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新卒採用プロセスが入社意欲を促進するメカニズムの解明

こんにちは。
LIFULLで人事をしている中村(@misakinkmr)です。

今回は、私が約5年前に取り組んでいた卒業論文研究を紹介します。卒論を公開しようと思ったのには理由が2つあります。

1つはシンプルに、「卒論全部読みたい!」とリクエストいただいたため。嬉しかったです。ありがとうございます。

そしてもう1つが、文系の卒論研究の意義や大変さを正しく伝えたいから。

新卒採用人事のみなさん。ガクチカを聞いたときに、「団体の立ち上げ」といわれると「オッ!」、「卒論頑張った」といわれると「ふーん」となっている人いませんか?
このnoteを読んで「文系の研究も、ちゃんとやるとめっちゃ大変なんだね」と感じていただけたら嬉しいです。

テーマ設定の「壁」

研究の質や意義を大きく左右するテーマ設定。
まずは研究の種を探すために、様々な分野の先行研究を読み漁りました。

理由は忘れましたが、最初の1か月くらいは「レピュテーションマネジメント」に注目していました。関連書籍を10冊、論文を30本くらい読みましたが、思うように研究が進まず断念。その後は「リテンション」に1か月、「キャリアアンカー」に2か月、「組織社会化」に2か月くらい使いましたが、どれもうまくいきませんでした。「採用」をメインテーマにした時点で、既に半年ちかく経過していました。

私が卒論研究していた2015年(16卒採用)は、経団連による新卒採用の指針が大きく変更された時期です。後にも先にも、この年限りとなった「3年3月情報解禁→4年8月選考解禁」というスケジュール。大手が内定出しをする8月に内定辞退が多発し秋採用をする企業が増えるなど、学生のグリップが困難になっていました。「オワハラ」という言葉が生まれ社会問題として広く認知されたのもこのころです。だからこそ今「採用」を研究テーマにする意義があると感じました。

また、「採用を科学する」という考えかたは、当時世の中に浸透しておらず、学問としてはほぼ未開拓の領域でした。研究の意義は大きいと感じ、挑戦することに決めました。

仮説立案の「壁」

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本研究において何より大変だったのが、仮説立案と分析モデル構築です。

入社意欲に関する先行研究は存在しないため、リテンション研究を援用することでモデルの骨子を作りました。リテンションの主要な先行要因として「キャリア・コミットメント」と「組織コミットメント」が挙げられているため、対学生においてもそれら2つの側面からアプローチをすることで入社意欲を高められるのではという仮説です。

採用担当者の具体的な言動レベルに落とし込んだ仮説を立てる際には、自己効力感研究POS(知覚された組織的支援)研究を参考にしました。

自己効力感研究が私の研究に活かせそうだと気づいたのは、私ではなく同期です。私のゼミでは卒論は個人で執筆するのがルールでしたが、互いの研究進捗や内容について理解し、協力しあっていました。研究は「ひとりで頑張る」イメージを持たれがちですが、チーム戦です。「15人で15本の論文を書いた」ような感覚です。

ちなみにこの時点では、この分野のバイブルともいえる『採用学』も出版前でした。先行研究の少ない研究は難易度が高い。行き詰った私は、Facebookで服部先生に連絡をしてみることにしました。面識のない他大学の一学生からの相談に丁寧に返信を下さったこと、今も感謝が尽きません。

質問票調査の「壁」

こうして出来上がった、10の仮説からなる分析モデル。
自分と指導教授の納得がいくモデルが完成した時点で、研究発表大会まで2週間を切っていました。(ヤバイ、ヤバすぎる…)

次の壁は、仮説検証に必要な質問票調査(アンケート調査)です。良い分析をするためには、より多くの回答を得なければなりません。回答の収集に使える時間はせいぜい3日。外部のリサーチ会社を使う時間的猶予は有りませんでした。

残されていたのは、SNSなどを利用し自力でアンケートを拡散・回収するという選択肢のみ。絶望的な状況でしたが、皆さんの協力により3日間で802名】の回答を得ることができました。感動レベルの超特急&サンプル数!!私は昔から人に恵まれていて、周囲に助けてもらうことが多いです。感謝、感謝!!

仮説検証の「壁」

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そうして集めたデータを、SPSSやAmosを使って共分散構造分析をした結果が上記です。

・・・と、サクッと書きましたが、私は統計が得意ではありません。当時はかろうじて理解をしているレベル、今は完全に忘れました(笑)大会資料提出期限が差し迫る中、仮説検証の「壁」を乗り超えられたのは、1つ上の卒業生や、大会出場を断念したゼミの同期が手伝ってくれたからです。

多くの仮説が支持され概ね想定通りでしたが、興味深い結果も見受けられました。

考察の「壁」

①「内定理由の内的帰属」と「開示者の影響力」は「キャリア効力感」を促進するが、「成長方略の個人適合性」は有意な影響力を持たない。

この結果から、学生のキャリア効力感を高めるにあたっては、「入社後の活躍など将来の見通しよりも過去の出来事をどう認知させるかのほうが重要である」という考察をしました。


難しかったのは、②に対する考察です。

②「内定理由の詳細さ」は「キャリア効力感」に対して負の有意な影響を与えている(仮説と真逆の結果)。

「内定理由について詳細にFBがあるってことは、懸念点も詳細にFBされてるんじゃない?だから効力感が高まらないんじゃない?」

・・・確かに、それはあると思う。
でも、だからと言って「FBを詳細にすればするほど効力感が下がる」というのはどうもしっくりこない。

企業人事にも意見を求め辿り着いたのは、「詳細な内定理由の開示(とその裏側にある口説きたいという意図)により、企業からの”身の丈に合わない過剰な期待”を知覚し、かえって学生の自信を失わせている」という考察です。

確かに、言われてみればめっちゃ納得感ある…。

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大会の結果

大会直前期は、連日朝から晩まで学校に缶詰めになっていました。早朝6時、寝不足の頭に先生の怒号が響き、突き返された論文が宙を舞う…。一生忘れない光景です。
※注)先生とは今も良好な関係です^^

今、改めて論文を読み返すとさすがに突っ込みどころもありますが、当時は限界まで頑張ったと思います。大会では1位~3位を私たちのゼミが総なめにし、個人としても2位に入賞することができました。

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私は卒論研究を通じて、多くの学びと感動と仲間を得ました。
卒論研究に精を出すのも悪くないよ、というお話でした。

最後まで読んで下さった方、ありがとうございます。

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