20191013タイトル

消費税と野党共闘をめぐる議論が見落としてきたこと

 10月27日投開票の参院埼玉補選で、NHKから国民を守る党(以下、N国党)が消費税減税を掲げています。また、先の参院選では、幸福実現党が消費税の5%への減税を主張していました。今回は、こうしたなかで消費税と野党共闘をめぐる議論はどのように進めればよいのかを考えていきます。


⭐消費税とともに議論するべきこと

 消費税を何パーセントにするのかということは、あくまでスローガンとしてならば、何だって掲げることができるでしょう。そこで単に低くしたほうが受けがよくて票が取れるのではないかと考え、そうした水準の発想で減税を掲げる政治家も出るわけです。

 だからこそ、税にたいしてどのような方針をとるにしろ、各党はお金の取り方をお金の使い方とともに論じるということが必要になるはずです。どのようにお金を集め、何にお金を使っていくのかということ全体が未来に向けた態度となるものであり、それなしには単なる思いつきのスローガンと区別がつかなくなってしまうからです。

 では、これまでの日本のお金の使い方を振り返った時、それは果たして適切だと言えるのでしょうか。

 どこの国でやったオリンピックも、数百億、数千億円ほどのお金で実現しているのに、日本だけはなぜ3兆円もかかってしまうのでしょうか。イージス・アショアでアメリカのために6000億円超を投じ、地盤沈下して使い物になるかもわからないような辺野古の埋め立てを強行して2兆5000憶円をかけ、F35戦闘機に6兆2000億円も費やすのは正しいお金の使い方でしょうか。

 また、リニアの予算は東京大阪間で9兆円という見積もりがありますが、これを本当にやる意味はあるのでしょうか。日本の経済がどんどん拡大していた昭和末期の頃だったら、確かに東京と大阪を結び付けることには意味があったかもしれません。けれどこれからは、日本の国民はどんどん減少し、物流も減っていくという時代になるわけです。

 万博だってカジノだってそうです。それをやったことによって、後世に何が残されるのでしょうか。それによって現に生きている国民の生活は良くなりえるのでしょうか?

 単にお金を使うということが、仕事を生み、人々を豊かにするわけではありません。国民の生活の質や、暮らしのあり方が良くなるような方向に使われなければ、お金を使ったところで後に何も残らない、社会は何も良くなっていないということになってしまうのです。

 こうしたことは、税と同時に議論されるべき問題です。ですから消費税を何パーセントにすべきなのかという話をするならば、それとともにお金の使い方をどうすべきなのかという方向性を明らかにし、これからの日本をどうしていくのかという全体像を示さなければだめなのです。

 それができるかということが、各党の消費税に対する主張の水準を決めるでしょう。

 こうした観点から質の良い議論ができるならば、れいわも野党各党も、N国党や幸福実現党が掲げた消費税減税に翻弄されることなどないはずです。


⭐お金の使い方を転換するということ

 お金の使い方の方向性を決めるためには、今の日本がおかれた状況を正確に認識し、今後、何をどうすればよいのかを考えていく必要があります。

 現状、日本の経済が停滞していることは言うまでもありません。下の図は名目GDP(ドル)ですが、1995年以降はほぼ横ばいとなっています。(GDPにはいくつか表し方がありますが、おおむね大局は変わりません)

名目GDP

 これは、あくまで全国集計によるものです。そこでもう一歩踏み込んでみると、様々なデータから、この停滞が都市の発展と地方の衰退の相殺という形で起きていることが浮かび上がってきます。

 地方はこの25年間、どんどん人口を減らしていっています。人口の減少は労働力の減少につながり、生産力の低下を結果します。下図は2010年から2015年までの人口増加率ですが、一部の都市を除く多くの自治体で人口が減っていることが読み取れます。都市部の人口増は地方からの流入に依存しているので、地方の人口減はやがて都市部にも波及します。そうして、都市の発展と地方の衰退という構図は、やがて日本の全面的な衰退につながっていきます。これをどうするかという大きな問題が、今を生きる私たちにかかっているわけです。

人口増加率

 いま日本は、都市と地方のバランスが大きく崩れており、このことが様々な問題を生んでいます。そのアンバランスの中で、人と人の関係が破壊され、一人一人が力を発揮して生きていくことができない環境が押し付けられてしまうのです(「世代を切り裂いた都市と地方の偏り 」など参照)。

