「委員は恋に飢えている!」第3会

第3会「報告会!兼親睦会!?」


「いやー、勢ぞろいだねー」
「めんどくさいよぉ」
「金美ちゃんー、そんなこと言っちゃだめだよ?」
「…」
「では、報告会兼親睦会を始めます」
(知ってる人しかいない!)



 時間は少し戻って風紀委員の仕事を終えた日、俺は、生徒会室にいた。

「風紀委員はどうだった?」
「はい。少しハプニングもありましたが、特に問題なく仕事に取り組めました。やはり進学校なだけあり、規律を破る人はほとんどいませんでしたね」

「ハプニング、か。あいつも粋なことをするな」
「え?」
「いや、何でもない。サインも無事手に入れることができたようだな。来週からは経理委員を手伝ってもらおう」

「はい、わかりました」
会長とやり取りをした俺は返事をして生徒会室を出ようとドアに手をかけた。

「ああ、そうだ。毎月第四月曜日に委員会会議がある。仮配属の一年生の様子も知りたいのだが俺たちは学校のことについて話し合わなければいけなくてな。そこで各委員のまとめ役に集まってもらい報告会をしてもらおうと考えている。お前にはそちらに参加してもらいたい。みんな一年生だし、知らない顔もいるだろう。これから一緒に活動するんだ。親睦会も兼ねてな」

了解した旨を伝え、今度こそ生徒会室を後にした。
(風紀委員のまとめ役、木本さんとは多少交流があるが、それ以外の人は知らないからな。これを機に話せるようになっておくか。)

そんなことを考えながら俺は家に帰り、休日を過ごして報告会の日を待った。



 会議室から声が聞こえてくる。俺が最後で、もうすでに全員そろっている様子だ。
誰がいるのか少し緊張しながら俺は会議室のドアを開けた。

「おい、月!もう始まるぞー、まったく」
「ど、土門!?なんでここに!?」
「なんでって、そりゃぁ美化委員のまとめ役だからな」

知らなかった。土門は美化委員に入っていたのか。

「そっか、二人とも一組だもんね!」
「火恋さん。じゃあ火恋さんも催事委員の?」
「そうそう!あ、金美ちゃんもいるよー」
そう言って火恋さんはゲームをしている金美さんの頬を触りながら教えてくれた。

「あ、あの!ゲームはこ、校則違反で、」
木本さんがゲームをしている金美さんを注意する。
「いいじゃないのぉ。ゲームくらいぃ」
「もう、ダメだよ金美ちゃん。今は報告会なんだから。つむちゃんに迷惑かけないの」

なんてこった。全員知った顔だ。

「なんであなたがここに」
そう言ってこちらを見ていたのは日早片さんだった。

「日早片さん!?委員会会議の方にいるんじゃ…」
「私は会長にこの会の進行を任された。それに、この会での議事録を会長に報告するから」
確かに、俺は親睦会をメインに言われていたから報告するのは日早片さんだろう。

「あなたの方こそ、なんでいるの。いらない」
「お、俺だって会長に言われて来たんだよ!そんな言い方しなくても」
「まあまあ、みんな揃ったんだし、喧嘩はその辺にして、始めようよ」
火恋さんが仲裁に入ってくれて、一旦言い合いは収まった。

「それでは、報告会兼親睦会を始めます」
日早片さんが始まりを宣言し、会が始まった。



 報告会事態は今回が初めてということもあり、それぞれの委員会の仕事の説明くらいで終了した。

各委員会、この三週間で問題が起きたなんてことはなかったらしい。
その後、軽めの親睦会ということで自己紹介や軽い会話なんかをする時間になった。

木本さんもたどたどしくではあるが、土門とも話をしている。
日早片さんは報告会が終わり次第、会長に議事録を報告するからと言ってすぐに出て行ってしまった。
(もう少し愛想よくしてもいいのに)
そう思っていると木本さんが話しかけてきた。

「あ、あの、この間はありがとうございました。改めてお礼を言いたくて…」
「いや、感謝されるようなことは何も」
「で、でも、こうして月浦さんと、それに土内さんともお話しできるようになったのは月浦さんのおかげです。何かお礼でも…」
「話せるようになったのは木本さんが頑張ってるからでしょ?俺はあの時、先輩を注意しただけでそれ以降は特に何もしてないしね」
「それでは私の気が済みません。何か」
「じゃあ、俺と友達になってよ。火恋さんとはもう友達なんでしょ?呼び方も、お互い下の名前でさ」

俺は少し友達作りが得意な火恋さんの真似をしてみた。
火恋さんも下の名前で呼ぶことにしていたし。きっと大丈夫だろう。
「わ、わかりました」

そう言って紡木さんは深呼吸を何度かして、姿勢を正してこちらを向いた。
「つ、月くん」
「これから、お友達として、よろしくお願いします!」
 少し頬を赤らめながらお辞儀をして顔を上げた紡木さんがとても可愛く、俺も照れて赤くなってしまった。

「う、うん。よろしくね、紡木さん」
こうして俺にまた友達が一人増えたのだった。



報告会兼親睦会が終了し、みんなが教室に戻る前に俺は金美さんに声をかけた。

「金美さん」
「んー、なあにぃ」
(相変わらずマイペースだな)

