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マーコのこと

マーコについて書こうと思う。
この数年間にマーコと私との間に起こった出来事たちを。

それはもしかしたら奇跡みたいなことで、あるいは私たちがそれを奇跡みたいなことにしたのかもしれない。

セクシャリティにこんがらがっていた私とマーコは、留学先で出会い、別々に帰国したあと一緒に暮らし始めた。

出会ったのはニューヨークのバスの中。正確に言うとバスから降りた直後のこと。マーコが私に「あなた日本人よね?」と話しかけてきたのがきっかけだった。バスの中で、隣に座っていたカナダ人女性に私が「日本から来た」と話しているのが聞こえたらしい。
本人曰く「一目惚れ」。
マーコの第一印象は、とにかくグイグイくる人だなって感じ。

私は当時カナダに留学していて、休暇を使って2週間のニューヨーク旅行をしている最中だった。バスを降りたあと、私たちは近くのコーヒースタンドで話をした。なぜカナダにいるのか。日本でどこに住んでいたのか。これから何をしていくつもりなのか。異国で同郷の出身者に出会った者同士が最初にやるワンセットのこと。そんな話。

でも、彼女が語る内容や言葉はどうでもよかった。
それよりも彼女の表情や店員とのちょっとしたやりとりや会話の内容と内容の並べ方に魅せられて、私は彼女に惹かれている自分がいることにすぐに気づいた。

たぶん日本語と英語のすべての語彙を合わせても、彼女本人の彼女としか言えないその雰囲気を表現することはできない。ものすごくおいしい料理をどんなに言葉で表現してみても、舌で感じる美味しさには到達しえないのと同じように。そして彼女のその「言葉で描き出せないもの」によって、私は彼女を好きになっていったんだと思う。


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