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大好きな京都の街が、日常の風景になる

京都に移住をして、はや半年が経とうとしている。相変わらず、京都の街が大好きだ。旅行で何度も訪れたときに思った「好き」と、実際に暮らしてみて日常になってから思う「好き」には、雲泥の差があるように感じる。今日は、この違いについて書いてみたい。

きっかけは、執着と憧れと悔しさ

人生初めてのひとり旅は京都へ

私の京都への執着のような憧れは、高校生のときまでさかのぼる。高校1年生のとき、ひとり旅の行先として京都を選んだことが、この執着の最初のきっかけだ。はじめて訪れたときに見た、「龍安寺」や「北野天満宮」が忘れられなかった。自分で行きたい場所をしぼり、ルートを決めて、ひとりで動く。そんな経験をはじめてしたからこそ、強烈に記憶に残ったのかもしれない。

訪れる度、大好きな場所が増える

そこから憧れを育み続ける。京都の大学への受験や京都の企業への就職を試みたものの、無残に失敗し、「京都で暮らす」ことを選択できない悔しさが、ずっとずっと心の片隅に残っていた。

京都には、それはもう数えきれないほど遊びにいったけれど。「旅行」として京都に訪れれば訪れるほど、京都に「住めない」悔しさをひしひしと感じるだけだった。京都で日常を送っている人たちに激しく嫉妬をしたりもした。そして、環境を変える勇気のない自分自身を責めては、電車にのって京都の街を後にしていたのだ。

この景色を見てどれだけ住みたいと思ったか

だから、私が京都で暮らし始めたという事実には、きっと、執着や憧れ、悔しい気持ちをしていた自分へのゆるし、いろんな感情が詰まっている。「京都が好きで、移住してきました」とは言っているけれど、そんな綺麗なことでは言い表せないほどの、もやが心の中に渦巻いていたのだろう。京都に住み始めてやっと、靄を少しずつ晴らして、執着や憧れを手放すことができるようになったのだ。

大好きで憧れの街が「日常の風景」に

憧れだった鴨川は、もはや私の暮らしそのものだ

10年以上もの間、あこがれ続けていた「京都での暮らし」。私は、想像以上に、京都での暮らしが気に入っている。

お気に入りのポイントのひとつが、「大好きな風景が、たんなる日常の風景になった」こと。京都の街に、私自身が溶けこんでいったような感覚があって、それがより京都を好きだと思わせてくれる。

世界遺産が散歩ルートにある暮らし

「大好きな風景が、たんなる日常の風景になった」とはどういうことかというと、いままで10年間憧れてやまなかった風景が、日常の風景になり下がったということ。あのときワクワクしながら踏み入れたお寺の境内に、いまは散歩がてらふらっと訪れることができる。あのとき大学の授業をさぼって見に行っていた京都の桜の景色に、いまは仕事の合間にふらっと立ち寄ることができる。

特別で憧れであった場所が、たんなる日常の暮らしの場所であること。観光地だと思っていた場所が、たんなる日常の延長線上にあること。憧れも執着も「好き」という気持ちも、すべてがすべて「日常の風景」に溶け込んで、私の中に馴染んでいく。それを実感したときに、やっぱり私は「京都に暮らしてみて、よかった」と強く思ったのだ。

じんわりと幸福が広がるような

「旅行として訪れるだけじゃ、足りない」という悔しくもどかしい想いに揺さぶられて、ここに住み始めた。日常の風景に大好きなものがたくさんある暮らしは、日々を穏やかにさせてくれる。断片的ではなく、24時間365日を通して、好きな街の移り変わりを感じられる幸せに、勝るものはない。

季節によって違う、目の前の景色

そう、好きな街の移り変わり。京都に住み始めて、大好きな景色をじっと見つめることによって、季節というものは、たった4つだけには分けられないことを知った。春夏秋冬の中にも、夏と秋の、涼しさと暑さの混ざったグラデーションのような日があることを知ったし、春から夏の、桜が散ってから新緑に変わる速さを知った。

秋と冬

大好きな街に住んでいるからこそ、五感が研ぎ澄まされて、ほんのささいなことでも見逃すまいと、そこらじゅうの景色をよく観察するようになった。よく観察すればするほど、変化、すなわち移り変わりに敏感になってくる。そして、その変化にこそ美しさが宿っていることを実感した。

こうやってささいな移り変わりを愛せる人になったのは、私が長年大好きだった京都に住んで、さらに京都を好きになったからだろう。そう思うと、私は今でも京都の街に執着に似た気持ちを抱いたままなのかもしれない。

けど、好きな街に、ほかでもない自分自身の選択と決意で、住むことができているんだ。執着の末の移住だったかもしれないけれど、それでも、私の日々を丸ごと愛せているのは、大好きな京都で暮らているからだろうな。これからも、心ゆくまで、好きな街を、愛そう。


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