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ただ電車に乗りつづけることが、わたしにとって気分転換となることについて

あまり理解されないが、私のリフレッシュ方法の一つに「電車に乗り続ける」というのがある。

電車は新幹線や特急より、鈍行がいい。できれば(私は東京在住なので)駅間が短い私鉄より、JRの、終点の遠い電車がよい。いわゆるM電というやつだ。M電というのは、列車の前方に表示されたローマ字と数字に「M」がついているそれだ。まぁ、長距離にわたって運行されている路線、と思ってもらってかまわない。東海道線とか、常磐線とか、中央(本)線のことだ。

持ち物は財布、iPhone、充電器、文庫本、飲み物、好きなお菓子など。あと夏は冷房で冷えることがあるので、軽いはおりものもあるといい。それから、少し遠出するならやはり時刻表があると安心だ。でも時刻表を読めなくてもスマホの乗り換え案内で調べられるといえば調べられるし、だんだん趣味アイテムになりつつあるのかもしれない。(時刻表について語り始めると長くなるので、これはまた別の機会に)

まず重要なのは席取り。できれば、ボックスシートに座りたい。最近は忌々しいことに、どんどん電車が通勤タイプに置き換わってしまい(それは、普段においてはとても快適なのだが)ロングシートしかない車両も多々ある。鈍行の旅、と考えた時には少し物足りない。
それでも窓からうまく景色が見える席を確保したい。だいたい長く乗っているとどんどん人が降りていくので、途中で移動してベストポジションを見つけるのも、ありだ。

いい席を見つけて落ち着いてしまえば、あとは本を読んでも、ぼんやりと景色を見てもいい。今みたいに、思いつくままに文章を綴ってもいい。オフィスよりよっぽど集中して、文章が書けるかもしれない。

鈍行のなにがいいのだろうか。
私はとりわけ夏になると、電車に乗ってどこかへ行きたくなる。いや、正確にいうと「どこかへ」行かなくてもいい。ただ電車にだけ乗っていられればいい。

電車の車輪がレールの継ぎ目の上を通る時の、ガタンガタンという音。
トップスピードで走る車両を推進させる、モーターの音。
車輪がレールに当たりときたま出る、ギイッという音。
緑を通り越して黒々とした生命力を見せる葉が、線路ギリギリまで生い茂っているようす。
トンネルに電車が入り、出てきたときのあのまぶしさ。
人のほとんどいない駅に止まった電車に、ドアが開いた時に入ってくる熱気。

それらすべてが好ましく、電車の揺れに身を任せているうちに思考はだんだんと発散していく。

終着駅は、だいたい何時に家につけばいいか、から逆算して決まる。今日はここまで、と決めたらその駅で降りる。その駅でお土産を買い、名物(と思われるもの)を食べるのが私のルール。ソフトクリームでも、まんじゅうでもいい。たまに何もない駅もあるけど、その時はその時。

帰りはなぜか、行きよりも早く感じられる。ワクワク感もあまりない。ただ家に戻るという義務をこなすだけの行程のような気も、しないでもない。

でも家に帰らないわけにはいかない。そしてまた、現実に戻っていくのだ。

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