20190625タイトル

選挙ブーストをおこすために

図1.無党派層の推移

1.無党派層は選挙のたびに大きく減少してきた

上の図1に、2013年1月以降の無党派層の推移を示しました。一つ一つの点が各社の世論調査の結果で、太い線がその平均です。(なお、各社に固有の偏りを検出し、補正をかけています)

また、参院選と衆院選の時期をラベルと点線で示しました。こうしてみると、選挙の時に無党派層が大きく減少してきたことが明らかになります。

無党派層が減少するということは政党支持層が増加することと同義なので、選挙時には政党支持率が上がる傾向があるということです。


2.無党派層の30%ラインを知ってほしい

図1にはまた、30%のラインを赤線で示しました。この線は極めて重要です。なぜなら、23回参院選、47回衆院選、24回参院選、48回衆院選と、国政選挙のたびに無党派層は30%まで降下しているからです。

現在の無党派層は41%程度で推移しているので、これが30%まで減少した場合、差にあたる11ポイントが政党支持層になることを意味するため、各党の支持率は合計で11ポイントほど上昇するはずです。今後そのような現象が起こるのではないかと考えられるわけです。


3.選挙ブースト

図2.日本維新の会の支持率

選挙時に支持率が上がる典型的な例として、日本維新の会を見てみましょう。(日本維新の会は途中で維新の党やおおさか維新になったりしていますが、区別せずに連続したグラフを描いています)

図に書き込んだ4回の国政選挙で、支持率が鋭いピークを持っています。また、2019年にもピークがありますが、これは統一地方選や衆院補選と重なった時期です。

このように、政党支持率を考える時に選挙時の上昇は極めて大きな要因になるので、選挙ブーストという言い方をすることにしましょう。一応、『武器としての世論調査』では次のように規定しています。

「国政選挙の公示から投開票に前後して政党支持率が急上昇する現象」を選挙ブーストと呼ぶことにしましょう。(p.51)


4.ピーク型と段差型の2タイプ

図3.民主党・民進党・国民民主党・立憲民主党の支持率

図3は少し込み入っていますが、まとめて比較できると良いと思ったので、民主系の4党の支持率をまとめて示しました。

まず、23回参院選のところを見てください。このときの民主党の支持率は選挙時にピークを持つものの、選挙後にすぐに下落してしまっています。この「ピーク型」の選挙ブーストでは、選挙時に注目を集めたものの、それは一時的なものに過ぎなかったわけです。

それに対して47回衆院選では、選挙の前後で支持率が段差をなしています。この「段差型」の選挙ブーストの場合、選挙時に拡大した支持層が選挙後にも残っています。

このように、選挙ブーストにはピーク型と段差型の2つが存在します。あるいは一つの選挙ブーストに、すぐ減少してしまう「ピーク成分」と、選挙後にも残る「段差成分」があると言っても良いかもしれません。


5.選挙ブーストがある時とない時

図4.共産党の支持率

図4に示した共産党は、23回参院選、47回衆院選と、段差型の選挙ブーストで支持層を拡大してきました。しかし24回参院選はピーク型で、48回衆院選ではそれもほとんど確認できないほどになっています。

このように、同じ一つの政党であっても、選挙ブーストはいつでも起こるとは限りません。

ですから選挙ブーストは、待っていれば自然と起こるのではなく、作り出すことが必要なものです。選挙が近づけば無党派層が減るということはすでに見てきました。しかしその無党派層がどこに行くのかは決まってはいないのです。


6.与党の選挙ブースト

図5.公明党の支持率


図6.自民党の支持率

図5に示した公明党の支持率は、ほぼピーク型といえるような選挙ブーストをもっています。

図6の自民党は、「落ち込んで上がる」ようなパターンが多いです。これは衆院選の場合、解散の判断そのものが支持率にマイナスに働くことがあるためかもしれません。あるいは支持率が下落している時に国政選挙を経る(勝利する)ことで下落に歯止めがかかるのかもしれません。

また、自民党の場合、選挙ブーストよりもむしろ、政権のスキャンダルや法案の強行採決などによる内閣支持率と連動した動きが支配的になるようです。


7.選挙ブーストとはどのような現象なのか

選挙ブーストを言い換えるなら、それは、選挙が近づくにつれて無党派層が与党支持と野党支持に分解していく現象です。そしてさらに各党の支持層に分かれていく現象です。

無党派層がそれぞれの政党に分解していく中で、それを全く獲得できないような時もあるわけです。それをどの政党が取るかは、その時その時の選挙運動にかかっています。

また、投票日まで無党派層のままでいた人たちも、どこに投票するのかで最後は与野党に分解します。その結果は政党支持率にはあらわれないかもしれませんが、無党派層の投票先として、自民何割、公明何割、立憲何割……というように、選挙後の出口調査で報じられるわけです。

これから一日たつごとに、刻一刻と無党派層が分解していきます。

だからこそ、これからの時期に何を発信するのかはとても重要です。


P.S.人の心を揺さぶるような言葉を

ここからはぼく個人の意見になるところが多いので、P.S.として書きます。

無党派層を動かすということを考える上で、今回の参院選の候補者で一人例に挙げさせてもらうと、立憲民主党の石垣のりこ氏には注目しています。というのも、石垣のりこ氏のTwitterのリツイート数が、新人候補としては極めて大きいからなのです。

リツイートは能動的なアクションです。広がる言葉、広がる振る舞いをしていなければ伸びません。

なぜ伸びているのでしょうか。ぼくは、それは石垣氏が自分の表現を持っているからだと思います。強力な表現を行っているからだと思います。

強力な表現というのは、別に強い言葉を使ったり大声を上げるということではありません。そうではなくて、それは人の心を揺さぶる言葉や態度ということです。別の言い方をすれば無党派層の一人一人の心を揺さぶる言葉や態度です。それが響くからあんなにリツイートが伸びるのではないでしょうか。

石垣のりこ氏の消費税に対するスタンスは、立憲民主党の主流派とはずれがあるかもしれません。けれどそういう候補が党内に存在することが、どれほど風通しを良くするか。あくまでぼくの直感ですが、これは無党派層に対する波及力として、ものすごく大きなものがあると思います。

これは、ぼくが一人の無党派層であり、かつ消費税に否定的な考えを持っているから言っているわけではありません。もっと一般的な話です。うまく表現できないのですが、内向きでないというか、そういう候補者がいて、そういう発言ができる環境や気風があることが、プラスであるというような意味合いです。いわば、そこに、よどみではなく、流れる水がもたらされるということです。それがリツイート数によって可視化されているのではないかと思います。(しかしそれはもちろん、単に様々な考えの政治家がいればよいということとイコールではありません)

ともかく――少なくとも、どの党派にとっても自らの表現で無党派層に切り込んでいく候補者をどう活かしていくかはとても大きいです。本当は全ての政治家に自らの表現を放つ態度であってほしいです。借り物の表現は空虚に響くものであるからです。

無党派層は漠然とした存在ではありません。その市の、その町の、一人一人の道行く無党派が、様々なことに思い悩んでいるはずです。彼ら彼女らと向き合っていますか。その言葉は響きますか。選挙に向けて刻一刻と無党派層が分解していく中、何をすべきだと思いますか?

そういうことを自らに問い、自らの言葉を発信してほしいと思います。

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社会を変革する手段としての正確な政治情勢分析を、誰からも独立して探求しています。著書に『武器としての世論調査――社会をとらえ、未来を変える』(ちくま新書)。自由にフォローしてください。Twitter: https://twitter.com/miraisyakai

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