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誰も知らない大阪で起業する前に何をしたのか 認定NPO法人D×P 今井紀明


学生時代,イラクで武力勢力に人質になり,解放後は日本中から非難されながら帰国した今井紀明さん。

現在,通信制・定時制高校に通う高校生へ「人とのつながり」を作り、就職や起業支援をしている『認定NPO法人D×P』の理事長として活躍しています。

この記事では、今井さんがNPOで事業を作る前に何を動いていたのかの話を書いています。重要なポイントは、

①仲間作り

②事業を作るためのヒアリング

③仲間を巻き込む、「起業する」に向けて具体的に動く

Profile

1985年札幌生まれ。立命館アジア太平洋大学(APU)卒。高校生のとき、イラクの子どもたちのために医療支援NGOを設立。その活動として、当時、紛争地域だったイラクへ渡航。その際、現地の武装勢力に人質として拘束され、帰国後「自己責任」の言葉のもと、日本社会から大きなバッシングを受ける。結果、対人恐怖症になるも、大学進学後、友人らに支えられ復帰。偶然、通信制高校の先生から通信制高校の生徒が抱える課題に出会う。親や先生から否定された経験を持つ生徒たちと自身のバッシングされた経験が重なり、何かできないかと任意団体Dream Possibilityを設立。大阪の専門商社勤務を経て、2012年にNPO法人D×Pを設立。通信制高校の高校生向けのキャリア教育事業を関西で展開し、「ひとりひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会」を目指して行動している。


仲間を作るために家をゲストハウス化


今井:何でD×Pを作ったかと言うと昔、対人恐怖症で引きこもった経験があったから。

みなさんよくご存知の通りイラク人質事件というのがあって、ふさぎ込んだ時期がありました。僕が事業を始めた理由は以下の記事、

イラクで人質になった今井紀明さんが目指す「10代の未来を『自己責任』で否定しない社会」

に書いているので、もしよければ読んでください。

今井:就職と同時にかなり後輩や周りの人に助けられた経験があったので、何か自分より年下の世代のために仕事をしたいと内心思っていました。ただ、内定先は専門商社に拾われたので、まずは稼がないといけない。だから、僕は札幌出身ですし大学も九州の別府にある立命館アジア太平洋大学を卒業しましたが、勤務する大阪にきて働き始めました。

一番最初、大阪には誰も知り合いはいませんでした。ただ、やりたいこととしては年下の人のために何か仕事をしたいと思っていたので、一番最初にやったことは家をゲストハウス化することでした。

宿泊できるのは友達の友達までだったらOKという形にしてやりました。そうすることで僕と年齢が近い人や年下の世代の若者と会うことができて、何を生きづらさを持っているのかも含め話したり、仲間を作ることができました。結果的には年間300人くらいがそこで宿泊をしていたので、僕が仕事から帰って来たときにドアを開けたら20人ぐらいで飲み会をしていて「お、どなたですか?」「え、僕は家主」みたいなこともありましたが、楽しい日々でした(笑)。

写真 借りていたマンションの一室には毎日いろんな若者が集った。

それは本当に出会いの縁を深めるという事につながって行きました。やって良かったなという風に思っています。


『自分達はニートを生み出しているのかもしれない』現場の悩みをヒアリング


今井:また学校の先生など色々なところへヒアリングにも行きました。最初、特に何もなく漠然としていたのですが、とにかく若者に会わなきゃと思ったんですね。

大阪に知り合いはいなかったんですが、知り合いを紹介してもらって夜間中学校とか。とにかく、もうヒアリングをしまくりましたね。

若者のことを何かしたいというのがあっても、それに対しての課題が全然分からなかったし、どういう学校があるか、学校にはどういった課題があるのか、分からないという事があったので。それで直接色々な学校を訪問したというのが一番最初にやった事としてあります。

そこで偶然通信制の先生に出会ってその先生が話していた事は、「自分は頑張ってやっているけれども、自分たちだけではもしかしたらニートを生み出しているかもしれない」と。

進路未決定者が多いという事も話していたので、それでその学校で何かできることはないか調べていくうちに、通信制の学校の場合は進路未決定者率が40%近いということ学校基本調査を読んでわかりました。

そこから若者のために何かするというのを、誰もまだサポートするような事業を作っていなかったので「通信制に通う子のためにできることをやる」ということを決めて動き出したのは2011年、創業前でした。

コンペから仲間を巻き込み、起業へ


今井:通信制高校の高校生たちのための事業をすると決めても、起業の仕方が分からなかったので起業をするためのコンペに出ました。僕は本当に起業とか関心もなかったですし、学生時代とかはふさぎこんでいた時期なので何も動いていなかった。そこで、関東のメンバーは知っていると思うけど「ETIC」という様々な日本を代表する起業家を育成しているNPOのことを知り、起業のコンペに出ました。

写真 コンペの課題を写していた写真が残っていた笑

今井:知らない人は調べて欲しいです。NPOの関係者だったら絶対にここに学びにいくのはいいと思います。あと『SVM』というある種のコンペみたいなものと,起業した後は『社会起業塾』というところでNPOの根幹、考え方みたいなものを学びました。

もし今からNPOの組織基盤を作ったり、独立前だったらそこに行って欲しいなと思います。そうやって始めました。

起業家のコンペに出て、よかったことが仲間の巻き込みができたというところです。これは一つの手段にすぎませんが、コンペの前に仲間と話すプロセスがある。どういう課題に向かってなんのためにやっていくのか。それを一緒につくるプロセスを経験できたことがよかったと思います。

文章・編集 いけじり ひろと

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