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「アート×医学教育」 1年生への授業実施報告 -1(背景)

某医科大学で診療・教育に携わる総合診療医が医学生に行った自由選択授業の報告記事です。

 将来の診療で必要な言語力や感性・美意識を高める(もしくは学ぶ姿勢を身につける)のを目的に開講しました。

※ ざっくり版も作成しました@2020/2


 詳細版はこちらマガジンに保存しながらまったり更新します。


 自身の観察力や対話(問診、病歴聴取)力を向上させる訓練方法はないものか、私は以前より模索をしていた。

 理由は明白、道具も何も使用せず、一瞥、そして多少の会話のみで問題の原因に迫ることが出来るとすれば、これほどスマートで粋なことはない。極論すれば、観察と対話のみで診療が完結出来るほどであるならば…、と半ば子供じみた夢が、医学生の頃より色褪せず心に残っていた。実際、「病歴(問診)だけで8割の診断がつく(身体所見まで入れれば9割)」ということは在学中にも教えを受けたものである。

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 そもそもの原典は古く((Br Med J, 2 : 486-489, 1975)のようである)、やや拡大解釈が過ぎるのではとも言われそうだが、対話で得られる病歴(問診)と観察、およびそれを組み合わせたものの重要性、そして奥深さは、医師となり10年が経過しようとしているが、益々体感するところだ。


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 人工知能の導入が騒がれて久しく、可能性のある病気のリストアップや、機械的に決められた項目を確認していくことに関しては、近い将来圧倒的な成長度で、医療現場において活躍していくと思われる。


 一方で生活歴や社会背景など、そもそも対話や観察で「しか」得られない情報は、思いのほか多い。また、狙って話を聞きに向かう力は、チェックリストを埋めるだけのものとは異なり、実に説明し難く、試験でも能力を計りづらいアートな部分がある。

 ちょっとした言葉、表情、目線の動きの観察。そこから、感覚的に感情の機微までも察知し、踏み込んだ質問をすることで、問診票にあるものとは異なった真の問題点を抽出すること。ふとした会話から職場配置の変更を聞き出し、それ以降に症状が出現していることから因果関係を疑い精査を進めていくこと。あるいは入院中、ベッド脇にある本や写真から趣味や生きがい・家族関係・モチベーションを想像しリハビリのプログラムを考案すること。

さらには、病室に飾ってあるご家族の写真などを切り口に、家族との関係性について示唆を得、退院後の在宅生活におけるサポートの有無、どの程度協力が得られるかの仮説を持ち先手をうつこと…。

 端的に言えば、ちょっとした観察や対話から「洞察」を得、情報の評価を行い診療に活用していくことになるが、こういったことが可能なのは人間だけだ。


知識の詰め込み?

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 医学部在学中は問題解決能力を徹底的に鍛えられるが、
「どう観察するか」
「自分がどう論理的に、批判的に考え意思決定ししていくか」
「相手の年齢や認知機能・社会背景に合わせ、言葉を選び情報を引き出すか」
「複雑多様な心理・社会的困難な因子で構成された問題をどう解決するか」

これらは、言語化や一般化が困難なこともあり、学ぶ機会が限られてきた。手法も定まらないためか「現場で働けばわかる」という扱いを受け、問題が隅に追いやられてきたのではないだろうか。


絵画を医学部教育に

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 ところで、世界的にはアートは何も専門の人間だけのものではないようだ。海外では数多くの教育機関で芸術鑑賞が取り入れられており、医科大学もその例外ではない。芸術作品の医学的教育効果を示す報告は、近年続々と挙げられている。

*医科大学でのArt導入例について

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(続く)

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