ドラフト2021~大学生野手編~(新人野手考察も添えて)

今回から、ドラフト2021シリーズも後半戦。大学野球はまさに今がシーズン中なので、出来れば更新ギリギリまで粘って最新のデータを反映していく予定です。

今回は大学生野手編ですが、大卒新人野手が4月末の時点で一軍で合計18本塁打も放つなど、昨年指名された面々は、ここ5年どころか、ここ20年ぐらいでも1、2を争うハイレベル。これが昨年だけの特異点なのか、それとも今後しばらくは高いままなのか。今年の候補者の名前を挙げる前に、まずは少し短く検討していこうと思います。

●昨年が異常? 新時代の夜明け?

これで1本、note書こうかなとおもっていたテーマなので、ここでは手短に。昨年の新人は特に大学生・社会人の投手・野手それぞれが開幕から活躍しまくっていますが、特に、新人時代から通用するのは難しいとされてきた強打者タイプが開幕早々から打棒を発揮しているのが本当に異例です。名前を出すまでもなく、牧秀悟選手・佐藤輝明選手のことです。

牧秀悟選手は大学時代後半の三振率が極めて低く、恐らく一軍でも全くダメということはないと思っていましたが、5月4日時点で.282、6本塁打、OPS.842と優秀な成績。6本塁打のうち4本はホームランが出やすいといわれる横浜スタジアムと神宮で放っていますので、少し本数は多いです。まぁこれはDeNAが指名した時点で予想できたこと。とはいえ、現在の二塁打が9本で、136試合出場すると36本ペース。このままいくと長島茂雄さんの34本を超える新人野手のNPB新記録となります。

牧秀悟選手の東都一部での1シーズンにおける成績を見ると、本塁打数こそ最高で2本ですが、3年の春・秋で合計14本の二塁打を放ち、かつ、高打率・低三振率・一定数の長打数を(中止となった4年春を除き)3-4年春秋すべてで達成するほど安定感がありました。1シーズンだけではフロックの可能性も高いですが、そこまで連続で達成していたのはもっと評価すべき点でしたね。145km/hを超えてくるような速球には力負けするかなと思っていましたが、今のところ対応しているようです。

佐藤輝明選手に関しては、おそらく阪神の首脳陣さえ驚いているんじゃないでしょうか。タイプ的には最初の1-2年は二軍で打撃を学び、2-3年目から一軍定着させていく計画だったのかなと思いますが、彼がキャンプ中の紅白戦や練習試合、オープン戦含め、全てでホームランという結果を出し続けたこと、加えて、新外国人のメル・ロハス選手が一軍の試合に出るまでは一軍を体験させておこうという感じでスタメン抜擢されたのではと思いますが、予想通り、いやそれ以上のペースでホームランを放ち、今や暫定ホームラン王にも手が届きそうです。このペースはおよそ、18年前の村田修一選手(元DeNA、巨人)と同じ。20年に1人のペースです。

彼の大学時代の成績から考えると、あの高すぎる三振率なので、自分の打撃を崩してしまうのではないか、と思っていましたが、彼は4年秋にフォームを改良し、一見すると強く振っているように見えなくてもヘッドを鋭く走らせるフォームにし、かつ、150km/hの高めの速球でもバックスクリーンまで運ぶなど、速球に対応しながらもかなりの飛距離でした(そのシーズンの三振率がとても悪いので印象は良くなかったですが)。実績がありながらも4年秋にフォームを改良する研究心は、開幕から現在までの1ヶ月足らずの間に打撃を見直し、ボール球を空振りする頻度が減るなどの高い対応力にも顕れています。

牧選手や佐藤選手のような点が見受けられるのであれば、1年目から一軍での結果を期待してもいいのかもしれません。とはいえ、個人的なこれまでの感覚ですと、6月以降から各球団のデータ攻めが本格化するように思いますし、彼ら自身も連戦の疲れが出てくる頃。首脳陣はうまく起用してほしいところです。とはいえ、彼らのようにいきなり打てる選手もいますが、新人は1年目から一軍で打撃好成績を残さなければいけないわけではないので、期待しすぎない心も必要だと思います。

