもり 生きづらさ川柳集  その1 「理由なき逃走」

校門の 二宮金次郎ビンタしてた

週4日 水曜休みで お願いします

ワンステップ ツーステップ オア  ダイハード(Die hard)

聞き飽きた”雑草魂”除草剤撒く

労働(ロウドウ)の 濁点取れば    籠闘者(ロウトウシャ)

仕分け作業 腰が痛くなり 次休む

皿洗い お湯が熱くて 次休む

ピッキング 男女比率が 極端で

派遣社員 欠勤以後の 修羅場かな

寺清掃 雰囲気合わず 還

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小石につまずくように随想しています。
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