20190817タイトル

立憲民主党が伸びた地域では何があったのか?(第25回参院選精密地域分析Part2)

第25回参院選(2019年)の地域分析の第二回は、立憲民主党です。

立憲民主党は、結成直後の第48回衆院選(2017年)と比べ、今回の参院選では317万票の減少がありました。データでは、政党支持率の低下と、無党派層の取り込みが以前ほどできなかったことが明らかとなっています。

まず各社を平均した政党支持率ですが、今回の参院選では4ポイントの選挙ブーストがあるものの、48回衆院選のときの水準には到達していません。立憲民主党の支持率は2018年8月以降に急落をおこしており、もちなおしきれない状況が続いています。

また、48回衆院選では立憲民主党は無党派層の最大の投票先でしたが、今回の参院選では後退し、無党派層の投票先の第1位は自民党となっています(時事通信出口調査)。

こうしたことを念頭に置いて、地域ごとの得票率の変化を見てみましょう。

⭐得票率分布:第25回参院選(2019年)


⭐得票率分布:第48回衆院選(2017年)


⭐立憲民主党の得票率の増減

今回の参院選、前回の衆院選、得票率の増減というふうに3枚の地図を示しました。得票率の増減は、黄色から赤の配色で示した市町村で増加し、水色から青で示した市町村で減少しています。

いちばん注目してほしいのは、増減の地図です。青森県の全市町村で得票率が伸びていることが読み取れます。また、県全体の集計で得票数が伸びていたのも青森県のみでした。

比例代表の得票率を引き上げる要因としては、第一に連動効果が挙げられます。これはつまり、選挙区の候補者が比例票を引き上げたのではないかという疑いです。しかし参院選の場合、第二に個人票(比例代表の個人名が記入された票)の影響もまた考えられます。これは、青森県に縁のある候補が全国比例で擁立されており、その人の票が党の票としても集計されるため、得票率を引き上げた疑いです。そして今回に限っては第三に、希望の党の票のうち、国民民主党に引き継がれなかった分の影響も考える必要がありそうです。

⭐立憲民主党の個人票:第25回参院選(2019年)

そこでまず、立憲民主党の個人票の得票率をみていきます。これは、立憲民主党の22人の候補者の得票率を合計し、地図上に表示したものです。

この図から、中国地方の得票率の増加は、個人票が関係している可能性が示唆されます。また、東京に一点だけある真っ赤な自治体は東京都西多摩郡檜原村で、個人票となっています。調べると森屋隆氏の出身地であることがわかりました。

しかし青森に関しては、突出した個人票がないことが読み取れます。

⭐国民民主党と希望の党の得票率の増減

また、国民民主党と希望の党の得票率の増減も見てみましょう。48回衆院選の希望の党と比べ、25回参院選の国民民主党の得票数・得票率は低くなっているため、宙に浮いた票が存在しているはずです。それがもし青森だけ突出しているのであれば、立憲の得票率が伸びたのも頷けるかもしれません。(宙に浮いた票の割合は、上の図の場合、青が濃くなり、紫色、黒色となるにつれて増加します)

この図からは、宙に浮いた票は日本のあちこちの自治体で多くなっており、特に青森で突出しているわけではないことが明らかです。

⭐小田切氏の政見放送

得票率の増減の地図を公表したとき、立憲民主党の有田芳生氏から「候補者のよさに加えて広報の的確さが組織的行動と総体として結びついた成果だと思います。立憲民主党の総括会議でも発言しましたが、政見放送は出色の出来です。これを見て涙する県民が多かった。あと少しの時間があれば勝っていたと確信します」という返信とともに、政見放送を紹介していただきました。

青森県は東北の中でも与党が強い地域にあたり、当選にはとどかなかったものの、候補者であった小田切さとる氏が県内での党の「顔」となり、支持を拡大したということは、十分検討に値するだろうと思います。

動画を見たことのない人は、冒頭の1分でも見てほしいのですが、この政見放送は非常に明快で、優れた内容になっています。どういう人に向けられたメッセージなのか、何を伝えたいのかということもはっきりと見えてきます。これは重要な点です。

たとえば今回の選挙で掲げられた「この夏私は変えたい」「令和デモクラシー」「パリテなう」といった言葉と比べてみてください。こうしたフワフワした言葉たちは、どういう人たちの魂をゆさぶることを意図したものでしょうか。それが見えてこないのです。言葉を受け取る人たちにとっても、立憲民主党が自分の利害にとって味方なのか敵なのかという判断がつくでしょうか。この点は疑問と言わざるを得ません。

