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52.エール

チームつくばタイトル

2019年7月、筑波大学箱根駅伝復活プロジェクトに起きた地殻変動。
そのことによって、クラウドファンディングがこれまで培ってきた、支援者との間の信頼関係が揺らぐことを、私は最も恐れた。

「筑波大学箱根駅伝復活プロジェクト」は、弘山さんのすぐれたマネジメント力と、それを熱量高く伝える文才により、多くの人々の心をとらえ、成長してきた。クラウドファンディングは、プロジェクトの広報活動の最前線に位置している。
クラファン立ち上げ当時、一部の卒業生の方からはお叱りの声もあったという。その懸念はもっともである。不特定多数に支援を求めることは、良いことばかりではない。
弘山さんは今回のようなリスクをも承知の上で、学生さんたちのためにクラウドファンディングを立ち上げたはずだ。
その覚悟に、応えられるのか。
我々支援者もまた、この事件によって、クラファン支援者としての矜持を試されているのだ。

“「私」という存在は、クラウドファンディングが掴んだ最強の切り札になりうる。なぜなら、私に陸上界の「常識」は通用しないからだ。”

筑波大関係者でなく、陸上業界事情に忖度もしない人間だからこそ、今、このときに、贈れるエールがある。

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箱根駅伝復活プロジェクトの新体制が発表された3日後。
私はクラファンの連絡先メールアドレスへ、メールを送った。

「クラウドファンディングの支援者は、今回のことを少しも心配していません。これからも応援していますよ。」

これを伝えたかっただけだ。
だが、どうして心配していないのか、理由をきちんと書かないと、論理的な弘山さんのことだから、腑に落ちないのではないかと思った。

私は文章を書くのが遅い。論理的にまとめるのがとにかく苦手だ。
学生のときも、授業のノートは何一つ満足に取れたためしがない。(そして、先生のくだらないダジャレ話だけは覚えている)
このnote連載だって、1000~2000字程度の文を、毎回、口にできないほどヤバイ時間をかけて書いている。毎日noteを更新している人は人間じゃないと思う。

毎晩、キーワードを書き散らかしながら、眺めすがめつ悪戦苦闘した結果、メールを送ったのは3日後になった。
この連載をお読みくださっている方には想像がつくかもしれないが、簡単にまとめるとこんな内容だ。

・組織が大きな飛躍をするときは、どんな世界でも必ず今回のような事件が起きること。
・よって事件については全く驚かず、むしろ彼らは次のステージへの階段をあがったんだ、と頼もしく思ったこと。
・話せる機会があれば、「とても良い経験だった」と評価していた支援者がいることを学生さんたちにお伝えしてほしい。

そして、そのあとに言葉を添えた。

単に箱根に出場して欲しいとか、筑波大の名誉とかではなく、若い彼らのこれからの人生がより高い次元で素晴らしいものになって欲しい。
それが、クラウドファンディングで筑波大の皆さんを応援する人々の、共通の願いだと私は信じています。

(プロジェクトを応援している支援者の気持ちを、勝手に代弁するとはけしからん、というご意見は謹んでお受けいたします)
見知らぬ人間が自分たちのことを気にかけている、という事実が、少しでも彼らの心の支えになればと思った。
そのために、この「切り札」をずっと持ち続けてきたのだ。

このプロジェクトの目的は、もちろん「筑波大学の箱根駅伝への復活」である。
だがそれと同時に、ある目的の手段でもある、と私は信じている。
その目的とは、かかわった人がみな幸せになることだ。

私自身、このクラファンをきっかけに、新しい、素晴らしい体験をたくさんさせてもらっている。
箱根駅伝の予選会で、芝浦工大の応援団さんと出会い、一緒に楽しく応援させてもらったこと。
関東学生連合チームのTwitterまとめを作ったら、幸運にも大勢の人に見てもらうことができ、たくさんの新しいご縁を得たこと。
陸上ファンのイベントに参加したり、大学の陸上競技場で選手たちを応援したこと。
陸上競技に全く縁のなかった私にとって、どれも、このプロジェクトが存在しなかったら、ありえなかった体験である。
私は、このプロジェクトと、その存在を教えてくれたクラウドファンディングに感謝している。

他の支援者の方々も、このプロジェクトに関わったことで、幸せになって欲しい。
当事者の学生さんたちも正念場だが、支援者もここが正念場だ。

返事は期待していなかった。
新体制となり、大変な時期だ。これから夏の合宿も始まるだろう。
支援者とはいえ、陸上競技部関係者でも、学生さんの身内でもない人間だし、素性の分からない人間からのメールにびっくりされるかもしれない。
読んでさえもらえればいい。

でも、万が一、弘山さんから何かお返事が来るようなことがあれば…


それは、私のわがままを、箱根の神様がききいれたという符丁だ。


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