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“匂い”で人を記憶します

たぶん、上京してからしばらく経って、なのだけれどわたしは、人のことを匂いで、記憶している。ということに気づいた。

誰かの名前を呼んだり聞いたり、顔を合わせて話したり思い出したりすると、後頭部の後ろの方にふわふわと匂い−−正確に言えば匂いのようなもの−−が漂っているのだ。

ただ、これはすべての人に対して匂うというわけではなくて、何度か言葉を交わしたり、仲が良かったり、親密な関係になったりすると発動する。
たまに初対面でも“匂う”人はいるけれど。
これらは匂いフェチの発展系みたいなものだと思っている。

この話をすると「えっ、じゃあぼく/わたしってどんな匂い?」と聞かれるのだけれど、ほとんどの場合、うまく説明できない。

はっきりとした、柑橘系の匂い、ラベンダーの匂い、ミントの匂いといった香りが想起されることは、まあほとんどない。

完全に、体臭、というか、その人のまとう何か。
たとえばそれは、奥深い森の中の匂いだったり、替えたばかりの畳の匂いみたいだったり、たいていの場合は万人ウケする“いい匂い”じゃないことが多い。
でもわたしは、その体臭のような、もわあっと漂うそれぞれの匂いのようなものを楽しく記憶する。
逆に顔や会話の内容がうろ覚えでも、匂いだけは思い出せる、なんてこともある。

匂いの記憶が「イマイチだわ」という場合は相性もイマイチだったりするので意外と役に立つ。

ただ、刺激的な匂いや今まで嗅いだことのない感じをキャッチすると、好き嫌いに関わらずフラフラそっちへ引き寄せられ、気づいたら痛い目に、なんてことも、ままあったり、なかったり?

人の名前や顔を覚えられないという人は、別の何かで覚えていたりする。わたしは、匂いという、とても言語化しにくいもので人を記憶する。

そしてその、“匂い”は時折変化する。根本的な匂いのカテゴリは変わらないけれど、ハッキリ匂うようになったり、ちょっと薄くなったり、違う要素が加わったりする。

そういう時は、たいてい本人に何か変化が起きている。

何か大きなことで悩んでいたり、もしくは決断を下したり、ものすごく悲しかったり、ハイテンションだったり。

匂いだけで心の矛先は分からないけれど「何かあったんだろうな」というのは分かる。

匂いは、たいてい一対一でサシの時でないと溢れてこない。大人数や複数でいると、あんまり匂わない気がする。

わたしの匂いは、わたしでは分からない。

自分の背中を直接肉眼で見たことがないように、不思議な距離感で「わたし」はわたしを見守っている。

ここのところ、きっとクサくはないはずよなんて、笑うくらいには調子がよい。それは、今までより少しだけ、自分をいたわることを、意識的に続けて来たからかもしれない。

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何につけても「そもそも」を考えがちな1991年静岡生まれ、北海道在住の編集者。カバー画像 by https://twitter.com/meimay_yoshioka

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コメント (4)
はじめまして。
その感覚分かります。
だからとても嬉しかったです。
人の匂いってありますよね。香水だけじゃなくてその人から漏れてる香り。そしてイマイチな感想を持つ人は本当に相性もイマイチなのもわかります。人はいろんな個性を香りで放ってるとそう思います。
> kanaさん
ありがとうございます!共感しにくい現象(?)なので、うれしいです。
ニオイってめちゃくちゃ身近なのに最も原始的で本能的な感覚だと思います。視覚に頼りすぎた現代だからこそ大切にしたい能力ですよね。
五感に敏感な方って星からの影響は大きいです!わかるーーって共感しました♡
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