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ホルモンはまずい

 若さとは、断定することである。仕事は楽しくない、焼肉屋で食べるホルモンはまずい、この人しかいない。そうやって断定して、選択肢を減らしていくことである。

 何かと決めつけて自分の世界を狭めてばかりいると、のちに仕事が順調に進み始めたり、レバーの美味しさに気付いたり、もっと素敵な人と出会ってしまったときにちょっと恥ずかしい感じになる。前に言ってたことと、全然違うじゃないかと。

 世界は広いということを、自分よりもちょっと早く知っていた人からは「ほら見ろ」と笑われるかもしれない。
 もしくは、母親のような生温かい目で見られるかもしれない。しかしそれはきっと、良い恥のかき方だと思っていて、それこそが若さの醍醐味であるとすら感じる。

 何かを定義することに快楽を覚え、偏見まみれの立派な哲学を築きながら生きているのだけど、そんなものほんの少しの経験によって圧倒的に覆されてしまう。
 結局、想像で積み上げたものなんて何の意味もなくて、経験した者にだけそれを語る権利があるのだ。

 何も知らないまま、色んなものに名前をつけて、こうだと決めつけて、自ら道を閉ざしながら生きるということ。それが、若い、ということ。
 いまわたしが、生きているということなのだと思う。そしてそんな身勝手な哲学なんて、あっけなく覆されれば良い。

 断定しないで生きてきた人間なんてきっとつまらないし、そうなるくらいならわたしは沢山、恥をかいて生きてやろうと思っている。


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