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25.予感

チームつくばタイトル

第96回箱根駅伝予選会における、筑波大学の「奇跡的な予選突破」の理由。
マスコミ取材によると、それは2019年6月以降の「自主的なチーム改革」にあった、とされている。

7月に駅伝主将が交代し新体制になったことは、その経緯も含めていろいろな憶測を呼んだ。
熱心な駅伝ファンほどそのへんの事情を知っていたから、チームの体制が変わってわずか3か月後の予選会突破に、より一層大きな衝撃を受けたと思う。

じつは前年の秋の時点で、私がチーム改革の可能性についてすでに予感していたと言ったら、信じてもらえるだろうか。
自分でも「そんなエスパーみたいな話あるかよ!」と思うくらいだから、読者の皆さんには到底信じてもらえないだろう。

もちろん、私の勝手な妄想だから事実とは異なるかもしれない。だがこの妄想の話をしないと、その後の私の行動に説明がつかなくなるので、ご批判覚悟で告白する。

2018年11月、筑波大学箱根駅伝復活プロジェクトのHPに、新体制発表の記事が載った。駅伝主将は、川瀬くんから池田親くんに引き継がれていた。
その記事を見て、心がざわついた。

(大変なことになった…。池田くんのことが心配だ…)

陸上界の常識」的には、最上級生となり、実力もずば抜けていた池田くんが駅伝主将になることが当たり前に見えたかもしれない。
しかし、陸上シロートの「私の常識」では、それはチームの運営体制がかなり危うい状況にあることを意味していた。

前にも記したように、クラファンを始めて2年目、私は筑波大学の中長距離ブロックの学生さんについて、かなりの情報を蓄えていた。
箱根駅伝復活プロジェクトの記事を隅々まで読んで、手記をつづった学生さんたちの気持ちと、弘山さんのレポートから垣間見える「筑波大らしいチーム像」とを重ね合わせては、勝手に楽しい妄想にふけっていた。
これは特に強調したいのだが、そのベースになったのが、筑波大学陸上競技部の部員紹介のページだ。文章が非常に秀逸で、それぞれの学生さんの性格をうまく表現している。
そのおかげで、予選会に行って応援したとき以外、会ったことも直接話をしたこともないのに、一人一人の性格や学生さん同士の関係性を具体的にイメージすることができた(合っているかどうかは別として…)。

例えば、今年の箱根駅伝で10区を走った児玉朋大くんの紹介文に「彼の笑い声は陸上競技場でも反対側にまで聞こえるほど大きい(うるさい)」という記述がある。
この表現で、彼が屈託のない性格であり、こんな説明を書かれるほど周囲から愛されていることがよくわかる。「優等生」が多い筑波大学の中で、彼のような「考えるより先に体が動く」タイプは、チーム全体の士気にかかわる貴重な存在だ。

そんなふうに、学生さんたちをプロファイリングしていったときに、私の中で、池田くんが駅伝主将になるシナリオは、じつはなかった。

池田くんは、駅伝強豪校、兵庫県の西脇工業高校の出身である。
「どんな犠牲を払っても箱根を走りたい」と思っていたら、箱根駅伝の常連校に進む道もあった。
しかし彼は筑波大学に来た。そこに何か別の意味があるはずだ。

彼は、箱根を走りたいという同期や後輩たちの強い想いを知っている。先輩からの気持ちも受け継いでいる。
すぐれた実力があったからこそ、その夢のために力になりたいという気持ちは強かっただろう。

だが、彼自身の夢ではない
そんな気がしていた。

だから、立候補ではありえない。何らかの事情で駅伝主将のなり手がなく、実績などから消去法で彼が推されたと考えるのが自然だ。

彼が駅伝主将になったのなら、相当周りが支えて行かなければ大変なことになる。
私は危機感を覚えた。

>>26.Your dream & my dream & somebody's dream

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