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【日経新聞をより深く】独ユニパー、1~9月は6兆円の赤字 ロシア産ガス停止で~ヨーロッパの行方は?~

1.独ユニパー、1~9月は6兆円の赤字

独エネルギー大手ユニパーが3日発表した2022年1~9月期決算は、最終損益が403億7400万ユーロ(約5兆8500億円)の赤字だった。前年同期は47億6800万ユーロの赤字で、ロシア産の天然ガス供給停止による代替調達のコストがかさみ、損失が大幅に膨らんだ。独政府はユニパーの国有化を予定している。

ロシア国営ガスプロムは8月末以降、主要パイプライン「ノルドストリーム」を介した欧州向け天然ガス供給を止めている。約5割のガスをロシア産に頼っていたユニパーは不足分を割高なスポット市場から代替調達している。損失額は1日あたり数百万ユーロに上るという。

最終赤字のうち、約100億ユーロはこれまでに代替調達で生じた損失額で、残りの310億ユーロはデリバティブ取引の評価損のほか、将来的に生じうる損失を引当金として計上した。エネルギー価格の上昇を受け、1~9月期の売上高は前年同期比2.7倍の2133億300万ユーロだった。

ロシア側は制裁が解除されるまでガス供給を再開しない可能性を示唆しており、損失のさらなる拡大は避けられない見通しだ。ユニパーのティナ・トゥオメラ最高財務責任者(CFO)は3日、「かなりの損失額になったが、ガスの調達先切り替えなど事業再編に集中的に取り組んでいる」と語った。

独政府は80億ユーロを出資し、ユニパー株の98.5%を取得するなど、総額290億ユーロの資金支援を計画する。国有化は12月下旬に予定しているユニパーの臨時株主総会で諮った後、欧州委員会の承認を得て成立する見通しだ。

(出典:日経新聞2022年11月4日

西側のロシアへの経済制裁はヨーロッパ諸国のガス調達に重大な危機をもたらしています。特にドイツに関してはノルドストリームからの供給がストップしておりますので、代替調達先の確保が急務です。

以下はノルドストリームのガス供給の量が見ることができるサイトですが、0のままです。

2.IAEA(国際エネルギー機関)はヨーロッパのリーダーに警告

この冬に関しては、天然ガスの貯蔵は何とか確保できたとされていますが、来年の春には貯蔵は65%となり、代替調達先が確保できない場合には、次の冬はガス不足に陥ることを警告しています。

現在は価格が下落しています。とはいえ、通常ではメガワット時あたり20~30ユーロの価格が130ユーロですから、下がったとはいえ、相当高いのが現状です。

長期契約で安定的にロシアから供給されていたガスはスポット価格での調達を仕入れられています。結果、ドイツのインフレ率は10.4%と急激に上昇しています。

(出典:TRADING ECONOMICS/ドイツのインフレ率

3.ドイツはガス・電気代に上限制

ドイツのシュルツ政権は高騰するガス価格や電気代を抑えるため、2023年から段階的に価格上限制を導入する方針です。高いインフレ率抑制のための政策です。

しかし、EU圏の中で、経済の強いドイツがインフレ緩和策を打つと、経済の弱い国は困ります。

EU加盟国は統一通貨ユーロを使用しています。これは、経済が強いか、弱いかに関わらず統一された通貨を使うことを意味します。経済の弱い国は本来であれば、その国の通貨弱くなり、輸出に有利に働きます。しかし、統一通貨のため、経済の弱い国も強い通貨を使わなければならず、本来ならば、変動相場によって保たれるバランスが保たれません。そのため、対GDP比で150%の債務を抱えるイタリアなどが危機に陥ります。

統一通貨の弱点が今後ますますあらわになってきます。各国の経済が苦しくなり、EU圏全体のことを考えられなくなってくると思われるからです。

ヨーロッパのエネルギー事情は英国を含め、現状は解決が難しい。EU圏、英国、このまま完全なスタグフレーションに突入、いや、すでにスタグフレーションでしょうか。

まだまだ厳しいエネルギー事情、経済情勢が予想されるヨーロッパです。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】


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