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今回の感染症への政府対応について

⭐各国の支持率の激変

「今は政府を批判するのではなく、団結して危機に打ち勝つことが大切だ」
「批判なら勝った後にしろ」

 こういった言葉を見かけるようになりました。しかし、今の政府は拡大する感染症を前にして、果たして合理的な対応をとっていると言えるのでしょうか? そうだということができないなら、声を上げてそれを正していくことこそ必要となるのではないでしょうか。

 もし、はじめから国民の方を向いた政策をやっていれば、「批判なら勝った後にしろ」などという言葉以前に、おのずから支持する人は増えるでしょう。

 現に、感染が深刻な各国では、与党や政権の支持率は急上昇を見せています。アメリカでも、ニューヨーク州のクオモ知事の支持率は跳ね上がっています。それは普段、「支持率が上がった」という時のようなレベルではありません。いずれ各国をまとめてみたいですが、いくつか挙げるとこのようなグラフになっています。


アンドリュー・クオモ知事(ニューヨーク州)。(青が支持、赤が不支持)


ボリス・ジョンソン首相(イギリス)(水色が支持、赤が不支持)


ジュゼッペ・コンテ首相(イタリア)

 ここに挙げたニューヨーク州、イギリス、イタリアだけではありません。ドイツ、フランス、オーストリア、カナダ、ノルウェー、アイルランド、デンマークも同様の傾向にあります。少し前には台湾で総統の支持率が、韓国では大統領の支持率が大幅に上がりました。最近はあのトランプ大統領の支持率も、各社世論調査の平均で上昇がほぼ確実となっています。

 それは「政府を批判するな」と言っているからではなく、深刻な感染拡大を前にして、一つ一つ合理的な対応をやっているからにほかなりません。危機の中にあっては、政治に対する意識が高まる上、政府与党や首相・大統領などはマスコミに露出する機会が増えますから、まともな対応をすれば上がるのが普通です。

 しかしながら安倍内閣の支持率は2月に過去一年間で最低を記録し、その後3ポイントほど増加するも、現在は横ばいか、再び下落傾向となっています。与党の支持率も下落傾向で、無党派層は過去一年間で最も多い水準です。


 こうした日本の支持率の動きが特殊であることは多くの人に知ってもらいたいと思います。感染症を前にして、きちんと先進国として振舞ってる国々、それを国民が評価している国々では上がってます。けれど日本ではそうなっていないのです。


⭐合理的な対応を

 この感染症を前にして、政府が合理的な対応をとれているかということは疑問と言わざるを得ません。

 たとえば感染症の拡大を阻止するため、外出を制限する措置をとらざるを得ないのだとしたら、それによって生活に困る人たちを即座に補償をするのが合理的なことです。

 なぜなら経済的に困っている人は、補償がなければ生活をするために仕事に行かなければならなくなるからです。店や会社も、休業補償がないから休むことができず、こうしたことの結果として感染が拡大されるとしたら、それは政治の失敗です。休業しない店や会社や、そこに行く人たちを非難しても解決になりません。

 人の流れを止め、人と人の距離を保ち、感染拡大を阻止するためにこそ、生活を補償することが必要です。食費、光熱費をどうするのか。家賃をどうするのか。学費をどうするのか。そういうことをきちんと補償しなければなりません。経済の活性化とか、感染終息後の高速道路無料化とか、和牛商品券とか以前の問題です。いま目の前にある感染の拡大を止めるために必要な措置なのです。

 単に自粛と言って感染がおさまるなら外国もそうやっています。自粛と言うのが政治家の仕事ではありません。外国がやっているのは具体的な権利の制限とそれにたいする補償です。

 国税庁によると、税は「国民の『健康で豊かな生活』を実現するために、国や地方公共団体が行う活動の財源となる」ものと説明されています。国民のために使われるべきものを、いま使わなくてどうするのでしょうか。自粛とばかり言って生活を補償せずに感染の拡大を招き、後になって経済が大打撃を受けるのだとしたら、いったい何をやっているのかということになってしまうでしょう。

 この感染症が去った後の世界では、早く立ち直った国が大きく成長し、立ち直るのが遅れた国の経済は生産が長く阻害され続けるがゆえに、激しく衰退するのに違いありません。経済ひとつをとりあげてみても、いま世界の各国はそういう分かれ目にあるはずです。


⭐データを得て、現実と向き合うこと。社会のリソースを組織していくこと。

 感染症と闘っていくには、現状を把握するためのデータの整備が不可欠です。今は十分な検査が行われておらず、そうして上がってくるデータも都道府県で形式が違う、情報の出てくるタイミングが違う、何日たっても更新されないデータがある……こういった状況を改善しなければなりません。

 もちろん現場の人たちは大変な状況でやっているのでしょう。しかし「現場が大変だから」で終わらせないためにこそ政治があるはずです。人員や予算を増やし、その対応能力をあげていくことが急務です。

 検査数を拡大していくということをアメリカもヨーロッパ諸国も韓国もやったわけで、アメリカなんて5日前は検査数が50何万だったのが今は100万を超えています。日本でも、この一か月、二か月という時間のうちに、検査を実施する人を養育し、増やし、より能力を持った検査体制を確立するということを政治と連携してやらなければならなかったでしょう。今からでも全力を尽くしてやるべきです。

 検査の拡大に反対していた人たちのなかにも、世界各国の対応や日本の現状を見て、考えを変えつつある人が出てきました。科学は誤りと判断したらそれを認めて修正していくことの繰り返しです。

 検査は早期発見や治療、隔離に必要なだけでなく、感染症の社会に対するインパクトの把握(どれほど強硬な措置をとるか)、地域的な特性の把握(どこに重点を置くか)、時間的な推移(いつまで続けるか)を評価する重要なデータにほかなりません。すでに時期を逸しつつありますが、特に状況の見えない初期においては、そうした情報は欠かせません。

 データをきちんと得て、根拠に基づいて政策を決めること。根拠が不十分なまま緊急の措置を取らざるを得ないなら、最低限その説明をすること。合理的でまともな意思決定をしていくことを求めます。

 現実は目をふさいでもあるわけです。具体的に、現実的に、感染の拡大を止めなければなりません。特に東京=横浜は世界最大の都市圏で高齢者も多く、大変なリスクを抱えることになっています。すでに市中感染が広がっており、追跡困難な状況であることは明らかです。そうした状況と、向き合い続けなくてはなりません。

 この短期間でドイツでは飛行機をICUにしてしまい、ニュージーランドではキャンピングカーを何百台も集めて病院を作りました。様々な製品を作っていた会社が人工呼吸器の生産へと動いてます。そのように、日本でも社会の様々なリソースをどう使うのか考えて、そのためにいろいろな物事を組織していくことが可能であるはずです。

 それをやることが政治の役目です。それができなければ、政治は結果的に国民の命を奪ってしまうのです。

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