「俺、今日から三週間経理委員に行くことになったんだ」
「そうなんだぁ、よろしくねぇ」
「なんか難しいこととかってあるかな」
「いやぁ、特にないよぉ」
「そっか、ありがとう。じゃあこれからよろしく!」

そう言って、俺は金美さんと別れた。
金美さんも言ってたし、前回のように特別なことはないだろう。

(明日からしっかり仕事をして、委員長からサインもらうぞ)
そう意気込みながら俺は帰路についた。



 次の日、俺は経理委員長に挨拶をしに行った。

「生徒会仮役員の月浦月です。三週間、よろしくお願いします」
「経理委員会副委員長の金速金恵かねはやかなえです。ちょっと今委員長が留守にしてるの。もう少しで来ると思うから待っててね」

これが金美さんのお姉さんか。ものすごく仕事ができそうな雰囲気だ。
「失礼しまぁす。あ、月くんもいるぅ。よろしくねぇ。お姉ちゃん。委員長はいないのぉ」

金美さんもやってきて、軽い挨拶をすると、金美さんは副委員長と話を始めた。
「ええ、今は留守にしてるわ。というか、金美。ここでは副委員長って呼びなさいって言ってるでしょ」
「ええ、家と呼び方変えるの面倒くさいよぉ」
「本当に面倒くさがりなんだから。そんなんだから背も小さいし、太くなるのよ」

俺がいるのを忘れているのではと思うようなやり取りを行っている。最後の一言にムッとした顔をした金美さんは副委員長をにらみつけた。
「ああ、そういうこと言っちゃうんだぁ。へぇ、いいんだ。お姉ちゃんを手伝うの、やめちゃおうかなぁ」
「ちょっと、それは違うでしょ!」
「手伝うって、お仕事ですか?」
俺は興味本位で聞いてみることにした。

「あのねぇ、月くん。お姉ちゃんさぁ、実は委員ちょ」
「ああああああああ!!!何でもない、何でもないのよ、月くん。金美?今何言おうとしたの?彼には関係ないわよね??」
副委員長が金美さんの口をものすごい勢いでおさえに行き、何か言おうとしていたことを制止する。

「んんんんんんんんーーーー!!!」
金美さんは副委員長から離れようと体を動かしてもがいている。
俺はどうすればいいのかわからず困惑していると、経理委員室のドアが開いた。

「なんだ、これ。どういう状況だ?」
そう言って入ってきたのは、茶髪のイケメンで、少しチャラそうな三年生だった。

「いい、委員長!お、お、おちゅかれさまです!」
(噛んだ。おちゅかれさまって言った)
どうやら経理委員長らしい。俺は改めて自己紹介をする。

「生徒会仮役員の月浦月です。三週間、よろしくお願いします!」
「ああ。勉、いや、生徒会長から話は聞いてるよ。俺は経理委員長の数井冬馬かずいとうま。よろしく!」
「委員長、お疲れ様でぇす」
「金恵も金美ちゃんも、お疲れ」

申し訳ないが国本先輩とは違いチャラチャラして不真面目そうだ、というのが第一印象だった。
「月くん、だよね。ごめんねー、俺この後また用事があってさ。仕事とか何すれば良いかとかは金恵の指示に従ってくれる?ほんとごめんね、金恵、頼んだよ」
「は、はい!頼まれました!」
(なんか副委員長、さっきと様子が違くないか?)
そう思っていると、冬馬委員長はまたいなくなってしまった。

「はぁぁぁぁぁ」
副委員長が大きなため息を吐く。
「緊張したー」
いつの間にか金美さんも拘束から抜け出していた。

「あのー、もしかして副委員長って、委員長のこと…」
「ち、違うのよ!あれは」
「好きなんだよぉ」
「やっぱり…」
「金美ー!なんで言っちゃうのよ!なんで言っちゃうのよ!!」

副委員長は涙目になりながら金美さんをポカポカ叩いていた。
「いや、言わなくてもたぶん月くん気づいてるよぉ」
その通りだ。あの反応を見れば誰でも気づくだろう。

「じゃあもしかして、金美さんの手伝いって…」
「そうだよぉ。お姉ちゃんが委員長と仲良く、あわよくばくっつくように手助けするってことなのぉ」
なるほど。これが金美さんを経理委員会に引き入れた理由だったのか。
「ああ、もう!なんでこうなるのよ!はぁ、もういいわ」
そう言うと副委員長は俺を指さしてこう言った。

「月くん。ばれてしまったからには仕方ありません。あなたにも金美と一緒に手伝ってもらいます」
「えぇ!そんな!もし断ったらどうなるんですか?」
「その時はあなたのありもしない噂を委員長に報告します。そしてサインをもらえないようにします」
「そんなのあんまりです!」
「拒否権はありません。それがいやだったら手伝いなさい」
「いやぁぁ!」
「お姉ちゃんはああなったらもうどうすることもできないよぉ。一緒に頑張ろう?」

もうどこにも逃げられない。
こうして今日から俺と金美さんは一緒に、「委員長と副委員長、仲良しくっつき大作戦」を実行しなければいけなくなってしまったのだった。

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