 だからこそ、本来ならばそれを食い止める方向にお金が使われる必要があるはずです。しかし現状は、膨大なお金が東京、大阪といった一部の都市に投入されています。その反面、地方は切り捨てられているため、結局、都市のプラスと地方のマイナスが合わさった結果、日本のGDPは一向に上がりません。

 さらに悪いことに、オリンピック、カジノ、万博、リニアといったように、多くのお金が後の時代に意味をなさないものに使われてしまっています。だからいつまでたっても国民の生活の質はよくならなず、人口減も加速するわけです。

 平成の間も、今もなお、そういうことが続けられています。この問題を考えていくことは、これからの日本のお金の使い方をどう転換するのかを打ち出し、国民にたいして問いかけるための一歩であるはずです。このことは、これまでの政治のあり方に対する、一つの根本的な対立軸を形作るでしょう。


⭐野党は何のもとに連携するのか? 日本の未来をどうするために共闘するのか?

 いま言われている野党共闘はもともと、野党で協力して政権をとり、安保法を廃止しようとして構想された経緯をもっています。それは2015年に強行採決された安保法への世論が薄れる前に、非常の手段として電撃戦をやることです。しかし衆参の国政選挙を経て、政権を脅かすような情勢は作れませんでした。

 それは、安倍政権のやり方がどんなにひどくても、その方法が有権者にたいしてまかり通ってしまっているからです。安保法の後も、森友・加計学園問題の後も、内閣支持率も与党の支持率も徹底的に持ち直しているからです。安倍政権の答弁や国会運営は確かにめちゃくちゃです。しかし、それを批判してまとまれば勝負になるというわけではありません。

 このまま、単純に野党がまとまらないと与党に対抗できないと言って一致点ばかり探し、根本的な政策をめぐる議論に踏み込まないのならば、また同じように敗北し続けるでしょう。この社会の進むべき道を示し、それによって多くの国民の心を揺さぶることができなければ。だからこそ、そうした議論を求めているのです。

 これまでの政治の問題点を示し、「日本の未来をこうするべきだ」という対立軸を打ち出し、それをもって野党結集の根拠としなければ、国民は野党共闘に希望を持たないと思うのです。また、そのようなことができれば、単なる反自民、反安倍政権ではないがゆえに、これまでの自民支持層さえも取り込んでいけるはずなのです(「自民党は地方に何をしたか」など参照)。

 消費税をめぐって色々なすれ違いがみられますが、立憲にも、共産にも、社民にも、国民にも、れいわにも、こうした観点にもとづいた根本的な議論がされることを期待します。


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🔹れいわ新選組と他の野党の連携について②
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🔹投票率を上げるとは、どういうことか
🔹消費税をめぐる議論について
🔹いま、問われること

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社会を変革する手段としての正確な政治情勢分析を、誰からも独立して探求しています。著書に『武器としての世論調査――社会をとらえ、未来を変える』(ちくま新書)。自由にフォローしてください。Twitter: https://twitter.com/miraisyakai

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コメント2件

主題とは全然関係ないのですが、人口増加率の図で千葉県が、まんま「チーバくん」に見えて驚きました。目や手足までくっきりと
思うのですがリニアは基本的にはJR東海と言う民間企業のやる民間のビジネス、カジノや万博・五輪はあくまで主体は地域の自治体で、それはその地域の自治体が決めるというのが地方自治の原則です。都市に投資が集中するのを問題にするなら、地方がどのような投資を求めているか、あるいは地域にとって有効な投資を掘り起こすかと言う話になるのですが、加計学園=愛媛県今治市に設立された岡山理科大学獣医学部と考えると手続き上問題があっても安倍首相はそんな地方の投資を掘り起こしたという事もできます。少なくとも護憲系野党がそういったことをしたという話をとんと聞きませんができるのでしょうか?
 例えばバス等の公共交通であれば人手不足、交通系電子マネーや駅探・グーグルマップなどの検索サイト対応などわかりやすい課題があるのですがその解消を陳情先には自民や維新はあっても護憲系4党は無いと思います。
http://blog.livedoor.jp/brothertom/archives/78764583.html
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