ひとりっ子じゃダメですか?

心に芽生えた罪悪感


娘が幼稚園に入園した頃だったと思う。急に「二人目は?」と聞かれることが多くなったのだ。それは、周りが二人目ブームだったのも拍車をかけた。

娘を妊娠中、悪阻がひどく倒れて入院した経験もあり、私は「二人目」という選択をすぐには考えられなかった。それでも、娘の成長で「お姉ちゃん」になる姿を想像すれば、それも叶えてみたい願望も当然生まれた。主人も同じで、私の入院の経験からすぐにでも欲しいと言わないものの、娘の成長で少しずつできることが増えると、その先の別の一面を見たくなったのだと思う。普通の生活の中でも「兄弟を作ってあげたい」という言葉を何度か聞いたことがあった。

それでも、私たちはすぐに二人目妊活をスタートできなかった。それは、産後の私の体の変化によるものだった。頻発月経(月に2回生理が来ること)だった為に婦人科へ行くと、このままでは妊娠が難しいと先生に告げられてしまったのだ。

妊活ではなく、治療をスタートしたのは娘が入園後。そして入園後というのは、そう、周りの二人目ピークそのもの。だけど私は、娘がひとりっ子でもいいと思っていた。むしろ、それがいいとも思っていた。妊娠中の時のように、また倒れてしまうようなことがあれば、娘を困らせてしまう。それだけは避けたい、そう考えていたから。

そんな私がひとりっ子で悩み始めたのは、義理の母に言われた一言だった。


ひとりっ子は「いい嫁」失格?!


「そろそろ二人目は?」

そして義理の母から続けてこう聞かれたのだ。

「たかこちゃんだって、兄弟欲しかったでしょ?」

この時の私は、「まだ考えていないんですけど…」と答えたような気がする。気がする…というのは、実はあまり覚えていないのだ。

ひとりっ子として生まれ育った私は、兄弟が欲しいと思ったことは一度もなかった。それは私は母子家庭だったからかもしれないけれど、ひとりっ子でよかったと、実際本当に思っていた。それでも当たり前のように「二人目は?」「兄弟欲しかったでしょ?」と聞かれたことで、「ひとりっ子ってイレギュラーなのかな」と疑問をもったのだ。

その日の夜、なんだかずっと、モヤモヤしていた。それはきっと、当時の私が「いい嫁、いい母」として頑張っていたからかもしれない。義理の母の言葉が、離れなかったのだ。そして、ひとりっ子を選択することは、もしかしたら「いい嫁失格!いい母失格!」なのではないか?と不安になったのだ。

あの頃の私は「いい人」であることを頑張っていた。幼い頃から、「いい人」であればうまくいくと思い込んでいたのだ。大人になるまでにいろんな経験をしたけれど、もちろん「いい人」でいることで全てがうまくいく!なんてことはなかった。それでも、「いい人」を演じることしか、私にはできなかったのだ。

「いい子供」「いい生徒」「いい後輩」「いい先輩」そして、恋をすれば「いい彼女」、そしてあの頃は「いい嫁」と「いいお母さん」を頑張っていた。それが正解だと思い込んで。


心の拠り所だった知恵袋


「いい人」が正解だと思って「いい嫁」を目指していた私は、いつしか「ひとりっ子」を検索するのが日課になっていた。特によく見ていたのは知恵袋だ。私と同じように悩んでいる人がいることを知るだけで、気持ちが軽くなれたからだ。

そこには私のように「二人目は?」と聞かれることにうんざりしている人を見つけることもできたし、「兄弟がいた方がいい」という考えも見つけることができた。今思えば、「ひとりっ子」も「兄弟がいる子」も、どちらもメリット・デメリットがあるのだと思う。それでも、兄弟がいる体験したことのない私にとって、兄弟がいた方がいい理由を知ることは斬新だった。とにかく毎日スマホの中に、自分なりの答えを見つけるのに必死だったのだ。今思うとそんな自分がかわいいと思えるけれど…。

知恵袋などのネットの書き込みには「ひとりっ子」も悪くないという書き込みは多かった。子供の人数は関係ないという書き込みもよく見かけた。また、不妊症で悩んでいる人からの「贅沢な悩み」という意見も目に留まった。そして、私と同じひとりっ子として育った人の「兄弟が欲しかった」との声も。

スマホの中に安心を求めていたけれど、ある時、いろんな意見があるのだと冷静になった瞬間があった。それでも家族が求めているのであれば、二人目妊活をスタートした方がいいのだと思うようになった。それが私の悪夢の始まりなのである。

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