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2006年ブラジル・ディスク大賞関係者投票(yamabra archive)


LATINA誌のブラジルディスク大賞、2006年度の関係者投票に僕が選んだディスクです。2004年から2021年度まで、徐々に試聴リンクをつけてnoteにアップします。またアルバムごとに、その当時ブログに掲載した紹介コメントも付します。したがってコメントが古いのはご愛嬌ということで。

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総評:


カエターノの「セー」やM姫の2作など、私が選はなくても確実に誰かが選ぶ作品は敢えて外した。べべートの30年ぶりの新作は個人的に宝物。屈折を内包した「軽音楽」は、もうこのメンバーでは聴けない貴重品。透明なサンバを作り続けるグヂンを3位。進化をみせたジアナは期待もこめて4位。5位のアフォンシーニョは甘党にはたまらない。直的に「素敵」な作品を選んだつもりだが、結果的にはコンサバという誹りを免れない?

① BEBETO CASTILHO / AMEND0EIRA

1975年の"Bebeto"以来30年ぶり(注:2006年当時)のBebetoの作品。これが出ると聴いてから待ちこがれておりました。待ちに待って聴いたこの作品、期待を全く裏切りません。Bebetoの歌もfluteもbassも、30年前の儚い響きのまま。さらにrhode/pianoにLaerucio de Freitas、produceにkassinと、Bebetoの甥でLos HermanosのMarcelo Camelo、Thalma de Freitas、Gilson Peranzzetta、Wilson das Nevesなどの豪華なline-upは、Bebetoの音楽を壊さず見事なsupport。30年前の音楽そのものなのに、全く古さを感じない。逆にいえば当時から普遍性のあるsoundだったとも言える。


② MUSICA LIGEIRA / MUSlCA LIGEIRA

1994年にもalbumを出していた、軽音楽(Musica Ligeira)trio。Sao Pauloらしい、なんとも言えない屈折感の中に、かくも美しい音楽を構築していることに驚きすら感じる。そもそも楽器編成といい、Stevie WonderやLennon-MaCartney、PrinceやThe Who、そしてChico BuarqueやPaulinho da Violaという選曲。それが全て同列で何の違和感もなく、かつこの上なく美しい。彼らの中ではそもそも違和感がないのだと思う。2004年のlive盤だが、残念ながら完璧なる歌い手のRodrigo Rodriguesが召されてしまった。この先このmember(Mario Manga(No.518)、Fabio Tagliaferriとの3人)はあり得ないわけだが、ホント惜しい。


③ EDUARDO GUDIN & NOTICIAS DUMBRASIL / UMJEITO DE FAZER SAMBA

私個人としては最も好きなartistの一人Eduardo Gudin、久々の新譜です。待ちに待っておりました。今回もNoricias dum Brasilとの組み合わせ。Paulistaでかつ白人ながら、彼流にsambaを突きつめて、彼ならではの上品なsaudadeを感じさせるsambaを聴かせてくれます。他にPaulinho da Viola, Vania Vastos(Gudinの奥さん)らが参加。Gudinの歌はご愛敬として、端正なviolaoも聴き所。昔から何も変わっていないといえばそうなのだけれど、Gudinの透明度の高い都会的な楽曲と、これまた柔らかくもcoolなchorusとの組み合わせは最高です!!!


④ GIANA VISCARDI / 4321

旧Web版disk紹介No.299で、その1st albumを紹介したGiana Viscardi。彼女の2nd albumが、前作同様TORATOREからreleaseされました。Luiz Gonzagaの1曲を除いて、全曲がGiana自身の手によるもので、これが非常に出来がよいのです。過去の良質のMPBの作品の延長線上にあり、Brasilらしさを強く感じさせる、期待を裏切らないものです。GuitarのMichael Ruzitschkaの刻むrhythmも抜群に心地よいし、No.443で紹介したFabio Torres, Paulo Paulelliも素晴らしい。今のところ今年のbestの1枚かなって思っております。ひょっとしたら今年も来日?の噂もあるようです。期待しちゃいますね。


⑤ AFFONSINHO / BELÉ

Affonsinhoの音楽は、「おお甘」である。臆面もなく甘いようだけれど、適当な恥じらいやdelicacyがあって、どろどろした情念とは無縁だ。Affonsinhoの音楽は軽い。節操なく軽い様でいて、上質で切ないsaudadeは、彼の音楽ならではのものだ。技量に秀でた、立派な、stoicな音楽のみを好む人には、おそらく全く理解されないであろう彼の音楽は、聴くものによってはこの上なく愛らしい音楽でもある。私は全く持って後者に同感である。ホント、愛すべき音楽です。


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