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159.書きたいことが書けない困った感じ


川上弘美の小説の中でいちばん有名で、人気なのは『センセイの鞄』かもしれないけれど、わたしは『ニシノユキヒコの恋と冒険』が好きだ。

この小説を読むたびに、この女たらしのユキヒコの物語を読むたびに、わたしの出会った「リアル・ニシノユキヒコ」をまざまざと思い出す。いるいる、こういうやつって。そう、いたじゃん。まさにあいつだ。恭平だ。

ここ最近はべつにネタがないから書けない、ということもなくなったこのnoteですが(だって参鶏湯つくった、とか書いてるだけだからさ)、「書けない」の種類がちょっと変わってきてしまって、困っている。

たとえば、わたしはすごく恭平のことが書きたいのだ。ニシノユキヒコばりに、不思議な力でたくさんの女の子たちの心をあっという間に開いて、柔らかくそっとつかんで、そのまま奪っていき(もちろん心だけではなく)、そしてとうとつにふと別な世界に消えてしまったような彼のことを。

書きたいと思うあのひとのことを、書きたいと思うあの夜の桜のことを、書きたいと思うグランドピアノの下で昼寝をした夏のことを、どういうふうに書いていいかさっぱりわからない、という”困った”なのだ。

最初の頃は、「なにか誰かの役に立つこと」を一生懸命書いていた。自分のために書いていたんだと思う。やめてしまいそうな、どこにも行き着くところもないのに走り始めてしまった自分を励ましてあげたかった。

次は、ただ日々をスケッチしたかった。写真も絵もへたくそなわたしが、毎日を記録するとしたら言葉でスケッチするしかないじゃん、と思って。なので日々を書いていた。子どものこと。作ったごはん。会ったひと。交わした言葉。

それをずっと続けていこうと思っていたのに、どうしたことか。わたしは恭平のことが書きたいのだ。どう考えても毎日、恭平のことが書きたい。とわたしの心が言っている。でもなあ。もうずいぶん前の話だしなあ。なんでいまさら。なんだって、いま。


くそう、わたしが歌を歌えるひとだったら話は簡単なのに。
もしそうだったら、斉藤和義になってしまえばいいのだ。そして「ずっと好きだったんだぜ。相変わらずきれいだな」ってエンドレスで歌っていればいい。それだけで完結するし、それだけで伝わるし、それだけでなんというか、溜飲が下がる。鎮魂になるじゃない(にしてもいい歌ですよね、これ)。



困ったなあ。でも、”書きたいことを、どう書いていいかわからないので書けない困った感じ”は、けっこう新鮮だ。

なんか、わたしは新しい武器を手に入れなくてはいけないのかもしれない。
いっぱいモンスターと戦って、経験値とゴールドを手に入れて、新しい武器を手に入れて、もしかしたら入ったことのないダンジョンみたいなところに入らないといけないのかもしれない。

ああ、いやだ。だってわたしが好きなRPGの遊び方って「レベル上げ」だったから(笑)。ひたすらレベルを上げているのが好きだった。楽勝でちょろい敵を相手に危なげなく勝って、ちょっとでもHPが減ったらすぐに宿屋へGOだ。そんな安心で安全な場所で、なにも起こらないお城の周りで、遊んでいるだけで良かったのに。

そんな、武器とか。ダンジョンとか。考えただけでめんどうくさい。困ったな。今日はこのまま、困ったまま終わることにします。



そうそう、川上弘美の中でいちばん好きなのは『ニシノユキヒコの恋と冒険』で、ぜんぜん関係ないけどBTSでいちばん好きなのはジンくんだ。わたしの中で、ジンくんって、ほんとうにかっこよくて賢くて優しくて色気もあって、王子さまみたいにサイコーなのに、どこか「でもな...」って思う、ちょっとした残念さがある。

じつはそのちょっとした残念さも含めて、ジンくん推しなわけなんだけど、死ぬほど文章のうまい方が、noteの記事の中で「ジンくんってニシノユキヒコみたい」というテキストを展開してくれているので、こちらもどうぞ。


こういう語りもいいよねえ。ああ、なんか、文章を書いたり読んだりするのってほんとうにいいな。しあわせ。


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