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[納涼mio怪談] 第二夜🌙お菊さんメルカリに出品す。

            (約900文字)

 okiku@sarayashikI。
 それが、お菊さんがメルカリで出品する時のアカウントである。

 きっかけは、もて余していた10枚セットのうち1枚欠けた9枚の皿を、ためしに格安で出品してみたところ、セット崩れとはいえ物はよかったので、飛ぶように売れたことからである。
 あんなに、1枚足りなくて主人に責められたのに、出すとこ出せば、喜んで買ってくれる人がいるんじゃないの。

悩み続けた日々が今は嘘のように
忘れられる時が
来るまで心を閉じたまま

遠くで汽笛を聞きながら/アリス

 
 味をしめたお菊さんは、屋敷の物置にあった半端な食器類をかたっぱしからメルカリに出品した。もちろん、主人にはナイショで。
 
『良い品を有難う御座いました』
『とても良いお取り引きでした』
『またのご縁が有ります様に』

 品物が売れるのも嬉しかったが、見知らぬ人から感謝されることで、自分を責めてばかりだったお菊さんの心が、次第に癒され、自信を取り戻していったのである。

暮らしてゆこう
遠くで汽笛を聞きながら
何もいいことが
なかったこの街で

遠くで汽笛を聞きながら/アリス

 
 そーよ。あんなモラハラ主人の言いなりになんてなることないのよ。何よ、皿の1枚や2枚。
割れたからってなんだって言うの?
 そんなんだから、「小さい男」って、陰口たたかれんのよ。あーやだやだ。皿売ったお金で、あたしも第二の人生、はじめてみるとしようかね。

 しかし、あまりにもわかりやすいアカウント名から屋敷の皿を売りさばいていたことが主人にバレてしまい、お菊さんはお屋敷を追い出されてしまった。

 それでも今、お菊さんははればれとした気持ちで、ひとり生きている。屋敷の皿で鍛えた目利きの技で、そこここにあるガラクタから価値のある物を見いだし、メルカリで売りまくり、「転売ヤーお菊」として名をはせたのだ。

『一枚足りない人生からの、スタートライン』
       (古井戸書房より近日刊行予定)

 今秋には初の書籍も出版されるようだ。
 お菊さんの今後に幸あれと祈る。

(おしまい)

どこが怪談やねん 🤣
女の自立・サクセス・ストーリーやねぇ…

番町皿屋敷

明日は最終夜🌛
午後8時にお会いしましょう!


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