●捕手

もうここまで読んでブラウザバックされそうな勢いですが、ここから本論です。今年の大学生捕手で言いますと、最注目は古賀悠斗(中央大)選手ではないか、と思います。高校時代から甲子園でも活躍した捕手で、大学では2年春に好成績。そこからあまり芳しい成績は残せていませんでしたが、今春はなんと現在は首位打者に肉薄する打率2位。ホームランも3本放っています。三振率は.178で少し悪めですが彼としてはかなり良い方で、四球を多く選んでいるのも良い傾向。フォームはOBの牧秀悟選手に少し似ており、彼以上に、特に直すところのなさそうな良いフォーム。肩はいわゆるバズーカではないですが精度は悪くなく、刺せる肩かなと。2巡指名を十分に期待できるのではないでしょうか。

他ですと、植田理久都(明大)選手が気になっています。昨秋からスタメン定着し、10試合、41打席で1三振、打率.281に大学初アーチも記録。今春はまだ5試合ながら昨年の長打数を上回る長打数で、打率も.389。打撃は少しドアスイング感がありますが問題ない範囲かと。肩はそこまで強肩というわけではないですが即コンバートというほどダメではありませんし、フレーミングの意識も感じられます。それに、近年のNPBは打てる捕手を求めるのがトレンドなので、植田選手に風が吹いている気がします。

他で言いますと、高校時代から有名で、昨秋のリーグ戦で大学初安打を記録した福永奨(国学院大)選手が、今春は低三振率で、打率.265とそこそこ、さらには大学初アーチも放ち、アピールできていると思いますが、これまでの実績が少ないので上位は難しいか。肩はセカスロ1.8秒を切ってくる強肩。ただ時折、ショート方向に逸れている場面があるのだけは不安です。

上位候補との声もある岩本久重(早大)は、現在打率.222とスロースタート。とはいえ4安打ながら3本の二塁打を放ち、中距離打者の看板は下ろしていません。フォームで気になる点はありませんが、打球が右方向に偏っているようにも感じられるのは少し気になりました。肩は上記の面々より強くはありませんが、弱いというわけではありません。

岩本と同じく大阪桐蔭OBの福井章吾(慶大)は、昨秋にスタメン定着し打率3割。試合数が少ないながらこれまでもリーグ戦で何度も打率3割前後を記録しています。身長も含め、森友哉(埼玉西武)選手を思わせるような選手です。今春も現在の打率.273と悪くないですが、自己ワーストペースで三振しているのは少し気になるところ。大学入学前は、プロ野球というより社会人野球で長くプレーしたい、というコメントを残していますが、果たして3年後の今はどうなっているのかも記事で知りたいところです。

●内野手(二遊間)

大学生で二遊間となると、”プロで1年目からショートやセカンドを守れるのか”という点が問われてきます。打力も必要ですが同じかそれ以上に守備力が必要です。守備が上手ければ打撃が多少弱くても一軍でスタメン機会を貰いやすくなります(二遊間のレギュラー不在の球団なら尚更)。

ドラフト候補と呼ばれる二遊間の選手の守備を全て見たわけではないですが、中川拓紀(中央大)は上手いなと思います。逆を突かれてもワンステップで送球できるほどのスローイングフォームの良さがありますし、地肩も悪くなく、スピード感もあります。打撃はほとんど長打はありませんが、リーグ戦で打率3割打ったこともあり、今季も現在.282でそこそこ。小川龍成選手(ロッテ)のようなタイプですが、彼より長打が少ないので、守備が絶賛されない限りは上位指名とまでは行かないかもしれません。

