「仮想現実またはネットワークコミュニケーションとリアルのギャップ」

現代ではAIを始めとした、VR、AR、ICT等が発達してきており、よりリアルに近い擬似体験ができるようになってきている。

これを応用したものは多岐の分野で活用されており、例えば、医療において義手のようなものを付けてそこから感触を得られるような装置だったり、教育関連のツールとしてICT機器を用いて遠隔授業を行ったり、コンピュータゲームにおいて専用のヘッドホンやゴーグルを装着してそのゲームの世界観に浸ったりするなど、いわゆるオンラインツールは今や生活を豊かにするための欠かせないコンテンツとなっている。

一方、オンラインの発達により、オフラインの機会が減少し、その価値が上がっているものもある。

ゲームやSNS、YouTube等の娯楽を目的としたものや遠方の人と繋がる手段としてオンラインツールが非常に便利なものではあるが、例えば何かの事業やプロジェクトを企画、実行する際に実際にその人に会ったり現場を見たりしないと共有できないことがある。

または、旅行に行く際にその目的として現地のグルメや景観を実際に体験することに価値を見出すといったような、オンラインとのギャップが存在すると、今回インタビューに協力してくださった神戸市役所の企画調整局つなぐ課で特命課長を務める秋田大介さんは指摘していたことからこの観点に注目することにした。 

インタビュー全体を通して、秋田さんは実際にオンラインとオフラインの特性を理解しており、それをうまくビジネスと結びつけているように感じた。

秋田さんは神戸市役所の役員という本業を持つ一方で、副業としてNPO法人の副理事長を務めるという一面を持っている。

そういった様々な役職を持ち、本業の業務やNPOでのプロジェクトを企画・運営していく中で、「全国的なネットワークを構築してオンライン上でのやりとりもするが、実際に会って話をするオフラインの方に重きを置いている。」ということをおっしゃっていた。

 実際に秋田さんは、自身がワークショップやプロジェクトの中で様々な企業の関係者の方とお話ししていく中で、「インターネットが普及し始めた頃、人が家から出てこなくなるだろうと言われていたが、実はみんな人に会いたい気持ちの方が強くなる。

オンラインは人を選んで繋がるから、人を選ばずに繋がる場が欲しくなる。」と自身の経験からオフラインの価値を見出していた。

 実際にマーケティング業界でもオフラインを重視している事例がある。レバレジーズというIT業界・医療業界向け人材紹介を手掛けるベンチャー企業では「オフライン行動の把握・補足が鍵」だと述べており、効率的に売り上げ効果を出すにはオフラインでの行動データも不可欠、オフラインの顧客への接し方で、その会社やサービスのブランドイメージが左右されると指摘していた。

また、B to C企業で「チャネルシフト」と呼ばれるオンラインを基点としてオフラインに進出し、顧客とのつながりを創り出すことによって、マーケティング要素自体を変革しようとする動きも注目されている。 

オフラインの重要性を述べる裏付けとして、総務省が公開している「実際に会うことによる信頼度の変化」という統計がある。この統計によると、ソーシャルメディアで知り合った相手と実際に会ったことにより、半数以上で信頼度が高まっていた。

逆に、信頼度が下がるというケースは3%以下であり、非常に少ない割合であることが分かった。信頼度が高まった理由としては、共通の話題を見つけることができた、性格をより知ることができた等相手に関する回答が多かった。

秋田さんがオフラインの価値を主張する理由の一つとして、「実際にあった時の感動は全然違う。頑張ってリアルを求めても最後の1%は埋められないと思う」ということを主張していたが、この統計の結果はこの主張に強く結びついていると言える。 

これらは現代のネットワーク社会でも言えることで、秋田さんはインタビューの中で、「AIが仕事をするほど、人と直接会う機会の方が尊重される、価値が上がる。ITの世界とリアルの世界をうまく融合させることが期待される。」と述べている。

近い未来で、様々な仕事がAIやロボットに代替されていくことが予想されている。そうした中でも人間がオフラインで携わっていく業務は必ず存在する。

AIは確かに仕事の効率を上げる今後も欠かせないツールであるが、だからといって依存するのではなく、オフラインにも重要な価値があることを再認識し、関わり方を考えていく必要がある。

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