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子どもたちみんなが学習デザイナーになる

 今回の定期テストに向けてムスメさま、とても勉強を頑張っておられた。

 中学入学当時なんて、試験を受けて学校から帰ってきて、翌日も試験があるというのに午後から「行ってきまーす!」とフリースクールのアクティビティに参加しに行っていたなぁ・・・とすんごい懐かしい気持ちになる。定期テストがどういうものなのか(どういう位置づけのものなのか)も多分あんまりよく分かっていなかったんだろうし、そこでよい点をとるということに大きな意義を見出せなかったんだろうとも思う。それよりも大好きな場所に出かけていくことのほうがはるかに大事で、「えっ試験中なのに・・・?」とこちらが戸惑う様子をみて戸惑っていたフリーダムな彼女を愛おしく思い出しちゃうほどに、中学生のお姉さんっぽい勉強ぶりだった。私も彼女と一緒になぜか理科を勉強して、オームの法則とか磁界とか気象にめっちゃ詳しくなったというおまけつき。Try itの動画授業の理科の先生、ありがとう。超絶分かりやすかったです。これが無料って・・・ほんとにありがたい時代だ。

 ホームスクールだけれども塾にも行きたくないというので、一番茨の道だと思われる完全自主学習を始めてついに1クール。学年の始まりに自分で選んで買った参考書も最後までたどりついたようで、とても嬉しそうだった。最近では自分のやり方を振り返って「次からはこうしよう」と改善策まで考えられるようになっていて、「学び方を学ぶ・試行錯誤する」スタイルが板についたように思う。彼女なりの対策を後から知って、「えっ!そんなことをしてたの!!すごい!!!」ってなったこともいくつもあった。例えば試験前には学習用タブレットに入れている、「開いたらえんえん時間を溶かしてしまう可能性のあるアプリ」を一か所のフォルダにまとめて見えないようにしておくとか、「できる社会人のライフハックかよ!」と思うなど。あるいは最近勉強をしながらスマホのタイマー機能を使っているなぁ~何してんだろって思っていたのだけれども、「この量をこれくらいの時間でする」と決めて、全体量から1問にかかる時間を計算し、1問ずつラップタイムを設定していたのだという。そうすると1問解くのにどれくらいかかるかも分かるし、「目標時間になったよ」と教えてもらえていいのだとか。ほえ~。確かにタイマー機能って勉強との相性がいいなとは思っていて、私も学習支援の際に「この5問解くのに何分かかると思う?」と子どもに尋ねてそれを制限時間に設定し、「よーいスタート!」で勝負してもらったら俄然ガリガリ頑張って取り組む姿を見てビックリしたことがある。もちろん何でもかんでも速いほうがいいわけじゃないし、子どもさんの特性によっては逆効果なことも容易に想像がつくけれども、「面倒くさい計算問題だるいわぁ。」と重い腰があがらない時には一つのtipsとして自分の引き出しにあるといい。

 なんていうことを書いていたら、最近購入したベストセラー「独学大全」にも独学者のための有効な方法として「2ミニッツ・スターター」が紹介されているのを思い出した。これはタイマーを2分にセットしてすかさず作業を始め、2分たったら作業を続けるかやめるか考えるというシンプルな技法なのだけれども、著者の読書猿さんのこの言葉に納得しすぎて首を縦にブンブン振った。

事を成し遂げるために絶対に必要で、決定的に影響を与えるのは、手をつけること、着手することである。                    独学大全、読書猿、ダイヤモンド社、2020、P102
少しだけでも手につけることで、我々が感じ取れるものは少なくない。正確な所要時間の見積もりも、(着手するまで気付かなかった)その課題をやる意味さえも見えてくる。無理目に見えた課題も、取り付いてみれば、どのように分割すればいいかもわかる。また繰り返し触れるだけでも単純接触効果から苦手意識を低減できる。2ミニッツ・スターターは、この「ちょっとだけでもやる/すぐやる」ことを技法化したものに他ならない。      同上、P104

 「やらなきゃ・・・」と思いながら、やれずにダラダラしてしまうことって結構ありますよね・・・結構っていうか、私の場合は日常茶飯事だけど・・・そういう時に「やる気を出せ!」とかいう根性論なんて全く役に立たないどころか鬱陶しいだけだということは、経験上よく知っている。「人間なんてそうそう簡単にやる気だせないもんだよねー」という前提はそろそろ教育界隈でも共有されていいと思うし、今後「外側から自分の行動を促してもらう」自分に合ったツールをたくさん手にしている人が勝利をおさめるだろうと思う。それにしてもタイマーが人を行動に向かわせる魔力(強制力)ってなんなんでしょうね。タイマーだけじゃなくて、たとえば私は学習支援の時に、(課題への)集中力を維持するのが難しい子どもさんにはクイズ形式で出題するんだけれども、1問ずつ効果音(クイズ番組なんかに使われる、出題時のデデン!というサウンド)を出すなどしている。1問解いて注意がよそへ行ってしまっていたとしても、デデン!が鳴ると問題に戻ってきてくれる。「あと○問だから頑張ってやろう!」なんていう(繰り返すと双方ともに消耗する)励ましよりも、たった一つの効果音デデン!・・・自分の注意をコントロールする最適な方法は人によって違うだろうし、自分に合った方法をそれぞれが見つけていけるお手伝いはこれからもしていきたいと思っている。

