20190926タイトル

票をどのように分けるのか? 共産党・個人票の秘密!(第25回参院選精密地域分析Part6)

 共産党の地図(図1)を公開したとき、「京都で強固な共産党」とか、「インドのコーチでは共産党が強いが、日本のコーチでも共産党が強かったとは」というにぎやかな感想をもらいましたが、京都や高知だけでなく、北海道でも一定の強さがある点は注目に値するのではないでしょうか。これは個人票を見ることでさらに明瞭になってきます。

2019共産党得票率

図1.共産党得票率 第25回参院選(2019年)比例代表


2019共産党個人票得票率

図2.共産党個人票得票率 第25回参院選(2019年)比例代表

 図2は、共産党が擁立した各候補の個人票を合計した得票率です。つまり「小池晃」「仁比聡平」「紙智子」といった共産党の候補者26人の票を合計し、投じられたすべての有効票に対する割合を計算したものです。

 現行の参院選の比例代表では、投票の際に政党名を書くことも、候補者個人の名前を書くこともできます。前者を政党票、後者を個人票と呼ぶことにすると、その党から何人当選するかは政党票と個人票を合わせた票数で決まり、誰が当選するかは一人一人の個人票の票数で決まるという制度になっています。

 ですから、有権者の側に立って言うならば、単に政党を応援するときはどちらの票を投じてもよいものの、特に当選させたい候補者がいるときはその人に個人票を入れるのが合理的といえます。また、立候補した人の側に立って言えば、同じ政党の候補者は議席を争うライバルであり、一票でも多く自分の名前を書いてもらえるように苦心するのですね。


⭐政党の組織的投票

 それでは比例代表に擁立された多くの候補者の中で、特に落選させてはならないような重要な政治家がいる場合、党の執行部はどうするのでしょうか。

 前回の国民民主党の分析(国民民主党と民社党は似ているのか? 労組の地盤とは何なのか?)では、労組や特定の利害関係による組織的投票を検討してきましたが、今回はこれとは全く別の、党が当選させるべき候補に対して行う組織的投票を見てみましょう。

2019共産党山下よしき得票率

図3.山下よしき得票率 第25回参院選(2019年)比例代表

 図3には、党内での個人票が第2位だった山下よしき氏の得票率の分布を示しました。北海道や近畿地方、大分県などで得票率が高い傾向が読み取れます。

 それではさらに下の図4を見てください。

2019共産党山下よしき占有率

図4.山下よしき党内個人票占有率 第25回参院選(2019年)比例代表

 図4のデータは滋賀、兵庫、大阪、奈良、和歌山で突出しており、ここで何かが起こっていたということがうかがえます。図3では北海道でも近畿でも得票率が高い傾向があったものの、図4に切り替えてみた場合、近畿が別格の意味を持つことが浮かび上がるわけです。

 得票率では見えなかったものを、別の指標で見えるようにする。

 ぼくは図4の指標を「党内個人票占有率」と呼んでいますが、これはライバル関係にある党内の各候補者のなかで、その候補者が何%の個人票をとっているかという割合を表します。言い換えればその地域の比例票が多いにしろ少ないにしろ、そうした各地域における党全体の勢力とは関係なく、個人票が「誰にどの程度まとまっているのか」を知るためのものです。

党内個人票占有率の定義

 図4からは、滋賀、兵庫、大阪、奈良、和歌山で山下氏の占有率が突出しており、この地域で山下氏に投票するようアナウンスされたことが推測されてきます。衆院選比例代表の近畿ブロックから京都を除いた地域ですね。

 他にももっと見てみましょう。

2019共産党井上哲士占有率

図5.井上さとし党内個人票占有率 第25回参院選(2019年)比例代表


2019共産党紙智子占有率

図6.紙智子党内個人票占有率 第25回参院選(2019年)比例代表


2019共産党仁比聡平占有率

図7.仁比聡平党内個人票占有率 第25回参院選(2019年)比例代表

 図5の井上さとし氏は衆院選比例代表の北陸信越・東海ブロックと京都府、図6の紙智子氏は北海道・東北ブロック、図7の仁比聡平氏は中国・四国・九州ブロックでそれぞれ突出しており、地域ごとに票を分配したことがはっきり見えてきます。


⭐山本のりこ氏と小池晃氏

 共産党が比例代表に擁立した26人のうち、上位の候補者を図8に示しました。小池氏が突出し、山下氏、井上氏、紙氏、仁比氏、山本氏が続いています。

共産公人票

図8.共産党の上位候補の個人票

 ここで注目なのは第6位につけている山本のりこ氏です。山本氏の党内個人票占有率は次のような分布でした。

2019共産党山本訓子占有率

図9.山本のりこ党内個人票占有率 第25回参院選(2019年)比例代表

 図9を見ると、山本氏には突出した地域が見られません。氏は33歳の若手であり、党にとってはまだ票を組織的に分配し、優先して通そうとした候補ではなかったことが想像されてきます。しかしながら、全国的に広く票を集め、当選ラインまで1880票と肉薄したのは凄いことではないでしょうか。

 また一方で、突出した小池氏に加え、票が分配されている山下氏、井上氏、紙氏、仁比氏を当選させるためには、5議席が必要です。このことから、共産党は比例代表で5議席を確保することが実質的な目標であっただろうということもまた、想像ができます。

 このように個人票がほぼ同等の数であっても、さらに踏み込んでいくことでその意味の違いが見えてくるところが地域分析の面白さでもあります。

 では最後に、個人票第一位の小池晃氏の分布を示して今回は終わりましょう。図10にはここで掲載した他の候補と同じスケールで塗分けましたが、多くの地域で振り切れてしまったため、図11に別のスケールのものを示しました。

2019共産党小池晃占有率

図10.小池晃党内個人票占有率 第25回参院選(2019年)比例代表


2019共産党小池晃占有率2

図11.小池晃党内個人票占有率 第25回参院選(2019年)比例代表

 図11からは、小池氏が東京都内で高い占有率を持っていることが読み取れますが、これが組織的投票によるのかは地域分析だけからはわかりません。それは小池氏がかつて東京都から立候補していた事情があるためで、その人と関係のある選挙区で票が伸びるのは自然なことであるからです。

P.S. 「党内個人票占有率」は、三春充希が作成した用語なので、まだ一般に周知されているものではありません。他の場面で使う時は、相手に意味が伝わるよう、適宜、注釈などを付け加えてください。


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社会を変革する手段としての正確な政治情勢分析を、誰からも独立して探求しています。著書に『武器としての世論調査――社会をとらえ、未来を変える』(ちくま新書)。自由にフォローしてください。Twitter: https://twitter.com/miraisyakai