そういった中で、比例票を拡大した候補も、選挙区で勝利した候補も、はっきりとした内実ある主張をしているし、鋭い対立軸を示しているということは、きちんと振り返られる必要があるはずです。


⭐対立軸を示すということ

以前、菅野完氏と対談したときに(【対談】菅野完×三春充希「選挙は最大の世論調査である――2019年参院選をどう見るか」)、菅野氏からこのような発言がありました。

「それに、消費税を10%に上げようと選挙をする人は、『10%に上げよう』って言って選挙するはずがないんだから、反対派が『10%に上げるな』って言ったって、コール&レスポンスが成立していないんですよ。対立構造を示すには、『消費税なんてやめてしまえ』って言うしかないんです。『消費税10%にするぞ!』に対して『今のままでいいぞ』はコール&レスポンスじゃない。『消費税上げるぞ』の反対は、『下げるぞ』『ゼロにするぞ』です。事実、そのコール&レスポンスが成立してて、与野党対立が鮮明になってるところは、勢いがある。れいわ新選組とかね」

こうした主張をはっきりしていたのは、立憲民主党の候補者のうち、一人区で唯一勝利した石垣のりこ氏でした。石垣氏の陣営がとった戦略は、野党が優位に立つ地域でありながら、相手候補の愛知氏が食い込むことが予想された仙台市のいくつかの地域に重点を置くというものです。

公示前に行われた討論会で圧勝したことから、主張をぶつけ、押していくことが得策だというふうに、選挙を分析したり具体的に動いていった人たちは考えた面があったでしょう。相手候補とそれぞれの訴えが同じ地域にむけてなされたなら、相手候補の浸透を阻み、競り勝つことができるのです。

そして結果として、重点においたところできっちり票をおさえられたというのは素晴らしいことです。「上げるべきは賃金であって、消費税ではない」とした石垣氏の政見放送も載せておくことにします。やはり鋭い言葉で対立軸をつくっていることに、注目してください。(なお宮城は希望票の取り込みの余地があまりない地域で、得票率の増減の地図では浮かび上がっていませんが、全国的に大きく低下した投票率がほとんど維持された珍しい地域です)

対立軸を示すこと、スタンスを鮮明にしていくことはとても大切です。きちんと噛み合って対立軸を示さなければ、支持を伸ばすことはかないません。先の衆院選で立憲民主党が支持された理由もまた、スタンスを鮮明にしたからです。スタンスを鮮明にして、かつ、きちんとした説明を行った。いい加減なことをやらなかった。それが、有権者の眼には、旧民主党や旧民進党とは違うように映っていたはずです。

だからこそ、そうして高められた支持率は、スタンスを曖昧にすれば削れてしまいます。なんだかわからないぼんやりとした有権者像を描き、それを横目でうかがってばかりで曖昧な態度をとることは、新たな支持を獲得する可能性を失うことを結果します。

そうしたことをはっきりするためにも、今回、活躍した候補者たちのたたかいがどのようなものであったのかということを、しっかりと見てほしいというふうに思います。支持を維持したり、伸ばした地域で何があったのか、一人区で勝利した地域でどういう選挙がたたかわれたのかということが、検討されるべきです。

なにゆえ支持されたのかということに対しても、なにゆえ支持されなかったのかということに対しても、政治家はもっと敏感であってほしいというふうに、感じられてなりません。ある人はそれを「風」というかもしれないけれど、それでは言い表せないほど重たいものが、その根底には潜んでいるからです。

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note: みらい選挙プロジェクト情勢分析ノート

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社会を変革する手段としての正確な政治情勢分析を、誰からも独立して探求しています。著書に『武器としての世論調査――社会をとらえ、未来を変える』(ちくま新書)。自由にフォローしてください。Twitter: https://twitter.com/miraisyakai

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コメント1件

小田切氏の政見放送が見事なのは「津軽(青森市・弘前市を中心とした地域)のための政治をやる」と言うのが明確だったことだと思います。逆に言えば南部(八戸と言うよりも~戸を中心とした地域)は切り捨てるのが「大企業の工場~」と言った言葉から浮かび上がってきます。ただ立憲民主ではなく護憲4党(立民・国民・社民・共産)の枠組みで2016年の参院選との比較で行けば青森県は支持を大きく落とし議席を失った地域であり、東北6県でも護憲4党は自民に選挙区の得票率では逆転されているように思いますがいかがでしょうか?
http://blog.livedoor.jp/brothertom/archives/79784127.html
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