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2015年ブラジル・ディスク大賞関係者投票(yamabra archive)

2015年度のブラジルディスク大賞、関係者投票に選んだアルバムです。2004年から2021年度まで、徐々に試聴リンクをつけてアーカイブしています。アルバムごとに、その当時ブログに掲載した紹介コメントも付します。2015年はZÉ MANOELをはじめ割と静謐な良作が多かった気がします。あと、なんかブログでのコメントがこの年はとても短いですね。この時はまさかギンガが山形に来るとは思ってもいなかったです。



総評:

1)エスペランサも参加。典雅でマジカルな傑作。2)声の存在感はやはりミルトン。端正なバックも良い。3)壮大なスケール感とリリシズム。4)溢れる独自性。大化けしてます。5)甘美の極み、もはや伝統芸です。6)やはり現在最高の歌い手ですね。7)どこを切ってもグヂン。でもそこが好き。8)レトロ・フューチャーな傑作。9)彼らしい、どこか退廃を孕んだジョビン集。10)ヤマンドゥ、大人になったと専ら評判です。

1) GUINGA / Porto da Madama

Guingaのニュー・アルバムは、彼の声とギター、そしてなんとEsperanza Spalding、Maria João、Mônica Salmaso、Maria Pia de Vitoの4人の女性vocalistとの豪華な共演盤。自曲の他、Tom Jobim、Vinicius de Moraes、Luiz Gonzaga、Dorival Caymmiなど。彼らしい、想像を絶する、しかし無類に美しいギターの響き。そして個性的な4人の歌との共演が、息を飲む素晴らしさ。この世界観はGuingaしかあり得ない。


2) MILTON NASCIMENTO E DUDU LIMA TRIO / Tamarear

Milton Nascimentoのニュー・アルバムは、同郷のベーシストとDudu Lima率いるトリオ(Ricardo Itaborahy: piano、Leandro Scio: bateria)との共演盤。いやこれが滅茶苦茶よいです。Miltonの楽曲を中心にして、Dudu Limaの浮遊感溢れるベースを核とした色彩豊かなサウンドに、Miltonの大地から伝わるような重厚な歌が素晴らしい調和とコントラストを成している。Stanley Jordanが2曲で参加。


3) BIANCA GISMONTI TRIO / Primeiro Ceu

Bianca Gisimontiのニュー・アルバムは、昨年来日時のJulio Falavigna (dr.) 、 Antonio Porto (b.)によるトリオによる作品。これが頗るカッコ良いですね。ダイナミックなピアノと、疾走感に溢れたバッキング。複雑にして立体感のある楽曲は血を感じますね。Apple Musicで既に聴けます。


4) ZÉ MANOEL / Canção e Silencio

前作も素晴らしかったZe Manoelのニュー・アルバム。本作ではピアノを中心にしたサウンドがさらにその洗練の度合いを増し、控えめな彼の歌声には好ましい陰影が加わっっています。Kassin, Tuti Moreno等が参加。静謐でいて、何とも趣味のよろしい作品であります。


5) CELSO FONSECA / Like Nice

Celso Fonsecaのニュー・アルバム。臆面もなくあの時代のBossa Novaに徹し、やり切っている。色彩感に溢れたストリングスを加えた、(表現的にはどうかと思うが)こってこてのBossa Novaなのだ。雄弁なるストリングスと Rhodesと、ギターのバチーダ、そして柔らかな陽射しの様な彼の歌声。ストリングス・アレンジメントはEduardo Souto Neto。Claus Ogermanのあの時代を思わせる、美しく儚い作品。夏の終わりに。


6) RENATO BRAZ, NAILOR PROVETA & EDSON ALVES / Silêncio - Um Tributo A Joao Gilberto

これを本年の1枚目に紹介したかったのだ。現在のブラジル音楽界において、個人的には最も好きな男性歌手Renato Brazが、なんとJoão Gilbertoのレパートリーを歌っているのだから。そもそも重厚な彼の歌声が、これらの楽曲をどのように表現するのだろうと、興味は尽きない。そんな期待の中で聴いた本作だが、歌心溢れるNailor Provetaのサックスとクラリネット、端正で軽快なEdson Alvesのヴィオロン、余裕を残しつつも郷愁溢れるRenato Brazの歌声。Joãoの音楽の風景や粋、そして間合いが過不足無く、しかし彼等の音として表現されている。素晴らしい作品です。


7) EDUARDO GUDIN & NOTICIAS DUM BRASIL 4 / S.T.

待ち焦がれていたEduardo Gudinのニュー・アルバムは、彼が率いるお馴染みのNoticias dum Brasil 4との作品。いつもながらのGudinらしい、郷愁に溢れた美しい旋律とコーラス、そして伝統的なサンバのリズム。盟友Paulo Cezar Pinheiro、Toquinho、Cristovao Bastos、Ivan Lins、Paulinho da Viola 、Theo de Barrosなど豪華なゲストが参加。変わらぬSão Paoloの洗練を聴かせてくれます。毎度ながらご本人の歌はご愛嬌ということで。


8) ALBERTO CONTINENTINO / Ao Som Dos Planeta

Alberto Continentinoは、リオを拠点として活動するベーシスト/作曲家。Adriana Calcanhoto、Marcos Valle、Milton Nascimentoなどなど、ビッグネームのアルバムに参加していることでご存知の方も多いはず。本作は彼のソロ名義として初のアルバムで、Kassin、Domenico、Stephane San Juanなど新世代のアーティストが参加。華やかなソフト・ロックや、ファズ・ギターを前面に押し出したサイケデリックなサウンドなど、ノスタルジックでありながら、確かに新しい感覚が息づいている。スーパー・ポップでレトロ・フューチャーな大傑作の誕生です。


9) VINICIUS CANTUARIA / Vinicius Canta Antonio Carlos Jobim

Vinicius Cantuariaによる、Antonio Carlos Jobim集。Viniciusらしい、cyber感覚を漂わせた都会的なサウンドによる、過去には無い新しい感覚のJobim集。が、そこにはアマゾナス州に生を受けた彼ならではの独自の視点が、底流に、確かに息づいている。どこか鬱蒼としていて、しかし退廃を孕んだ世界観を創り上げているのだ。


10) YAMANDU COSTA / Tocata A Amizade

Yamanduのニュー・アルバム。なんかイメージ変わったな。一曲目の組曲から実に典雅なのだ。ゴリゴリって言う感じから、ショーロを基調としたこなれた演奏になっていると感じる。Alessandro Kramer (acc.), Rogerio Caetano (sete), Luis Barcelos(bandolim)のカルテット編成で、もちろんYamanduらしい主張をする場面もあるけれど、アンサンブルとしての演奏に彼の成長が感じられる。本アルバムの演奏の動画は見つけられなかったけど、予告動画の姿にまた驚いた。
https://www.youtube.com/watch?v=SdGZwVgoiw0


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