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度付き眼鏡の理想と現実

眼鏡は楽しい。
せっかく掛けるのなら、楽しんでほしい。

眼鏡ライターとして、そうした記事を10年以上書き続けているけれど、じつは私も、未だに度付きの眼鏡を作るときには楽しみ半分、不安半分という複雑な気持ちで仕上がりを待っています。

なぜか。それはやはり、これまで仕上がりに満足いかなかった経験が少なくないからなのだと思います。

なぜ、満足できなかったのか

眼鏡使用歴約30年の強度近視。きっとこれまでに作った度付きの眼鏡は、今手元にないものも含めたら40本以上になると思います。まだ眼鏡ライターになる以前の私は、レンズに厚みが出てしまう理由もわからず、毎回神に祈るような気持ちで眼鏡の仕上がりを待っていました。

眼鏡ライターとして仕事を始めた後も、満足いく仕上がりにならなかった眼鏡がないわけではありません。では、その原因は何なのだろう・・・? これまで作った眼鏡を並べつつ、考えてみました。

そうしてわかったのは、原因は「自分が思う理想の仕上がりと、現実とのズレ」にあるということ。とくに、強度近視の場合この「ズレ」が大きくなることが多いと思うんですよね。

しかもその「ズレ」が起こる理由は、自分に起因していた。だから、ツラいんです。

なかには、”PDがズレていたため見え方に違和感がある(※)”という、自分ではどうにもできない物理的な「ズレ」があった経験も少なからずありますが。それこそ主題と“ズレ”るので、今回は触れません。では、ここでは自分が原因で起こった「ズレ」の具体例を挙げてみたいと思います。

※PDとは瞳孔間距離、つまり片側の瞳孔からもう片側の瞳孔までの距離のことです。眼鏡を作るときはこの距離を測り、左右それぞれのレンズの中心が瞳の中心にくるように加工をするのですが、この位置がズレていると見え方に不具合が生じます。

1.フレームの選択ミス

私が自分で選んだフレームが、私の度数やサイズ、使用シーンなどに適していなかった、という場合です。

以前の記事にも書いた通り、私の度数は右が「S-7.75 C-2.00」左は「S-6.50 C-2.00」。いわゆる強度近視と言われる部類です(この度数で矯正視力が1.2ぐらい)。

先述の通り「レンズは中心から周縁に向かうほど厚みを増していく」という性質を知らなかった若い頃の私は、当時トレンドの横長スクエアで眼鏡を作っては、フレームからはみ出す分厚いレンズと、レンズ端にできる渦を見て、がっかりしていたものでした。

また、見た目とは異なる話ですが、「思った以上に型崩れしやすかったフレーム」も、次第に手が伸びなくなってしまいます。とくに度数が強いと、掛け心地には神経質にならざるを得ません。お店に行けば調整してもらえるけれど、それでもフレームの性質上すぐに調子悪くなってしまうものもあったりで・・・。

そのため、度付きの眼鏡については"機能性最優先”という自分ルールが生まれたわけです。

2.レンズにかける予算の不足

仕上がりについて満足できたものを見返してみると、そのすべてが屈折率1.74の両面非球面レンズ。やっぱり、見た目の美しさを考慮するなら、この選択が一番なのかなというのが私の現時点での結論です。

ただし、単焦点でもレンズ代が4~5万円ぐらいかかってしまう。だから、気軽にオススメできるものではありません。もちろん、径が小さいフレームを選べば1.67とかでも大丈夫なのですが、「両面非球面」であることは大事かも(このあたり、眼鏡店さんのアドバイスをぜひお伺いしたいです)。

過去の私は、毎月のようにインポートブランドのフレームを購入していました。しかも全部度付きにしようとするものだから、当然予算が足りない。ライターとしても駆け出しだったしね。両面非球面には当然手が出せず、時には非球面の1.60で作ることもあり、トップ画像のような仕上がりに・・・。

