梅雨の朝に。
透明な白い線。空がさめざめ泣くと、地面は途端に黒くなる。ふだんの表情よりいくらか重く渋い顔をして。ぽつりぽつりと水たまりは楽しそう。ここぞとばかりにはしゃいでいるみたい。
窓ガラスは歪む。ぴたった張りついた雨粒に映る景色はカタチが違う水晶玉のよう。コンクリートからにょきにょきと、ぴしりと伸びる新緑たちは気持ち良さそうに呼吸をする。きっと彼らは晴れも雨も喜べる生き方を知っているんだ。
世界が濡れる。
傘をさす。
はしゃぎすぎた熱も、泣きすぎた夜も、この日だけはひっそりと佇んでくれる。雨の前では皆がおなじ表情をするから気持ちがいい。仮面を剥がされたように、"そのひと"の表情が見れるから心地がいい。
透明な雨に流される淀んだ気持ち。
傘をさしてくれるきみに気づけるから、さみしがる世界に身を寄せられるから、わたしは雨が好きだ。
土曜日の、雨の朝
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