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2022年暮らした街の回顧録:神奈川・鶴巻温泉

1年間家を持たずに旅するように暮らしてきた私が、2022年に暮らした街を振り返る回顧録エッセイです。当時書いた日記やnoteを読み直し、さらに「今感じること」を付け加えたようなもの。多拠点生活の中で、奇跡のように出会った街に感謝の想いを込めて。じっくりと丁寧に書いていきます。

2021年の暮らした街を振り返ったnoteはこちら。

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静岡県から海沿いを移動、神奈川県に入り「鶴巻温泉」という場所に降り立った。「温泉」の名前が付いている地域だったから、てっきり山間の静かでのどかな温泉街が広がっているのかなあ~なんて思ってみたら、ごくごく普通の住宅街で驚いたのを覚えている。

温泉街はどこ…?

なんといっても、私はこの「鶴巻温泉」という単語をはじめて知ったのである。秦野市、という地名も知らなかったし、静岡から東京に向かう途中で、たまたまADDressの拠点がいくつかあったから立ち寄ろう、という中継地みたいな立ち位置で捉えていたから。街のことは何も知らない状態で、むしろ「温泉街でゆっくりしよう~」という気持ちですらいたのだ。

私は1年間ほどの多拠点生活を「ADDress」という日本全国定額で住み放題のサブスクサービスを利用して行っていた。観光地だけでなく、ごく普通のなんでもないような街にも拠点がたくさんあるので、「事前に街のことを何も知らずに、たまたま中継地だからと予約してみた」みたいなことが頻繁にあった。「鶴巻温泉」も、完全にそういった温度感で訪れていたのだ。

人々の暮らしが見える街

「温泉街=ちょっとした観光地気分」で駅のホームを降り立ったのに、「なんだか普通だ」と肩透かしをくらったような気持ちになった。けれど、鶴巻温泉では、この「なんだか普通だ」の感覚を大切に、ささやかな街の魅力をたくさん見つけたことが、何よりも記憶に残っている。

なんだか普通だ

たとえば、地図を持たずに散歩をしてみる。住宅街らしく、道が入り組んでいて、坂や曲がりくねった道が多く、自分がどこにいるのか、どの方角へと進んでいるのか分からない感覚が面白い。思い通りにはいかないけれど、それがまた楽しかったりする。

あえて目的地を決めずに進む

駅の方になんとなく向かえば、マンションばかりの、人たちの生活がよく見える場所に行ける。少し離れるとマンションだらけの街が嘘だったかのように、畑ばかりの開けた場所に繋がる。坂が多いからこそ、坂の上から広がるパノラマの街並みは、なんともいえない感動を生み出す。「なんだか普通」だからこそ、そんなささいなものにだって心が動いていくんだ。

なんてことない景色でも、旅先なら

ほかにも、拠点で出会った方と、山登りにでかけた。家の近くにハイキング感覚で気軽に登れる山があるのは、なんとも気分がいい。2月に似つかわしくないぽかぽか陽気のなか、ゆるやかな山道を歩く。冬特有の枯れた木々の隙間から太陽の光がさんさんと降り注いできて、平和な景色だった。

ハイキング感覚で散策を楽しむ

山頂で景色を見ながら食べようと連れてきた、たった1個のおにぎりが、なんともおいしかった。「なんて心地がいいんだろう」そんなものを丁寧に忘れないように味わっていた、あの感覚。今振り返ってみても、ありありと思い出せてしまう。

山頂のおにぎり、最高…!

こうやって、事前にまったく情報がなかったからこそ、出会えた景色と感情があったのではないか、と今になって実感する。普通、新しい街へ旅をするときに、なにかしらの事前情報を調べておくことが多い。街の中心部はどこなのか、見どころはどんなところがあるのか、おいしいごはん屋さんやカフェはあるか、など。私は調べることが好きなので、事前にいろいろチェックするタイプだ。

事前に調べなかったからこそ出会えた景色

けれど、今回はまったくそういうことを知らなかった。そもそも、のどかな温泉地だと思っていたくらいなのだ。でも、その「何も知らない」状態から見えた街の様子が、とてもとても愛おしかった。知らない街をただただ行きたい方向へと進んでいく、鶴巻で出会った人におすすめの場所や温泉地を教えてもらう。

先入観がないからこそ見える景色

「何も知らない」からこそ、先入観なしでクリアな状態でその街と向き合えた。目の前に見える景色やそこで出会えた感情こそがすべてで、そこには訪れる前からの「イメージ」や「期待」はまったくなかった。そんな状態だったからこそ出会えた景色と感情。そんなシンプルな居心地のよさを教えてくれたのが、鶴巻という街だった。


知らない街が、好きな街に

「知らない街」だったはずなのに、いつのまにかじわじわ「なんかいい街」に変わっていった。その過程で出会った景色と感情にこそ、純粋に「旅をする」が詰まっていたように思う。

事前リサーチが好きな私だけれど、たまにはこうやって、なーんにも知らない状態で旅を楽しんでみるのもいいかもしれない。


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鶴巻温泉で過ごしたときのことを書いたnoteです。

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