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これからもずっと

こんにちは。みらい研究会と申します。名前の通り、青嶋未来六段のファンです。

さて、先日結果発表があった通り、第2期“書く将棋”新人王戦で文春将棋賞を受賞しました。

対局の内容を理解したくて……私の「青嶋未来の将棋トレーニング」
https://bunshun.jp/articles/-/39206

読んでくださったみなさま、投票してくださったみなさま、ツイッターでリツイートやいいねをしてくださったみなさま、リプライで感想を聞かせてくださったみなさま、本当にありがとうございました。すべてが嬉しかったです。

第2期“書く将棋”新人王戦には、文字数に関して「2000字~3000字」という規定がありました。ひとまずはその規定を気にせずに原稿を書き進めていたところ、途中で4500字を超えてしまいました。そこでいったん書くのを止め、構想を練り直し、書くべきことを大幅に削るという作業をしました。
完成した原稿を応募したのが5月下旬、入選作の発表が7月24日、そこから7月31日までが読者投票期間でした。そして今は8月の終わり、原稿を手放してから3か月ほどが経過したことになりますが、文字数さえ許せばこれも書きたかった……と、いまだに思うことがひとつだけあります。
それを、ここに書きます。

***

これまでに一度だけ、青嶋先生が負けて泣いたことがあります。2017年7月にあった、第65期王座戦挑戦者決定戦です。
中継ブログ
https://kifulog.shogi.or.jp/ouza/65_chou/
棋譜
http://live.shogi.or.jp/ouza/kifu/65/ouza201707280101.html
対局相手は中村太地先生でした。太地先生はこの挑戦者決定戦で青嶋先生に勝ち、番勝負で羽生王座に勝ち、王座のタイトルを獲得したのです。
太地先生が王座を獲得したことはみなさん覚えているでしょう。しかし、青嶋先生が挑戦者決定戦まで勝ち上がっていたことは、きっと、もう覚えていない人の方が多いのではないでしょうか。

この対局はモバイル中継されました。私はアプリで観戦しながら、ある局面をスクリーンショットしました。そしてその画像をずっと保存してあります。その時の形勢は太地先生の勝勢とされていました。「青嶋先生が負けて泣いた」と書きましたが、具体的には、その局面で更新された棋譜コメントを読んで私は泣いたのです。

16時44分、記者が4階のロビーを通ると、青嶋がソファーにもたれて目を閉じていた。対局室の中村は盤を見つめたまま。視線は敵陣に向いている。やがて、青嶋が席に戻った。正座のまま、膝の上で手を組む。
(第65期王座戦挑戦者決定戦 棋譜コメントより引用)

この9手後に、青嶋先生は投了しています。

実は、この王座戦挑戦者決定戦の直前に、青嶋先生の指導対局を受ける機会がありました。しかし当時は自分から先生に話しかけることすらできなくて、挑決がんばってくださいと直接言うことができたはずのに、言えなかったのです。本当に後悔しました。
もちろん、私が応援の言葉を直接伝えた程度で何かが変わるなどと思い上がっているわけではありません。しかし、言わないよりは言った方がずっといいだろうと思います。
「いつでも先生のことをずっと応援しています」と、言える時にたくさん言おうとこの時に決めました。

私が青嶋先生の棋譜を並べるようになったのは、この王座戦のあとのことです。
棋風や指し手の意味を理解することは難しく、まだまだ分からないことばかりですが、それとは別に気づいたことがいくつかありました。いちばん気づけてよかったことは、青嶋先生が負けた棋譜にも見どころがたくさんあるということです。

自分自身の棋風について、青嶋先生がこのように語っていたことがあります。

「他人とは違う序盤戦と、悪くなってからの終盤の粘りを見てほしい」
(『朝日新聞』2019年12月1日朝刊より引用)

青嶋先生が負けた棋譜を並べていると、先生の魅力のひとつである「粘り強さ」が本当によく分かります。勝負手、形勢をよくするために手を尽くすときにこそ現れるプロの技……先生が簡単に投了している対局なんてひとつもありませんでした。それは、対局の結果だけではなく内容を見るようになって初めて分かったことです。
それからは、先生が「負けた」という結果だけを悲しむことがなくなりました。先生が負けて泣くようなことも今後はきっとないでしょう。勝って泣くことはあるかもしれません。

好きだった音楽をひさびさに聴くときよみがえる記憶があるように、青嶋先生の棋譜を並べるたびによみがえる記憶があります。
王座戦の棋譜だけは、いまだに並べると泣きそうになります。勝てば初めてのタイトル挑戦という対局、おそらく緊張も気負いもあったのではないでしょうか。ない方がおかしいような気がします。きっと、こういう戦いをいくつも積み重ねて棋士は強くなっていくのだろうと思います。25歳・六段の青嶋先生のこれからを、生きてこの目で追えることがとても嬉しいです。

私はこれからもずっと青嶋先生のことを応援しています。


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