木村翔大(東洋大)も興味深い選手です。彼もまたスローイングフォームが良く、ワンステップで送球できる上手さがありますが、昨秋は10試合で4エラー、今春も10試合で5エラーと、エラー数が目立つのが気になるところです。打撃は昨秋、2本塁打に打率.325と好成績、今春は長打ゼロですが打率.306と好調を維持。フォームは近年はプロの一軍でほとんど見かけない捻り依存タイプに見えるので不安ですが、こちらも守備で高評価を得られるのなら、(上位)指名されるのではないでしょうか。なお、昨秋・今春とも盗塁ゼロですが、東洋大の選手の盗塁そのものが少ないようなので、これに関してはそこまでマイナス評価とも言えないです。

他ですと、東都二部にて3季連続で安定した打棒を発揮していた泉口友汰(青学大)。一部昇格の今季は開幕から連続打席ノーヒットが止まらず苦戦していましたが、ヒットが出始めてからは二塁打にホームランに猛打賞にと遅まきながら猛チャージ中。フォームもかなり良く、走り打ちしないのも良いですね。守備はスローイングトップの形が独特ですが動きは良いです。今春の成績をどう見るか次第ですが、ソコソコの順位で指名されてもおかしくありません(逆に言えばこれで本人が社会人野球挑戦に傾く可能性もあります)。

永江大樹(福岡大)も気になっていますが、断片的にしか情報がないので考察はしづらいです。昨秋に打点王、今春は大学初アーチ含む2本塁打、長打も4本ほど放っています。守備は飛びぬけて上手いとも言えないですが及第点クラスかと。ただし2015年の呉念庭選手(埼玉西武)以来、九州の大学の野手はここ5年、支配下指名されていないのは気がかり。とはいえ大学野球選手権に出るようなので、そこで好成績なら指名も現実味を帯びてきます。

最後に、野口智哉(関西大)。近年、野手の1巡目指名者を多く輩出しているリーグ所属で、これまでの5シーズンのうち4回、打率.350以上を記録している選手ですが、今春はここまで.267ともうひとつ。三振率も21打席で6三振と少し多め(元々から際立って良くはないです)。ヘッドを投手側に傾けすぎるフォームの限界を感じます。遊撃守備は反応こそ悪くないですがプロレベルかとなると?ですし、評価が難しいですが、前述の1巡目指名の2人(辰己涼介・佐藤輝明)の活躍を受けて、上位指名されても不思議ではないでしょう。

●内野手(一三塁)

先程の項目に載せようか迷いましたが、中山誠吾(白鷗大)への注目度が高いです。昨秋リーグ戦で4本塁打を放った、190/97のビッグサイズ内野手。守備も下手ではないですが、広大な守備範囲というわけではないのでプロではサードかなという印象。打撃は元から高打率タイプではないですが今季ここまで打率.244、本塁打も1本のみで少し停滞気味か。三振もドラフト候補としては多い方ですし、指名するとしても素材買いという感じになりそうです。

一塁手としては、六大学の2人の打者に注目。篠原翔太(明大)は捕手からファーストにコンバートされ、今春ここまで打率.353、3本塁打と好調。昨秋も打率3割&二塁打3本という好成績を残していますし、今春は三振もとても少ない。打撃フォームは同僚の植田理久都と似ており、悪くないフォームだと思います。

昨年まで外野手だった正木智也(慶大)は今季は一塁手。昨秋まで40打席以上経験したシーズンは全て打率3割以上&2本塁打を残してきた強打者ですが、今春は既に2本塁打ながら打率.200と完全に沈んでいます。それでも四球を数多く選びつつ三振は減らしており、彼なりに打撃を変えてきた結果ではあると思います(ヒッチを入れる打撃に変えた)し、残り4試合前後で打率回復の可能性もあるでしょう。もしかしたら慣れない一塁手で打撃の調子を崩しているのかもしれません。その場合は外野手としてみた方が良さそうですね。なお、映像は昨秋までのものです。

