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家族の物語。真実かどうか、を超えたところにあるもの。



今は施設に入っている母方の祖母が、
まだ家にいて、
そして、たくさんのことを覚えていたころの話。


祖父の旅立ちのあとから
ゆっくりゆっくり、
いろいろなことができなくなっていった祖母。


母は自宅で細やかに
祖母を介護していました。


祖父母がとても大変な思いをし、
やっとの思いで、
生きて家をつないできたこと。

小さな頃から母は
精神的に
祖父母の心と歴史を背負っていました。


そして、
祖父母の努力の上にある
今の幸せに感謝をしながら
祖母の介護をしていました。


母は
小さな母の心をしまいこんでいました。
父(祖父)に甘えた思い出と、
母(祖母)に甘えることは叶わなかった
苦い思い出、怖い思い出。


数年の介護の末、
母がしまいこんだ心は
ゆき先をなくし、
祖母に向かいました。

祖母も、
たくさんしまいこんだ心がありました。
もう、溢れるしかなくなった心。

母と祖母は顔をあわせれば
とても強いことばを投げ合いました。


本当に思ってることは
お互いそんなことじゃない。


母と祖母の交流がぎくしゃくしていること。
母からも、
祖母からも、
心から聴こえてくる音が
寂しい音なこと。

私もたくさん気づいていたけど、
何もできずにいました。



ある日。
私はふらっと、
占いカウンターに行きました。


なぜかはわからないけど、
祖父の話になりました。


私には、
叶えてあげられなかった
祖父の願いがありました。


祖父は、
今あのことをどう思っているのでしょうか。
叶えてあげればよかった、と
思うんです。

そう聞いたとき、

覚えていてくれたんだね。
そのことはもう大丈夫だよ。
覚えていてくれてありがとう。


おじいさま、
そうおっしゃっています。と、
占い師さんがお話されました。


そして続けて、


おじいさま、
本当に高い高いところに行かれていますよ。
とても、立派にお役目を果たされたのですね。

そうお話されました。

私は帰ってすぐに母に電話をし、
祖母に替わってもらいました。

おじいちゃんね、
高いところに行ってるって。


祖母は泣き崩れました。

そうだろうねえ。
あんなに苦労したんだから、
みんなのためにがんばったんだから。

よかったねえ、よかったねえ。
ちゃんと高いところ、
連れて行ってもらえたんだねえ。

ありがとう。
教えてくれてありがとう。
ありがたいね。
本当にありがたいね。


母も泣いていました。


次の日も2人はいつものようにけんか、
なのだけど、

祖父が高いところへ行けた、という話は、
祖母と母に生きる力を与えていました。



神さまは本当にいるのか、とか、
守ってくださる
みえない存在は本当にいるのか、とか
占いは本当なのか、とか
だまされてないのか、とか。

「それが本当なのか」

ということが
なによりも大切だと
思わされてしまうことのある世の中では


見えないものを
丁寧に心で掬うことが
まわりに理解されないことも
あるかもしれないけれど、


電話越しにみえた
祖母の涙と母の涙。
伝わってきた心の震え。


「それが真実かどうか、ということ」

それを
遥かに超えたところにあるものが
私にとって、本当に大切に思えた、

そんな瞬間でした。

mira



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