度付きを作るからには、しっかりレンズにもお金を掛けよう。でも、フレームはいろいろなものを掛けたい。こうした考えから、コレクションにダテ眼鏡が増えていったのです。

3.カラーレンズの仕上がりイメージがうまく描けない

カラーレンズのサンプルを見せてもらってカラーを吟味するも、作ってみたら「なんか思ってたのと違う」・・・とズレを感じることがあります。

カラーレンズの場合、「視界の好み」と「見た目の好み」を考慮しつつ、なおかつフレームとのカラーコンビネーションも考えなくちゃいけない。レンズのサンプルを目元に当てたり、フレームに当てたりして出来上がりを想像してみるのですが・・・。これが、なかなか難しい(とくに私は、そういう想像力が欠けているほうなのだと思う)。

それに、度付きにすると仕上がりのイメージも変わってきます。カラーレンズって度付きにすると結構な存在感があるんですよね。一度ナイロールフレームで作ったときは、レンズ側面の存在感が、眼鏡の存在感を超えるほどに・・・。

また、機能レンズだと屈折率が最高でも1.67、設計も球面と非球面しか展開がない場合があるんですよね。1.74の両面非球面とかと比較すると、やはり厚みとかフェイスラインの凹みが気になってしまうことも。この場合はもう、見た目より機能と割り切ります。

※ちなみに、今月作った薄色カラーの度付きサングラスは非常に満足のいく仕上がりとなりました。その件は、また後日。

理想通りには仕上がらない。だからこそ・・・

こうした、"ズレ”の原因。今振り返ると、それはお店の方とのコミュニケーション不足にあったと思います。というのも、上記の3パターンは、どうしてもこのフレームorレンズで眼鏡を作りたい! と、その他の選択肢について相談できていなかったときが多かったのです。

仕事柄、いろいろなブランドのフレームやレンズを試したいと思っているため、時にはお店さんに最善の策を相談することなく、「これで作ってください!」とお願いをすることも。往々にして、そうしたときに失敗をしていたんですね。

いやはや、眼鏡ライターとして恥を晒すような記事になっていますが・・・。でもね、それぐらい眼鏡を作るのは簡単なことではないってこと。だからこそ、プロであるお店の方にきちんと相談することが、本当に大事だってことなんですよ。

私の場合「眼鏡ライターなのに、仕上がりの予想もつかないの?」と思われても仕方ありません。でも、ほとんどのお客さんは、予備知識などない状態で来店しますよね。

「雑誌で見たあの眼鏡を、あのモデルさんのように掛けこなしたい」。そんな理想と、実際の仕上がりとのギャップに、がっかりする人は少なくないでしょう。がっかりするぐらいなら、「安い眼鏡でいいや」、「コンタクトのほうがいいや」、となってしまうのも理解できます。

良心的なお店さんは、技術的に最善を尽くしてくれます。それでも、理想と現実のギャップを完全になくすことは難しい。だからこそ、やっぱりコミュニケーションが大切。「事前に強度近視の現実を突きつけてくれる」ことも、ギャップを埋めるために重要だと私は思っています。

たとえば、前回の投稿で紹介したARBORさんの記事のように、強度数での着用サンプルを見せてくれるのもそう。あとは、カラーレンズやカーブレンズの強度数の仕上がりのサンプルもありがたいです。もちろん、同じ度数でなくとも目安になればいい。そうしたら、出来上がりを見てギョっとしてしまうこともないから。

そうした現実を踏まえ、納得したうえで、最善の選択をしてもらえたのだと理解できれば、モヤモヤは解消されると思うのです。

・・・ワガママですね。自覚はあります。すみません。でも、"見え方”も"見られ方”も非常にシビアになってしまうのが、強度近視なのです。

とはいえ、お客さん側も「お店はプロなんだから、こちらの要望を察してほしい」なんていうのは、本当に少々ワガママな話。コミュニケーションを取るためには、こちらからも自分についての情報提供が必要です。ではどんな心構え&事前の準備でお店に行くべきか。それは、またの機会に触れたいと思います。


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