20190922タイトル

れいわ新選組と他の野党の連携について①

 れいわ新選組と野党の連携について、山本太郎氏が消費税5%への引き下げを提示したことが議論になっており、各所から意見を求められているので少し書くことにします。

 こうした話をするときに是非とも押さえておきたいのは、れいわ新選組が獲得することを狙った有権者層が、他の野党とは異なっていることです。

 まず、48回衆院選のとき、明るい選挙推進協会によって実施された意識調査の政党支持率を見てみましょう。

48衆政党支持率

図1.第48回衆院選の政党支持率(調査は明推協・図は三春作成。なお、直近の参院選の結果は現時点ではまだ公表されていない)

 図1では、与党の支持率を下側に、野党の支持率を上側にまとめました。中央の灰色の領域は、支持政党を持たない無党派層の人たちです。

 この図から明らかなように、現在の野党は若い世代に支持を広げられていません。本来は浸透すべきであるはずのその領域にあるのは、巨大な無党派層となっています。

 この無党派層についてはすでに何度か問題にしてきましたが、基本的には政治に見放された層と解釈することができます。

 1990年代初頭にバブルが崩壊すると、若者の生活は大きく変えられてしまいました。終身雇用が壊れ、非正規化が進み、ブラック企業が野放しにされる中、その後に社会に出たロスジェネ世代の生活は政治から見放されたのです。

 それ以降、ロスジェネ世代と同じように、上の世代のような生活がもうできない、親世代よりも良い生活をすることを想像してもみない世代というのが次々に生まれました。

 れいわ新選組が獲得を狙ったのは明らかにこの層です。

 れいわ新選組は、重いハンディキャップを抱えた2人に加え、コンビニ問題の当事者、シングルマザー、元派遣労働者といった人たちを候補者としました。公式サイトには「ロスジェネを含む、全ての人々の暮らしを底上げします」という言葉を掲げ、党首の山本太郎氏は「消えてしまいたい、死 にたい、そう思ってしまう世の中のほうが間違ってんですよ」と訴えてきました。

 この言葉が向けられていた人たちこそ、これまでの政治から取り残されてきた層なのです。

 下の出口調査(NHKによる)はロスジェネ世代以降が支持基盤となっていることを示唆しており、こうしたことの結果を表しているといえます。もちろん、れいわが得た票は228万票ですから、数としては少ないです。それはやはり、政治から距離を置き、社会に失望し、選挙に失望し……という層が相手なので、容易に票につながりはしないでしょう。けれどその層はでかいのです。

NHK出口調査年齢別

 図2.NHKの投票日当日出口調査による年代別のれいわ投票層の分布

 それに対して、既存の他の野党の支持基盤は大部分が高齢者であり、ロスジェネ以降の世代からの期待は得られませんでした(図1など)。この層に対してこれまで野党がどれほど訴求できてこなかったかということは、どうしても認めざるを得ないでしょう。

 こういう経緯があるため、政治から見放された層の利害を実現しようとしたれいわ新選組は、安易にそれを妥協する形で他の野党に接近しようとした場合、かえって支持拡大の可能性を失わないだろうかということを気にせずにはいられません。むしろ独自の立場から、可能な限り支持を拡大したほうが良いということもあるはずで、実際に山本太郎氏は今、北海道から順に全国を飛び回ってやってますが、こうしたことも頭の片隅に置いているように思われます。

 まとまるということは重要なことです。それを要求する制度のもとで衆院選が行われるわけですから。しかし、ただ単にまとまればよいというのだったら、東京都知事選の鳥越氏の選挙はあのようになっていたでしょうか。そのことは心に留めておく必要があるように感じます。


45回衆院選意識調査

図3.第45回衆院選の政党支持率(調査は明推協・図は三春作成)

 上の図3は、民主党が政権交代をしたときの年齢別の政党支持率です。政権交代をするのにはこういう取り方が必要です。そのためにどう支持層を拡大して行くのかを考えたとき、れいわにはれいわの、失望した層を取り込みうるポジションがあって、そのアドバンテージを活かす道があるように思います。

 純粋に選挙対策という観点に立つ場合、れいわにとって野党と連携する意味がどれほどあるのかは難しい問題です。れいわの野党統一候補を一定数立てるという方針になるのなら別ですが、連動効果を考えると、比例代表の拡大のためにはむしろ小選挙区に候補者を立てた方が良いということになるかもしれません。

 しかし野党共闘の側にとっては、れいわが多くの独自候補を立てると票割れが起きてしまうので、候補者の統一が望ましいと思われます。そこでうまく利害の調整が行われて、れいわは協力の過程で何かの果実を得てうまくいくというふうになるかどうかというところではないでしょうか。

 ただ候補者の調整については、野党の候補者が割れれば政権を利するということをいくら言ったところで仕方がないことです。大原則ですが、立候補するというのは被選挙権を持つ人が自由に行使できる権利なので、その権利はきちんと尊重される必要があります。立候補をしないように圧力をかけたり同調を強いるというのは、民主主義を著しく歪めることにほかなりません。

 圧力や同調によって候補者を立てさせないというのは、多くの人の選挙に対する熱意を打ち砕くものです。候補者統一の際はきちんと説明がなされ、過程が可視化され、その過程に候補者が納得し、支持者が納得して初めて票がまとまるのであって、候補者を立てさせないことが票をまとめるのではありません。

 最後に、れいわとその他の野党をめぐる諍いをたびたび目にしますが、ささいなことでいがみ合い、相手を排除するということを繰り返していくなら、この人たちには問題解決能力がないのだと思われて、はたで見ている無党派層の多くが自民と維新へ流れていくことを結果してしまうでしょう。 

 少なくとも何らかの協力や連携を目指し、党と党の関係や、支持者と支持者の関係を良い方向に変えていくということを考えるのであれば、「相手が悪い」というようなことばかりを言い合っていても仕方ないのであって、むしろ支持者どうし、政党どうしの疎通をはかるべきであるのは、言うまでもないことです。

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社会を変革する手段としての正確な政治情勢分析を、誰からも独立して探求しています。著書に『武器としての世論調査――社会をとらえ、未来を変える』(ちくま新書)。自由にフォローしてください。Twitter: https://twitter.com/miraisyakai

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