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「普通」という凶器。

ここはとある保育園。
3歳クラス。子どもは10人いる。

雨が降っている日。
今日はみんなで何をしようか?

9人がブロックで遊びたいと言った。
1人が公園に行きたいと言った。

9人は多数決で、ブロックに決まりだと思った。何しろ外は雨だ。
でも、1人は、どうしても公園に行きたいと言った。



あなたはこのクラスの保育士です。
こんな時、どうしますか?


「風邪ひいちゃうよ。」
「危ないよ。」

雨だから外に行けない理由を諭して説得しますか?


それでも1人は納得しません。
泣きながら言います。
「いやだ。どうしても公園に行きたい。」


遊ぶ時間はどんどん減って行きます。
9人はイライラしてきました。

「普通、雨の日には公園なんて行かないだろ。」

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「普通」


この言葉を使う時、
否定的な気持ちや高圧的な気持ちが入っていると思いませんか?


「普通そんなこと言う?」
「普通にやってよ。」
「普通でいいよ。」



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私は、声のブログをやっています。
でも、最近、少しお休みしていました。

先日、
「1人でラジオなんて、自己満じゃないの?写真家なんでしょ。普通、そんなことしないよね。」

と言う声をもらったことがきっかけです。


少し、恥ずかしくなって、そして、誰かを不快にさせているのかと思って、
配信をお休みしてしまいました。


そういえば、教員を辞める時も、
「普通、公務員を辞めないよ。」
「写真家になりたいなんて普通じゃないよ。」
「普通に先生を続ければいいんだよ。」

と言う言葉をもらいました。


私の人生は、私のものですし、
私の発信は、私の表現です。

誰かを不快にさせるからといって、
それを辞めていたら、
私って誰なんでしょうか。

そう思っていても、やっぱり、
否定されれば、傷つくし、立ち止まってしまいます。

現に、心がざわついて、声のブログを少しお休みして、
色々と考えてしまいました。


「普通そんなことしない。」
という言葉は、人格否定ではないでしょうか。

あなたの感覚は普通じゃない、という言葉をぶつけられたら、受け取る相手は傷つきます。

でも、決まりを破ったり、誰かを酷く傷付けたりしていないのなら、
誰かにとっての「普通」じゃなくてもいい。


相手が何気なく使っている言葉が、時には相手の凶器になる。
だからこそ、言葉の持つ意味を考えて、大切に使っていきたい。


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保育士は、1人に聞いてみた。

「公園に行ったら何をしたいのかな?」


「雨の公園を見てみたいの。いつも晴れている時だから。」


それを聞いた9人のうちの1人が言った。
「私も、見たこと無い。探検してみたい。」


保育士と10人は、10分だけ公園に行くことにした。
長靴を履いて、傘をさして、カッパを着て。

雨の公園には、誰もいない。
水たまりができている。

水まりには雨粒が打ち付けて、
ザーッと音がしている。


ポタポタ
ピチャピチャ
バチャバチャ

色々な音がする。


遊具は雨で濡れていて、
かたつむりがいた。

そこは、子どもたちにとって、初めての世界だった。

いつもの公園なのに、すべてが違って見えた。


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私は、きっともう、「普通」と言う言葉は使わないだろう。

自分にとっての普通より、相手の世界を大切にしたいから。

そして、まだ見たことがない、自分の世界も大切にしたいから。


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