ピアノ
ピアノを習っていて良かった。
それは当時の自分との対比があるからだ。
5,6歳からピアノを習い始め、約10年間続けた。練習はほとんどせず、前日の夜か当日の朝に詰め込む。30分のレッスンも大半がお喋り。楽譜もほとんど理解していなかったので、暗譜と感覚でしのいでいた。
ピアノを辞めてから何年ものあいだ、ほとんど鍵盤に触れなかった。
上手く弾けない苛立ち。
楽譜を読むことが面倒。
練習は嫌いだけれど完璧主義。
逆に考えてみた。
ピアノを弾いて気持ちよかった(楽しかった)瞬間はいつだろうか。それは、両手で弾けたときだった。
楽しむために、考えを改めた。
最初は上手く弾けなくて当たり前。
楽譜が読むのが面倒であれば音名を書いちゃう。
ピアニストではないから完璧じゃなくてもいい。
難しい箇所は弾かなくてもよい、サビまで弾けて満足したら終了でいい。
そうしたって、誰も怒らないよ。
心が軽くなった。
数年越しにピアノを弾いた。鍵盤の重み。暗譜した曲たちは指と感覚が覚えていた。
ちゃんと練習すればよかったなとちょっとは思うけれど、頑張って弾いていたんだな。
先生もやる気のない私を𠮟りつけることなく教えてくれたから今の自分がある。
その頃、姉もクラシックピアノの有名どころにはまっており、楽譜を買っては家で演奏していた。英雄ポロネーズ、主よ、人の望みの喜びよ、ベートーヴェン3大ソナタなど。
一度は聞いたことがある曲ばかりだ。サビの右手だけ。ほんの少し弾けただけでも嬉しかった。
月並みだが、何百年も前に作られた曲が現在も弾き継がれているのはすごいことだとふと感じた。ピアノの音色のみで歌詞はついていない為、その場の雰囲気やその時の気分に溶け込んでくれる。13の音とリズムと抑揚で、こんなにも美しい曲を作れるのか。
ピアノを弾いている自分も好きになれた。素敵な曲たちにもっと出会いたいと思った。
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