●外野手

今年の大学生外野手で言いますと、双璧は川村友斗(仙台大)・梶原昂希(神奈川大)の2人の左打センターかなと思います。川村友斗は仙台六大学にて2年秋に打率.474、3年秋に4本塁打を記録したスラッガーで、今季も既にホームランを放っています。さらには盗塁も毎シーズン4個ほど決めていますし、動ける選手なのもポイント高い。気になるとしたらもう少し三振が減ったらいいなというぐらいで、ここは今春に期待。肘を曲げたまま振り切るフォームは少し違和感ありますが、打てているならとりあえず問題はないでしょう。全国大会での実績がないので関西や関東の大学の野手と比較しにくいですが、同リーグOBの元山飛優選手(ヤクルト)が好調な滑り出しですし、川村の評価も上位クラスまで上がるかもしれません。

梶原昂希1年秋に打率4割、2年春までに6本塁打を記録しましたが、ここ数シーズンは不調。ただ今春は詳細成績までは分からずも、良かったころと同じぐらいの本数の二塁打を放っており、復調しているのかもしれません(フォームそのものは特に問題ないと思います)。長身のフィジカルモンスタータイプで、プロだと糸井嘉男選手(阪神)のような感じでしょうか。ロマンとポテンシャルが服を着て歩いているような選手なので、球団によれば高い順位をつけるのではないかと思います。

センターで言いますと、丸山和郁(明大)と鈴木萌斗(早大)は、今春どちらも打率3割以上。どちらもいわゆる1番打者タイプの左打センターで、長打は少なめ。どちらも50m6秒を切る俊足が売り。現在の成績でいえば丸山和郁がややリードかと思いますが、丸山選手は後ろに下がりながら打つフォームが気になるので、鈴木選手のほうが良いのかも、と個人的には思っています。センターに厚みを持たせたい球団なら狙ってくるのではないでしょうか。

打撃タイプとなると山本ダンテ武蔵(国学院大)が筆頭でしょう。2年春に大学初アーチを放つも、実績はそれぐらいでしたが、今春は現在三冠王。打率.395に加え4本塁打、10試合で14打点という爆発ぶりで、三振もほとんどしていません。東都一部でこの成績、プロからの高評価に繋がらないわけはないので、守備評価次第ですが上位指名すらあるんじゃないでしょうか。

同僚の川村啓真(国学院大)も非常に良いですね。今春ここまで打率.357で2本塁打、2本の二塁打、少し重心の低いフォームから強烈な打球を放つ左の強打者です。41打席で6三振は少し多いようにも思えますが、11四球も選んでおり、耐球型なのかも。昨秋の実績もありますし、即戦力中距離の外野手として評価してくる球団もありそうです。牧秀悟選手の影響もあり、今後数年、東都の野手は評価が高くなるのではないでしょうか。

他で言いますと、九州六大学の左の強打者・井上絢登(福岡大)、明大の一番打者を務める陶山勇軌(明大)などが気になっています。井上選手はインパクトの際に左腰が前に出てくるのが良いなと思いますが、九州の大学の野手なのでドラフトにおける評価がどうなのか(全国大会でホームランを打っているのは好材料ですが)気になります。陶山選手はあまり騒がれていませんが昨秋の打率.348で、今季もここまで.370、さらに二塁打も既に3本放ち、弱々しい打撃ではありません。ドラフトでは下位で突然名前を呼ばれる感じかもしれませんね。

●おつかれさまでした

もう少し選手名を出してもいいかなと思いましたが、あまり増やしすぎるのも、と思い、少し絞りました。佐藤選手や牧選手の影響で、今年はかなり打撃型の大学生野手が評価されるのではと思います。ドラフトでも上の方の順位が使われるのかも。どの球団も、大学生野手をノーマークとはいかないでしょうから。

次週は社会人投手を取り上げます。どの範囲まで取り上げるのか非常に難しいのが社会人野球です。あの選手はいないの?という声も多く出るかもしれませんが、個人的な選び方ですので悪しからずご了承くださいませ。大学生野手のことを知れて良かった!とか、社会人投手編も楽しみにしてるよ!とか思われた方、note登録と高評価、よろしくお願いします。それでは、ばいば~い。

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