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僕の好きなアジア映画64: 血観音

『血観音』
2017年/台湾/原題:血観音(英:The Bold, the Corrupt, and the Beautiful)/112分
監督:ヤン・ヤーチェ(楊雅喆)
出演:カラ・ワイ(恵英紅)、ウー・クーシー(呉可熙)、ヴィッキー・チェン(陳文淇)、アリス・クー柯佳嬿)


JAIHOで鑑賞。これ独特の雰囲気のある、なんか変な感じの映画でした。

この映画の題材は台湾で起こった数々の社会的事件をモチーフにしているのだそうですが、これは僅かな予備知識では十分理解できないと思うのでこの際無視しましょう。基本的には3代にわたる女系家族の愛と憎しみが、サスペンスを通して描かれます。

まずは恵英紅が演じる祖母。政財界の人々が集まる骨董店を営み、さまざまなプロジェクトで影のフィクサーとして暗躍しています。恵英紅さんは1960年生まれで今年63歳。カンフー映画などを含む、膨大なキャリアーをつんだ役者さんです。しかし艶然とした微笑みはまだまだ美しいし、それが一層彼女の役柄の恐ろしさを際立たせています。

カラ・ワイ(恵英紅)

母を演じるのは呉可熙。酒と男に溺れた自堕落な生活をしていますが、広い人脈を持つやり手でもあり、また画家でもあリます。表向き陳文淇の姉と称していますが実は母、という役所のようです。最もいかれている人物のようでいて、実は最も真っ当な価値観を持っているのかもしれません。

ウー・クーシー(呉可熙)

娘を演じるのは陳文淇。祖母や母に振り回されながら、さまざまなショッキングな場面を経験し成長(崩壊?)してゆく高校生。結局は祖母と母の選択を迫られ母を捨てることになります。撮影当時まだ13−4歳であった陳文淇ですが、その演技が実に素晴らしい。

ヴィッキー・チェン(陳文淇)

時々台湾の重要伝統芸能「唸歌(台湾語による語りと歌の伝統芸能で日本の詩吟のようなもの)」の歌い手、楊秀卿さん(故人)が狂言回しとして物語を進めるのですが、これがよりこの映画の「なんか変な感じ」を増強するのです。

楊秀卿さん。この映画での写真ではありません。

物語自体はちょっと分かりにくいし、はっきりは見せない演出なのですが、三人の女性を演じた女優たちの演技は三者三様に的確で実に素晴らしいものでした。まあ万人向けではないかもしれませんが、僕はこの「変な感じ」が好きです。

金馬奨最優秀作品賞、金馬奨最優秀助演女優賞(恵英紅)、 金馬奨最優秀主演女優(陳文淇)


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