 厚さ5㎝もある「独学大全」がベストセラーになっていたり(副タイトルが「絶対に学ぶことをあきらめたくない人のための55の技法」っていうのがまたアツい)、「スタディスキル図鑑」なんていう、学び方を身につけるための参考書みたいなものが発行されていたり、若い人たちに支持されているYouTuberのQuizKnockが「勉強が楽しくなっちゃう本」という、勉強方法のアイディア集みたいなものが発行されるなど、「学び方を学ぶ」新時代がやってきているなぁということを感じている。「スタディスキル図鑑」を眺めていたら、学習者によって異なる学習スタイルのバリエーションが図になって視覚化されており、「多くの学習者が複数のスタイルで学習しているため、情報の提供方法も複数用意しておくべきでしょう(※p21)」と当たり前のように記載されている。宿題が「書いて覚える」漢字ドリル一択、という現状から、漢字の学び方にはいろんな方法があると提示され、自分で試しながら選べるようになる時代がすぐそこまで来ていると信じたい。

 この学習スタイルのバリエーションとして「論理的」「言語的」「身体的」「聴覚的」「視覚的」という5つのスタイルが提示されていたのだけれども、もちろん「私はこれ」ってすっきり分類できるようなものではなく、1人の人間の中でも学習内容によって使い分けたり、発達段階に応じて変化していったりするのだろうと思う。私は基本的には超「言語的」情報処理に偏っていることを自覚しているのだけれども、今回理科をムスメさまと勉強していて「参考書の文章がちっとも頭に入ってこない」という経験をした。なんかこう、情報がのっぺりとしていて、学ぶべきことが立ち上がってこない感じ(なので、すぐに眠たくなる)。おまけに書かれている説明も「えっ?どういうこと?」と引っかかってしまうことも多く、ネット検索で調べては戻る作業を繰り返すうちに「分っかんねー!」と物理を嫌いになりそうになった(人生できっと100回目くらい)。そこで試しにTry itで授業動画を観てみたら・・・驚くほど一瞬で!理解できて、毎回5分足らずの授業なんだけど(1.75倍速で観て、練習問題をとばすので)、「分かりやすかったです、ありがとうございます。」と先生に向かって話しかけてはじゃんじゃん動画を観まくっていった。人生で初めて、物理も面白いかも?と思えたような?・・・というのはどうでもよくて、とにかく、「私は言語的に理解するタイプだから」って動画学習を避けていたんだけれども、内容によっては動画のほうがはるかに分かりやすく、効率的だということが分かって自分でもビックリしている。参考書と動画で何が違っているのか、今後検討したいと思っている。

 この経験からも言えるけれども、「学び方を学ぶ」って本当に難しい。今自分がしている方法は自分にとって「当たり前」なことが多く、「これがいい」って思いこんでいたりもする。そこを相対的に眺めてみるという力が圧倒的に必要で、自分一人でそれを実践するのは困難な場合だってあると思う。だからできれば「学び方を学ぶ」、そこに伴走してくれる先生や仲間がいてくれるといいなぁと願うし、義務教育の環境がそのように変化していって欲しい。

 QuizKnockの「勉強が楽しくなっちゃう本」でも、重要なこととして「がむしゃらにやるよりも、メタな視点を持つこと」が提示されていた。

ここまで書いてきたことを一言でまとめるなら、「メタな視点(一歩引いた視点)を持って頑張り方を工夫しよう」ということになります。がむしゃらに頑張ることのできる体力や集中力はとても大事です。ですが、がむしゃらに頑張るだけでは「できた!」という体験が不足して、勉強を楽しみながら続けていくことが難しくなってしまいます。がむしゃらに頑張るだけでは楽しめないものを楽しく進めるために必要なのが、「メタな視点から勉強を楽しくデザインする」ということです。「楽しくデザインする」とはどういうことかと言えば、「できた!」という体験をバランスよく配置することです。                                勉強が楽しくなっちゃう本、QuizKnock、2020、P74

 いやぁほんとにクリアですよね・・・結局自分に合ったやり方じゃないとダメなのは、「できた!」を積み上げられない(結果、学び続けることを維持できない)からなんだと思う。「できた!」を積み上げていくために、他者の力をかりながら勉強をデザインしていくこと。これからの教育は、子どもたちみんなが学習デザイナーになれるようにサポートしていって欲しい。

 ところでまた話は変わって。最近数学の作図でコンパスを使うことが多いのだけれども、コンパスの異様な使いにくさに「ぎゃー!」となっていた。ここで「不器用な私が悪い・・・」と思わずに、「は?私が学んだ頃から全く使いやすさが改善されていないってどういうこと?もっとマシなもんがあるに決まっている。」と信じて調べたら、「くるんパス」っていうだいぶ使いやすいコンパスがあったの~。ストレス超軽減。道具って大事。自分のせいじゃなくて道具のせいにする力も大事。(ほんとか?)くるんパスを製造販売しているsonicさんは「すべらない定規」類(リバーシブルで、すべる面とすべらない面がある)も発売してくれているので、不器用さんはお試しあれ。

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※イラストで学ぶスタディスキル図鑑、キャロル・ヴォーダマンほか、創元社、2017

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