20190510タイトル

都市と地方はこんなに違う! 衆参同日選(1986年)の投票率の分布――「武器としての世論調査」番外編①

こんにちは。三春です。「武器としての世論調査――社会をとらえ、未来を変える (ちくま新書) 」を告知してから様々な反響をもらいました。とてもうれしく思っています。

本の内容をここに載せることはできないけれど、出版までまだ4週間ほどあるので、内容につながるようなテーマを「番外編」として書いてみることにしました。本の雰囲気の一端を感じてもらえたらと思います。

前回衆参同日選(1986年)の投票率の分布(図1)

上の図は、1986年に実施された衆参同日選の投票率を市区町村別に表示したものです。このときの全国集計の投票率は71.4%でしたが、上の図を見ると都市と地方では様相が大きく異なっていることがうかがえます。

地方の投票率は一様に高く、なかでも赤いところは90%を超えています。それに対して都市部の投票率は低迷し、東京、名古屋、大阪、京都の人口密集地は50%台のところも多い結果でした。他にも札幌市、函館市、仙台市、新潟市、静岡市、広島市、福岡市などで陥没が見られます。

この時代、地方の投票率の高さと都市部の低さは、これほどはっきりとした傾向だったのです。


前回衆院選(2017年)の投票率の分布(図2)

上の図(図2)は、衆参同日選から30年後にあたる、前回衆院選の投票率の分布です。地域ごとの傾向を見やすいように、図1より縦軸のスケールを15ポイント下げています。(なお、この時の選挙では東海地方から関東地方を台風が直撃していました)

図1と図2の都市と地方のコントラストに注目してください。図1にあった鋭いコントラストが図2からはあまりはっきりとは読み取れなくなっています。


都市と地方の対立軸

本に書いた地域ごとの分析では、「日本はかなり均質ではない」というのが面白い発見でした。そのうちの主要なものに都市と地方という対立軸があります。

都市と地方の違い。それは、一つの対立軸なのです。

もともと戦後の自民党は地方の農村に基盤を持ち、社会党は都市部の労働組合を基盤としていました。

前回の衆参同日選が行われた頃は、すでに都市部の社会党の支持基盤が弱体化し、共産党や公明党、税金党やサラリーマン新党などが都市部で票を得ていましたが、そうしたもの全体にたいして、地方の強い自民がコントラストをなしています(機会があれば地図を掲載します)。

その後、社会党の解体や自民党の分裂などを経て、都市と地方の対立軸は弱まってきました。そして現在、地方の自民はなお強い傾向が残るものの衰退がみられ、逆に都市部では昔より票を伸ばすようになっています。

ここに掲載した2枚の投票率の地図だけでなく、ここ数十年の間、日本列島は様々な面で均質化に向かっているようです。

しかし今後、人口減少が地方の自治体に深刻な影響を与え、地方の自治体そのものの存続が脅かされていくようになったとき、都市と地方には再び鋭いコントラストが生まれるのかもしれません。

地方の選挙はやがて、人口減少の中でどのようにして暮らしを守っていくのかを巡ってたたかわれるようになっていくはずです。

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